世界の株式市場が大きく値を下げています。
私自身はまだまだ厳しくなると思っており、そうした内容でたびたび書いています。
(例:http://blog.goo.ne.jp/tera-3/e/b99795227a3a8330fe2f9f0883d851e8
http://blog.goo.ne.jp/tera-3/e/501528d75ac9416ee50353d16e6911ae)
ですので、別に驚くことではないのですが、いよいよ来るのかな、という感じはしています。
紆余曲折はあると思いますが、後戻りが出来ないところまで来ているように思います。
そして、それが始まると、米国はもちろん、日本にも大きな影響をもたらしていくことになるでしょう。
決して対岸の火事ではないのです。
英国フィナンシャル・タイムズ紙の記事よりです。
タイトルは、“単一通貨ユーロが抱える本当の「致命的欠陥」”
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/23081
なぜユーロはこんなトラブルに見舞われているのだろうか? そのわけを知りたかったら、債務やソブリン債のことをちょっとだけ忘れて、ユーロの紙幣をながめてみるといい。そこには、この世に存在しない想像上の建築物が描かれている。
数字を使った分析の記事や解説が多い中で、この方の着眼点は面白いです。
普通、国の紙幣には、その国で有名な歴史上の人物や場所が印刷されるのに、ユーロ紙幣はそうなっていない。
そう言えばそうかも、と思いながら、財布の中にあったユーロ紙幣を眺めてみると、確かにそうです。
所在の分からない、あえて言えばローマ時代のものっぽい水道橋や、教会のステンドグラスのようなものが描かれています。
なぜそうなっているかと言うと、
特定の国を連想させる場所の絵や英雄の肖像を載せていたら、きっと大変な論争になっただろう。そのため欧州通貨当局はあえて、どの国のシンボルにもなり得るがどの国のシンボルにもなりきれない曖昧な絵を選んだのだ。
それは確かな事実なのでしょう。そして、
そのユーロ紙幣が欧州大陸の銀行の現金支払機から出てくるようになって10年になるが、ヨーロッパ人としての共通のアイデンティティーは欠如したままであり、今や共通通貨自体を失敗に追い込みかねない致命的な欠陥となっている。
メンバー諸国の間で共通したアイデンティが築けなかったこと、それがユーロの致命的な欠陥だったということなのです。
欧州の人々の間では、欧州共通の機関や制度に対する忠誠心よりも自国を想う気持ちの方がはるかに強いために、政治指導者たちが現実的に検討できる解決策には制約があるのだ。
為替が固定されてしまっているので、経済の弱い国はどんどん弱くなり、経済力のある国はどんどん強くなります。
なので、本当は、財政政策も統一して、ユーロ共通の債券、所謂ユーロ債を出すべきだと思いますが、実際にはそうなっていません。
「ユーロ圏共通債(ユーロを用いるすべての国々が共同で発行する債券)」などあり得ないと一蹴するドイツのアンゲラ・メルケル首相は、想像力が欠けているわけでもなければケチなわけでもない。
首相はただ、南欧の債務を恒久的に引き受けることなどドイツの有権者は絶対に受け入れないことを承知しているだけなのだ。
それが有権者の選挙によって選ばれる者の宿命なのです。
このユーロ圏共通債については、同じく債権国であるフィンランドやオランダの有権者の方がドイツの有権者よりも強硬に拒否の姿勢を示している。
その一方で、厳しい緊縮財政を強いられているギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアといった国々では、冷酷で独善的な北欧の国々への怒りが強まっている。
実際問題、ユーロ諸国は、もうバラバラになってしまっているのです。
なので、複雑なプロセスが必要なユーロ債の構想自体、ほとんど可能性のないものになってしまっている、と言わざるをえません。
そんな状況下、複雑なプロセスを必要としない現実的な方法として筆者も賛成している方法は、欧州中央銀行(ECB)による、ギリシャ、イタリアおよびスペインの国債買い入れです。
ただ、問題が1つある。ドイツはとても珍しい国で、中央銀行の行動が政治的な情熱を本当にかき立てるのである。メルケル政権の幹部が筆者に先日話したところによれば、ECBの国債買い入れプログラムは既にドイツで物議を醸しており、それほど長続きするとは思えないそうだ。
実際にこの国債買い入れプログラムに反対したECBのドイツ出身の専任理事が辞めてしまいました。
そしてマーケットに大きな不安感を与えることになりました。
筆者は、残る選択肢は2つある、と説明します。
1つは、緊急融資も組み合わせた現在の財政緊縮プログラムがいずれ「うまくいく」という道。もう1つは、一部の国がデフォルト(債務不履行)を宣言し、恐らくユーロから離脱するだろうという道である。
筆者は、一つ目についてそれ以上解説していません。
財政緊縮プログラムは、経済成長にマイナスに働くものです。なので財政再建にもプラスとはなりません。
多分筆者も、それが「うまくいく」とは思っていないのでしょう。
ギリシャは、予想していたよりも今年のGDPのマイナス幅が大きくなると発表しています。
それに対して、ECBやIMF等は、更なる緊縮財政を求めています。
まるでギリシャが自滅していくように追い込んでいるように思えます。
もう一つのギリシャのユーロ離脱についてです。
ギリシャのユーロ離脱は、最終的には同国の長期的な利益になるかもしれない。だが、それによる経済的・政治的なダメージは非常に厳しいものになり得るだろう。そして、その影響はギリシャにとどまらないかもしれない。
欧州のあちこちで銀行が破綻したり、さらに厳しい緊縮財政政策が実施されたり、失業がさらに増えたり社会不安が生じたり、極右・極左政党が躍進したり、国家間の緊張が高まったり、EU自体に対する脅威が増したりする恐れがあるのだ。
全くその通りだと思います。
しかし、オランダの首相含めて、ギリシャがユーロを脱退すべきだという声を挙げる人は増えています。
多分、それがどれだけ壊滅的な事態に繋がるか、そうなるまで理解出来ないのでしょう。
例えわかっていても自国民の手前、そう言わざるを得ないという事情があるのかも知れません。
EUの中で、意思統一がとれなくなった時、それがユーロの終わりの始まりなのだと思います。
そして、共通のアイデンティティが見い出せない以上、やはりその方向に進んでいくのでしょう。