みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

レヴィ=ストロース

2018年08月24日 | 俳句日記


レヴィ博士が27歳の時にサンパウロ大学
の社会学の教授として招かれ時から、民
族研究のフィールド・ワークが始まりま
した、その頃の写真です。

なぜ民族学なの?なぜブラジルなの?
それを理解するために、まず博士の生い
立ちを紹介しておきましょう。
時代背景が大きく関わっているのです。

1908年、博士は父親が印象派の画家の家
庭に生まれます。
両親共に仏国籍のユダヤ人でした。
場所は、ベルギーのブリュッセルです。

聡明な子で、6歳の頃から学校の試験で
良い成績を取ると、父さんから浮世絵を
褒美に貰って喜んでいたそうです。
音楽も好きで、ワーグナーの大フアン。

大地や植物にも興味を持ち、成績が良い
ので高校では哲学コースに進みますが、
同級生の思弁を弄する技巧的な論争に嫌
気がさして、パリ大学の法学部に入学。

社会と人の関わりばかりの講義にも興味
を持てず、ソルボンヌの哲学講義に通い
、人類学者のローウィが書いた「未開社
会」や「国家の起源」を知ります。

時は第一次大戦後の復興景気とシュール
レアリズムの時代、チャップリンの「黄
金狂時代」が大ヒットした頃でした。



多感な青年レヴィも観たことでしょう。

そして、社会主義が台頭しソビエト連邦
が成立します。
また、その変形でもあるナチス労働党が
ドイツの政権を奪取しました。


ともにユダヤ人に偏見を持つ政権です。
その頃地方の哲学教師をしていた博士は
サンパウロ大学から招聘を受けました。
天の啓示とも言うべき事柄でした。

博士は未開のインディオの生態を熱心に
研究し始めました。
そこで彼らの優しさに共感を覚えると共
に「野生の思考」に気付くのです。

しかし時代は平穏な研究を許しません。
ドイツ軍のチェコ侵攻を機に、母国から
招集令状が届いたのです。
そして国境の塹壕要塞に送られました。

ある日、塹壕の縁に咲くタンポポを眺め
ていると、花びらが整然と並ぶ秩序に気
付きました。


その時、自然界が創り出す秩序と人間の
思考が作る秩序には連続性があるのでは
ないか?何故なら思考は自然界が人間に
与える信号によって始まるからです。

その秩序を言葉の概念として捉えるので
はなく、信号或いは記号の構造として認
識してみては?そう考えた所から「構造
主義」への道が始まりました。

豊かな感性と観察眼によって得られる直
感、I Y I(intellectual Yet Idiot)な秀才に
は及びもつかない発想ですね。
自然と人間存在への深い愛情の賜です。

それから博士の天命とも言うべき生涯を
かけた闘いの日々が続きます。
福沢諭吉ではありませんが、一生を貫く
仕事の完成への道のりです。


晩年の博士には仕事をやり終えた安らぎ
と気高さが感じられます。

明日は「野生の思考」の中身について考
えていきましょう。

8月24日〔金〕曇りのち晴れ
この歳になると、時折窓の外から耳に届
く子雀たちの声が、小鳥のさえずりのよ
うに心地よく聞こえる。

レヴィ先生に言わせると「そんなことは
当たり前で、両方とも天地がそう創造な
さっている」と叱られるかもしれない。

そう聴こえないならば、こちらの心の構
造が歪んでいるということだろう。
そうでなくて良かった。

〈子雀の 喜び運ぶ 秋の風〉放浪子
季語・秋の風(秋)







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