みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

大己貴命と須勢理姫の恋

2018年10月18日 | 俳句日記


大己貴命(オオナムチ)は大国主の前の名で
ある。
昨日書いたスサノヲの最期の言葉から大
国主命と呼ばれることになる。

母神からスサノヲを頼れと言われたオオ
ナムチは遥々とスサノヲを訪ねた。


「オオナムチ、お前は血筋が良いせいか
優しすぎる。優しいだけでは政事は出来
ぬぞ」

「はい」

「出雲を治めたければ、まずお前が変わ
らねばならぬ。儂のシゴキに耐えられる
か?」

「はい、せっかく尊がオロチを退治して
奇稲田姫(クシナダヒメ)とともに治めら
れていた出雲を、我ら一族にお返し戴き
跡を継がせて頂きましたのにこの為体、
何としても今一度戻って治めとうござい
ます」


「よくぞ申した。では明日からまず胆を
鍛える。それから剣と弓の道じゃ」

スサノヲのシゴキは凄まじかった。
蛇のムロに寝かせたり、ムカデと蜂の巣
に閉じ込めたりと忍耐の極限にまで追い
詰め、胆力を鍛えた。

次に剣と弓である。
オオナムチの身体のアザは日に日に増え
、両の手指は皮がむけ血が滴った。
オオナムチは良く耐えた。

その姿を影から心配そうに見つめる乙女
がいた。
スサノヲと奇稲田姫の娘、須勢理姫(スセリヒメ)である。

「オオナムチ様…!」

眉目秀麗な貴公子が血みどろになりなが
らも耐え続ける姿に姫は「キュン!」と
来ていたのである。
オオナムチは日毎に逞しくなった。

彼も姫の視線を感じない訳が無い。
ひと目見た時から恋心は芽生えていた。
だから頑張ることが出来た。
男とはそうしたものだ。

いよいよ出雲に戻る日が近づいてくる。
オオナムチは焦っていた。

「スサノヲ様にお話をしなければ…」

姫を娶りたかった。
しかし相手は天孫族、どうしても口に出
すことが出来ずにいた。
そんなある日、姫が近付いて来た。

「オオナムチ様これを…」
姫の愛用の琴であった。
その時彼は決然と叫んだ。

「姫、逃げよう! 出雲に帰って共に国を
治めよう!」

数日後、オオナムチはスサノヲの宝剣と
宝弓を奪い、姫を背負うと一目散に出雲
を目指して駆け出した。
姫は琴をしっかりと抱えていた。


二人の背中にスサノヲの天も割れんばか
りの声が投げ掛けられた。
昨日書いた最期の言葉である。
「‥、是の奴!」に尊の哀歓が迫る。

こうして二人は出雲に着いた。
これからは大国主である。
大国主派の族長とヤガミヒメが娘を抱い
て待っていた。


大国主がスセリビメをどう紹介したかは
[古事記]には書かれていない。
この子は木俣の神として御井神社の祭神
となる、安産の神さまである。

(…つづく)


10月18日〔金〕晴れ時々曇り
今日は靖国神社の秋の例大祭である。
神社には魂の波長が合う神々が集うと、
スピリッチャルな人々は言っている。

御利益を得るには、こちらの波長を高め
ておくことが肝心なのだそうだ。
靖国の英霊に心から感謝することがその
第一歩だと思っている。

〈靖国の 御魂にぬかずく 秋深し〉放浪子
季語・秋深し(秋)









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