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撮影の合間の待ち時間に、ちょっと写真のギャラリーを覗くことにした。
Andrew Smith Gallery、アンセル・アダムスをはじめスティーグリッツ、ケーゼビーア、ブレッソン、ウェストン、アーウィットなど、きら星のような巨匠たちの、どこかで見た事のある有名な写真のオリジナル・プリントが並んでいる。このコレクションはMOMAもかなわないだろうと思うほど立派だ。
アシスタントのK君は写真を始めたばかり。このご時世に敢えてニコンのFM2というマニュアルのフィルムカメラを買い、モノクロを詰めて、休みになると写真を撮りにでかける。目と口を丸く開けてうなっている。
古典とも言える写真たちに交じって、アニー・リーボビッツの作品もあった。これも有名なもので、僕の持っている彼女の写真集にも収載されている。
K君がその前に立ち止まって、首を傾げている。「ああ、やっぱり。」
去年、ブルクリン・ミュージアムであったリーボビッツの回顧展を見に行って、彼は随分感心していた。僕はがっかりしたけど。
「なんとなく分かりますね、彼女の写真って。でも・・こんな風に他の人の写真と並べて見ると、思っていたのと何か違って見えるんですよね・・・。」
「うーん、有名人を表面的なアイディアで撮ってるだけだから・・浅い感じがするよね。」
世界中で絶賛されている“現代を代表する写真家”の彼女だから、中にはこんな身の程知らずの暴言を吐くひね者が一人くらいいてもいいだろう。
それにしても彼はちょっと嬉しい事を言うな。
写真を撮るのが面白くてしょうがなかった。知識も無くテクニックも無く、ただひたすら撮ることが楽しくて、自分の中に残したいものを撮ってた。
あれから30年近く・・・何台かカメラを買っては手放し、でも、AV-1はずっと手放せず押入れの段ボールの中に入ってる。
シャッターがまだ切ることができたら、あの頃このカメラで夢中で撮った写真にいったい何人の人が写ってくれただろうことを思い出して、なんか泣けるだろうな・・・。