Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

Recognition

2007-02-25 | Weblog
そうか、と思った。
ここまで、来てしまったかと。

ネットでふらっと漫画を立ち読みした。
その作家は、私が好きだった作家のアシスタントとしてデビューした人だった。絵柄を見ればすぐに分かった。

久しぶりに見た彼女の作品は、随分と現代的に、どこか無機質なタッチに変わってしまっていた。ささやかな震えに似たものが肌の下を走る。そうか、時が過ぎるということは、こういうことなのか。

現代の心の闇を描いた作品に変わっていた。
かつては、ファッショナブルな恋愛を描いていた作家だった。

哀しいのか?
それはどうだろう?と首を傾げてみる。
内容の質は、かつてよりも遥かに深い。

ただ、見えるものが多くなってしまったのだなという、そんな一抹の哀しさが心を通り過ぎた。

人の心が見えてしまったら、それは哀しいね。
見えてしまうことは、きっと、おそらく、とても哀しい。

見えたと思っているそれが「本当」なのかどうかなんて、実は少しも分からないのだけれど。


取るに足らない些細なこと、など。

2007-02-25 | Weblog
その1:
PCをたちあげたら、メッセンジャーがうかつにもそのままになっていた。そこへ、数年ぶりに以前の職場での後輩♂からメッセージが入る。彼は今、ある「王子」の在籍する大学で働いているので、結構忙しいのだそうだ。日曜だというのに、こんな時間まで働いてご苦労なことである。

昔から、この人は努力の人であった。世話焼きで、人が面倒くさがるようなことを進んでやってしまうので、なんだかいつも「貧乏くじ」を引いているような印象がないでもないが、そこが彼の良さでもある。

ほんの数分、近況報告をしてメッセンジャーを閉じる。近いうちに鍋パーティーでもしましょうという話になった。長年続いている音楽家の彼女と、もう結婚でもしたかと思ったが、マンションまで買ったのに結局結婚はしていないそうである。ま、色々あるんだね。仲が悪いわけでもないみたいなので、いいんではないか。

ほんのりと、懐かしい日々が思い出されて心が温まった。
彼とふざけた日々は、随分と昔のことであるなぁ。


その2:
昨日、届いたワイン。結構値段の割りに美味しかったので、ネット通販会社へお礼状を書いた。「美味しかった」というただそれだけのメールだったのだが、早速ご丁寧にお返事が来ていた。社長自ら。それほど大きな会社ではないからだろうけれど、やはりこういう一手間が、ネット社会になった今でも印象を変えるのに役立つと思う。

こういう人が運営している会社ならば、また買ってやろうと思う。私の少ない稼ぎの中でやりくりするにあたって、お金を使うということは大事である。それでも、こういう律儀さを持っている人の店ならば、また買ってみたいと思わせられる。

酔っ払ったついでに、真夜中に書いたメールである。本人も出したことを忘れていたほどだ。

返事をくれたことももちろん嬉しい。けれども、「お客様に喜んでいるいただけることが、最上の喜び」と言い切る店主にとって、「美味しかったよ」というメールがおそらくは与えたであろう励ましなり、喜びなり。そうしたものの一翼を自分が担えたということが、また嬉しい。私は不味いものを美味しいと褒めることはしない。本当に値段の割りに美味しかったから、そういう感想が自然に出て、それを伝えたいと思ったのだ。

こんな些細なことで、温かいと思う。
こんな些細なことだから、温かいと思う。


バナナの誘惑

2007-02-25 | Weblog
少し懐かしい話をする。

先日、友人達と会っていた時に思い出したという元彼。立ち寄ったカフェのウェイターが少し雰囲気が似ていたという元彼。仕事の時は茶色のスーツにピンクのネクタイ、靴はパトリック・コックス。殺し文句は「ぽっちりさんはvermeerとか、好きでしょう?」というのは、全部同一人物である。

年下の、背は小柄だったけれど、色白で夜を共にした時、上気したピンクの肌色が美しく映える人だった。

ある日、彼と(普通の(笑))ホテルで一泊したことがある。朝食のブッフェがついていたので、朝食を彼と一緒に取った。けだるい(←当然!(笑))朝である。(何しろ年下なので体力は彼の方がありましたしね・・(笑))

朝食のブッフェのフルーツの中に、バナナがあった。ワタクシは昔からバナナを人前で食べるのが苦手である。だって、どう考えても「フェラチオ」しか想像させないではないか
。大きなバナナを一本目の前に出されたりしたら、ワタクシは当然舐めてしまう。かじってはいけない、という「刷り込み」がされているのだ。(←誰に???)

この年下の彼は、なかなかいぢわるな君であった。デザートにバナナを取っていた。しかも、それを目の前で剥いた後、ワタクシに差し出したのだ。

「?」

いや。ぼたんちゃんと違って私はとうに処女ではないので(笑)、彼が何を期待しているか分からないではなかった。分かりすぎるほど、分かっていた。だから尚更、「アホか、こいつは」と思うと同時に、アホだなあ、と思いながら可愛い♪とも思っていたのである。

微笑みながら「何?」と鼻で笑って聞いてみた。

「食べさせてあげる♪」と彼はにやにやして答える。いーかげん、朝である。夜だけでなく、朝にも当然「済ませて」きたばかりの二人である。よく、そういうこと、言えるよなぁ・・(苦笑)。

おーおー、そっちがその気なら、受けて立とうじゃないか(笑)。

私は彼の目を見つめながら、顔の前に差し出されたバナナを舌の先で舐めつけた。十分に濡らしてからバナナを口にほおばった。噛みは、しない。丹念に嘗めあげた。視線も逸らさずに。

(ナメたまねしてくれるじゃないの。誰だと思ってるの?)

そんなことでひるむはずが無いだろー。このワタクシが(笑)。馬鹿者めっ!

このバカ男は、それは嬉しそうにその様子を眺めていた。その数ヵ月後、あっけなく振られるとも予想だにせず。(私だってこの時は予想だにしていなかったが・・・(笑))

「食い方、いやらしいなぁ・・・

(そうして欲しかったくせに、何を言ってるのだよ、君はっ!

今思えば、バカップルの幸せな一時であったのだなぁと思う。
幸せなんて、実は日常の些細な事ばかりである。過ぎ去って思ってみれば。

ただ、単に隣に君がいて、笑っていたということ。
そういうことが、シアワセだったのだなぁといつも思う。

バナナを見ると、ワタクシはいつもそのシーンをふと思い出す。
本当に若くて、バカだったけれど、あれはあれで楽しかったな、と。

ワタクシは今でも。
好きな男がバナナを差し出してきたら、上手に舐めてみせるだろう。


ワタクシは、バナナの誘惑にはつくづく抗えない(笑)。