Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

隠れ給へり

2010-03-10 | Weblog
鎌倉の鶴岡八幡宮の大銀杏が、おりからの強風で倒れてしまったそうである。

あぁ、なんと悲しいことか。

鎌倉といえば鶴岡八幡宮で。八幡宮と言えば、まず思いつくのがあの大銀杏であったのに。
公暁がその陰に隠れて実朝を切ったと言われる「隠れ銀杏」。真偽のほどは分からないけれど、そのことはそれほど重要ではなく、そうした伝承のある古くからそこに立つ、樹齢千年にもなる木を目の前に、鶴岡八幡宮への階段を上っていくのは楽しみなことであった。

真夜中に一人で倒れてしまったなんて。
可哀想なことをしたなぁ。

中もボロボロだそうであるし、元に戻すことも無理なのだろうけれど。
千年も生きた木を倒れるまで放っておいてしまったことは、申しわけないことであろうなぁと思う。

今度訪れても。
もう、あの階段の脇にあの銀杏がないと思うと、とても不思議な気持ちがする。

ヤマアラシなんぞは「代わりの木を植えるだろ」と淡々としたものだ。
農家出の、日々植物と親しんでいた人の言葉とも思われないけれど、いやそれだからこそ、そうした淡々としたものなのかもしれない。自然は人の叡智の手の届かぬところにあるのだから、と。あるがままに受け入れる達観か。

悲しいなぁ。
悲しいなぁと思ってTV画面を見ていたのだが。

一つ、そこから逞しさを発見した。
バリケードが張られて、人は大銀杏のそばには今、近寄れないようになっているのだが。
八幡宮の鳩だけは、ひらひらと空から銀杏のそばに舞い降りる。八幡宮のお使いは鳩だから八幡宮の「八」の字は、実はよく見ると二羽の「鳩」が向き合っている字なんですよね。その鳩たちがえらく木のそばに寄ってたかっているものだから、なにをしているんだろうか?としばし画像を見ながら考えていた。

おおっ。
虫ですよ。虫(笑)。
いきなり地上に根が出てしまったから。
無数の虫たちが蠢いているのでしょう。

それを。
「ご馳走だ~~~!」とばかりに、鳩くんたちはむしゃむしゃ喰ろうておるのでございます。

いやはや。
逞しき哉。

銀杏は倒れて尚、なにものかの役に立っているのであるね。

大銀杏の君、千年の時を経て隠れ給へり。