岩切天平の甍

親愛なる友へ

エタノール

2008年06月10日 | Weblog

幸いにもトルネードは家を直撃したわけではなく、トウモロコシの倉庫のビニール屋根が半分剥がされているだけだった。

ギャリーさんは知り合いのトラックを総動員して忙しく積み出しを指示しながらも、いやな顔ひとつせずに我々の撮影にも付き合ってくれた。
本当にありがとう。

ガソリンスタンドでバイオエタノールを買う客に訊くと、皆が口を揃えて「安いから買うのさ。」と答える。

バイオエタノールはそのまま売ろうとするとガソリンより高くなってしまう。
米政府から投入される莫大な補助金無しではやって行けない。

バイオエタノールは、原料となる植物の光合成で、大気中からCO2を吸収するため、それを燃やしてCO2を出しても、全体としてはCO2量を増加させないという事になっていて、京都議定書では、バイオエタノール使用によるCO2は、排出量としてカウントしないことになっている。

京都議定書にも参加しない米共和党政権は、環境問題に消極的との批判をかわすためにバイオエタノールに力を入れる。
環境を大義に税金をつぎ込み、潤った業界から政治に寄付金が還元される。そこに商機を見る投機マネーが一気に流れ込んで、農家は踊り、生産拡大だと設備投資した矢先に値崩れが起きて、エタノール工場が潰れる・・。
バブリーだねぇ。どうにかならんのかねぇ、この投機マネーってやつ。
一体誰が環境の心配をしているって言うのか・・。

たとえガソリンよりコストが高くても、いつか枯渇するであろう石油に代わる代替燃料の開発はもちろん悪い事ではないだろう。
中東などの石油に頼るエネルギー政策を変えて行くのは国益にかなうと政府は言う。

でも、仮にアメリカの全農地をあてたとしても生産できるエタノールの量はアメリカの石油の使用量の二パーセント程度にしかならないらしい。それ以前に生態系破壊を考えるとそれさえも出来えない。

「結局、人口問題が解決すれば、全部解決するのよねー。」
「行き過ぎた自由経済がいけないんだ。」
「グローバリズム、グローバリズム!」

アイオアをまたまた西へ横断しながら(一体何周するんだ)車の中で、不毛で、だけどわりと真剣な議論を延々と繰り返す。

何だかハイウェイの向こうに人類滅亡の背中が見えてきそうな気がした。