
その日はミーティングを午前11時頃から始め12時過ぎに終え、得意先のある千歳烏山に向かった。用が済み、近くで昼食とお茶をした。
千歳烏山駅のホームに立った。狭いホームは若い女の子たちであふれんばかりだ。ここは、隣の仙川から乗ってきた白百合女子大生たちが急行に乗り換えるために一旦下車し乗り換える乗換駅となっている。


むせ返る車内で、内ポケットからマスクを取り出そうとすると、そのヒモが何かにひっかかった。「えーい」と少々無理に引っ張る。完全装着。電車の不自然な揺れを期待しながら新宿駅に着く。
JRに乗り換え池袋駅の改札口を出る。ふくろうの置物のある階段を上がる。パルコの建物を左折し傘を広げ、会社を目指し5メートルほど進んだ。
「すいません」と女性の声が後ろから聞こえた。




振り向くと、20歳くらいの若い女の子が息を切らし立っていた。どうやら僕を追いかけてきていたようだ。




「はい?」
――「すいません、お付き合いしていただけませんか?」――
突然の甘い声? なんてあるわけない。

僕の目の前に黒のメガネケースをかざした。
見覚えがある。何でこの若い子が持っている?
「すいません、これ落としましたよ」
「……え?そうですか。ありがとう」
と言うと、彼女はすぐさまきびすを返し走り去った。
でも、なんでそんなものを落とした? 内ポケットに入れておいたはずの……、あっ、そうか、マスクを取り出そうとしたとき、……引っ掛かったのは、…………。
いやあー、いいことする若い子もいるんだ、と感心し、この女の子にもきっといいことが訪れるように、と願った。


頼子殿、ありがとう。戻ってきました。毎日使ってます。
>老眼鏡?
↑↑お言葉ですが、、、、と、言い返せないところが、年齢を感じさせる!^ ^;;汗
結構道のりがあったのでは?
ハハハハハ、、、、
電車の中で内ポケットで引っ掛けためがねケースが、上部に持ち上がったのを気付かず、そのままの状態で池袋まで保った。それが、池袋の階段を昇った弾みで、落ちた、のではないか、と考えた。
僕自身、何で? 今、池袋で? あれから内ポケットはいじってなかったはず、と反芻してみたけど思い当たらない。
だからこれしかないな、と。。。。。
二十歳の娘に拾ってもらっただけでも、老眼鏡が余生の宝物になりますね。
新聞を読もうとするたび、思い出されて電車の中でニマニマしないでください。
ありがとう。ポォさん。
そうだよね、二十歳の娘に拾ってもらっただけでも、感謝だよね。
うん、確かに今、あー、この老眼鏡、紛失寸前だったんだよな、と思うよ。
ニヤッ・・・・・・!!!