岩切天平の甍

親愛なる友へ

大豆マンブラザース

2007年11月04日 | Weblog

 大豆農家取材第二弾、アイオアへとんぼ返り。

やはり大豆を収穫しているシーンを撮影したいところだが、すでに秋は深し。
たいがいはすでに収穫後の整地まで終わっている。それでも現地で集めた情報をたよりに走り回る。だいぶ日が傾いてきた。
「今回のロケで今まで一回も大豆見てないもん、無理じゃないのー?」
あきらめ気分99パーセント。

「で、でえずだぁ!」
見渡す限りの裸の大地の真ん中、まるで逆十円ハゲのように残った大豆に一台のコンバインが今にもトドメをさそうとしていた。
急いで車から降りて「おおーい!」と手を振る。
コンバインが止まって、おっちゃんがのっそりと降りて来た。

「これこれこういうわけで、撮ってもいいかな?」
「ふーん、よくみつけたなーここ。これが最後だと思うよー。」
おっちゃんについて巨大なコンバインのステップによじ登る。
「おいおいそこに乗るんかい。あぶないよー、落ちたら死ぬよー。」
「しっかりつかまってるからさ、ホラ、こんなふうにさ。」
強引に押し切る。

運転席はガラスのキャノピーで囲まれているから大丈夫だけど、外のステップは大豆を刈り取るホコリがもうもうと立ちこめる。息が詰まって死ぬかと思った。ひとしきり撮ったら一人乗りのキャノピーに逃げ込む。

「おー、こんなせまいとこにそんなでかいカメラ持って大変だなー。」
「すごい風だね。いつもこんななの?」
「いやー、これは珍しいよ。年に一回か二回しかない強い風だね、今日は。だから風向き考えて刈らないと飛んでっちゃうんだよね、大豆。」
「へーえ。大豆終わったら今度はなんか他の物植えるの?」
「いやー、ここらへんはダメだね。寒すぎちゃって。雪が二フィートも積もるから、もう少し南へ行けばダブル・クロッピングやってるけどね。」

コンバインの音以外何も聞こえない。果てしない農地の真ん中でおっちゃんはひとり黙々と作業するんだなぁ。ここでこんなふうに話しているのは、ずいぶん唐突な気もするけれど、べつに違和感が無いのがなかなかうれしい。
ゆっくりと日が沈んで行った。



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