岩切天平の甍

親愛なる友へ

映画館

2007年08月27日 | Weblog

  テレビの仕事をしているのに、実を言うとテレビを見ない。
仕事の参考にするために必要に迫られてビデオを見る事はあるけど、
それでもテレビをつけているのは一月に三時間もない。
良くない事かもしれないけど。

一瞬ごとに絵を切って行かなければならない撮影の仕事では、感性を頭で整理していたのでは間に合わないので、肌に擦り込んでおかなければならない。
おかしなものに触れたときに、体の具合が悪くなるくらいでなければならない。日常的にレベルの低い物に触れていたのでは、感性が麻痺してしまうので、テレビは見ない。だからたまに見るとモノによっては吐き気をもよおす事もままある(スバラシイ番組もございます、ハイ)。

そのかわりと言うわけでもないが、毎週一本は映画を見ることにしている。
その気になりやすい単純な僕は映画を観るとふにゃりと柔らかくなる。
ジェームス・スチュワートとグレース・ケリーの会話を聴きながら、前に座った二人が寄り添う。映画は始まったばかりなのに、もう今しがた口げんかして出て来たカミさんに会いたくて帰りたいような気持ちになる。
仕事先で嫌なやつだと思った誰かに、明日はもう少しやさしくしようかと、一瞬だけど、思う。

音楽を聴きに行くのもいい。気持ちが溶けて行く。
百々徹のピアノが、いくたび僕が壊しかけた人間関係を繕ってくれたか、本人は知らない。酒のせいだったかもしれないけれど。そうして次の朝、新しい気持ちででかけて、やっぱり打ちのめされて帰って来ては、また映画館の暗闇の中へ逃げ込んで行く・・・。



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