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近似とは

2005-06-08 23:11:34 | きもいこと
Born-Oppenheimer近似について。あれは、つまるところ「原子核を止めておいて電子ハミルトニアンの固有関数を計算した後、その固有関数で分子の波動関数を展開する→数値的に評価」という流れを持っている。
 今まで、僕の中での近似の捉え方は、○○に比べて大きい・小さいのでもう一方は無視できる、程度のものでしかなかったので、後者の数値的な評価をもってBO近似としていた。ところが、永田先生の話によれば「そもそも原子核を止めておいて電子ハミルトニアンを『計算してみよう』と思える段階が近似の一歩目だ」とのことだ。これはどういうことだろう。

 原子核の質量は電子よりはるかに重い。すなわち、古典的描像ではりんごと地球の関係と同じで、地球を止めてりんごに働く重力のみを考察したことに対応する。そこから、重力加速度、という近似概念を生まれたわけだが、このような概念が成立しうると気付くのは、万有引力の法則の級数展開を第一項で切ったからではあるまい。重いものは動きにくい、という直感がその概念の成立規範だ。すなわち近似できるかどうかを判断し、めんどくさい数値評価にエネルギーを注ぎ込むことが近似の第一歩である、という主張がここに現れる。

 それにしても、これが物理的思考なのかもしれない。数学のみで考えると、「近似というのは数値的にある制度で許容できるもの」ぐらいのもんでしかない。しかし自然科学では、概念の成立において非常に大きなウェイトを近似が持っている。世の中の法則の99%は近似法則である、といっても過言でない(かもしれないとは言い切れないと思われる)。少し賢くなった気がするが、これもきっと丸め誤差程度のものだろう。