岩切天平の甍

親愛なる友へ

放浪の旅

2008年03月10日 | Weblog

夕飯を食べながら、コーディネーターのM君が二十五歳の頃にした放浪の旅の話を聴く。

M君のお母さんは台湾人でお父さんがアメリカ人。
美術大学を出たM君は絵の道具をしょって旅に出た。

「北海道で雨に降られて、お寺があったから泊めてくれませんかって訊いたら本堂でよかったらどうぞって、布団を敷いてくれて、暖めた牛乳をくれたんだ。コップを返しに台所に行ったら、おかみさんがじっと見て、
『あのー、アメリカで私たちのこと、エコノミックアニマルって言ってるって本当なんですか?』って。」

それからホタテ、イクラ、シャケにお酒が出て「お風呂どうですか?五右衛門風呂ですけど。」「ごえもんぶろって何ですか?」「こう、板の真ん中を踏んでね、周りがちょっと熱いけど・・・。」

明くる朝、「お弁当用意しておきましたから。」とシャケ、イクラのおにぎり。「それからこれを。」と封筒を差し出す。
道中開けてみると、千円札が十枚入っていた。

東北で、また雨の夜、ラーメン屋に入って、セーターを乾かしていたらピンクの髪にパジャマを着てサンダルを履いた若い男たちがどやどや入って来た。

いきなりM君のところへやって来て「おまえ、どっからきたの?」そのまま飯場の男達とはしご酒。ねぐらに連れて行かれ、布団を敷いてくれて、大きな桃を差し出す。酔っぱらったM君はむしゃむしゃ食って寝てしまった。

あくる朝起きると男達は仕事にでかけて居なくなっていた。
M君はありがとうとつぶやいてまた旅に出る。