みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

スサノオ尊とヤマタノオロチ

2018年10月10日 | 俳句日記


斐伊川の鳥上と言う所に着いて、川の畔
でスサノオ尊が休んでいると、上流から
箸が流れ来た、どうやら人が居る。
尊は腹が空いていたのである。

川を遡ると、老夫婦とうら若き美女が抱
き合って泣いている。
英雄は美女に目ざとい。
尊は声を掛けた。

「なぜ泣いておる?」
「はい、この里には八岐大蛇と言う怪物
が棲んでおりまして、毎年娘をさらって
いきます、今年はこの子の番なのです」

「なに、で、どのような怪物じゃ?」
「頭と首が八つ、胴は山々を越えるほど
に長く、曲りくねる長い尾も、また八つ
の大蛇なのです」

尊は髭に手をやって考えた。
「よし退治したら娘を嫁にくれぬか?」
「はい‼︎喜んで。貴方様は?」
「吾はスサノオと申す、天孫じゃ」

早速、尊は支度に取り掛かった。
「準備が要る、里の者を出来るだけ集め
て、斯くの如くにせよ…」
雨季が来る前にやっつけたかった。

斐伊川は暴れ川であったという。
雨季に入ると毎年のように氾濫し、人家
を流していたのである。
尊は乱暴ではあったが頭の回転は早い。


地図を開くと成る程と納得がいく。
川は、出雲市の南及び南東部の中国山地
から幾筋も流れ出し、宍道湖西部の平地
を不自然に大きく迂回して湖に至る。

ごく普通に考えると、支流が平地部の手
前で本流を形成したとなれば、最短距離で湖に流れ込む筈である。
そして、氾濫を繰り返し扇状地を造る。

ははん!人の手が入ったな⁈
支流の数を当たると八本ある。これで決
まり、やはり尊は治水に成功したのだ。
手順を推理してみる。

尊は八つの宮を建て、そこに酒舟を置か
せてオロチがそれぞれの首を突っ込んで
酔ったところを十握剣で頭を撥ねた。
頭を撥ねるとは方向を失わす事である。


また宮とは井堰のことだ。

つまりはそれぞれの支流に堰を築き、水
量を調節しながら本流を迂回させた。
すると扇状地は肥沃な大地となる。


こうして尊は出雲の人々の信頼を勝ち取
り、奇稲田姫をも手に入れたのである。
しかも尊は旅の途中で、農業技術と五穀
の種を手にした篤農者でもあった。

いかな美男子、剛力でも貢献あっての英
雄、美女は英雄にしかなびかない。
民の信頼と美人妻、しかも勇気がある。
もはや王者の道しかなかった。

今でも斐伊川の中流域に、四本の支流を
集めた「さくらおろち湖」というダム湖
がある。
この時の名残りかも知れない。


(…つづく)


10月10日〔水〕曇り 時々 小雨
就活ルールが見直されるらしい。
経団連は撤廃の意向だ。
その背景は新卒者がなかなか戦力になら
ないことを痛感して来たからだ。

時代の流れは加速している。
成長を待つ時間が無い。
実力本位の採用が企業を救う。
マニュアル族は淘汰されるのだ。

学生は裸になることだ。
風潮の衣を身に纏って満足するな。
何がしたいのかを真剣に考えるのだ。
でなければ生き残れない。

〈アレコレと 思い悩むな 冬支度〉放浪子
季語・冬支度(秋)






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