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労働実務:「解雇」の前に「退職勧奨」の検討を

2007-02-18 | 経営実務
今日は休日ながらもお客様からのご相談への対応を行っていました。相談テーマは「人員整理」について。業況が芳しくなく、やむを得ず退職頂かなければならない方に対する対応策について相談対応を行いました。

従業員と会社が雇用契約を終了する場合には、「申し入れ者」と「合意の有無」の組み合わせにより、次の4つのパターンが考えられます。
(1)辞職 ・・・ 従業員からの一方的な意思表示による雇用契約の終了
(2)一般的な退職 ・・・ 従業員からの退職願に対して、会社が承諾する雇用契約の終了。
(3)退職勧奨 ・・・ 会社が退職の申し入れを行い、従業員が承諾する雇用契約の終了。
(4)解雇 ・・・ 会社側の一方的な意思表示による雇用契約の終了

このうち、「解雇」は、労働基準法にある「解雇権濫用の法理」等に基づく要件などにより、非常に大きな制限がかけられています。また、解雇を従業員から見れば「他人だけが決めたことによって、生活への極めて重大な影響を被ることになる」ことから、普段以上に「事を荒立てもかまわない」という感情が生じやすくなります。つまり、「解雇」は、その位置づけから常に「モメゴトを引き起こす種(紛争リスク)」を孕んでいると言えます。

このリスクへの対応策としては、「出来る限り解雇を避ける」というリスク回避の選択が必要となります。その中で、私がおススメするのは「予防的処置」、すなわち「会社から申し入れた上で、合意によって退職していただく」退職勧奨の活用です。ということで、今回のご相談でもこの「退職勧奨」を軸とした対応をご提案いたしました。

ところで、この「退職勧奨」で注意しなければならないのが「会社側からの申し入れと、これに対する従業員側の応諾に基づく雇用契約の終了」をプロセスの上できちんとたどっていくということです。よく「退職勧奨」の中では「従業員に退職願を出させる」という対応が行われていますが、退職をお願いするのはあくまでも「会社側」であることに鑑みればあまり望ましい対応ではありません。その上、このような対応は、従業員に対して「何で会社から辞めろといわれているのに、こちらから願いを出さなければならないんだ」という気持ちを湧き上がらせる素となって、「まとまるものもまとまらなくなる」きっかけを与えかねません。

そこで退職勧奨でぜひ行っていただきたいのが、「退職に関する合意書」の締結です。会社からの申し入れに基づく退職であることに区分け、退職予定日や退職に当たっての諸条件などを文書としてまとめ、双方が納得の上締結いただくのが良いのではないかと私は考えます。

退職に当たっての条件として記載する内容としては、退職予定日までの勤務の取り扱いや、退職金に関する事項、退職にあたっての手続き処理や業務の引継ぎ、機密保持などが上げられます。この他、離職票に記載する離職理由についても減給しておくことが望ましいでしょう。

退職に関する合意書を作成する上で最も大切なことは「対等な立場で、一つずつ冷静に条件を確認し、合意を得る」ということ。たとえ合意に基づく勧奨退職だとしても、従業員にとって「会社を離れる」ということは大変な負担がかかることには変わりありません。だからこそ、「合意書」の作成と内容確認を通じで、従業員の不安を一つずつ丁寧に解消していき、「会社側からきちんと申し入れて、従業員がきちんと合意できる」ところまでもって行くことが必要なのです。会社所定の様式を準備することは良いことですが、様式の内容にとらわれることなく、従業員からの要望に可能な範囲でこたえていくことが大切だと私は考えます。

会社には、一度従業員を雇ってしまったら可能な限りその生活の糧を確保できる環境を維持する責任があります。それでも、会社側から見て「残念ながら辞めて頂きたい」と思う人がいるのであれば、その人に「辞めても良い」と感じてもらえるだけの努力をする方が、結果として会社も従業員も「次のステップ」に気持ちよく進んでもらえるのではないかと私は考えます。

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