たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
多趣味な毎日を紹介します。

28 チョン・ユジョン著

2013-11-03 23:13:21 | 韓国文学
私がこの夏休みにずっと読んでいた本。



作者のチョン・ユジョン作家はチョン・ミョングァン『鯨』と並び、2000年代で最高に面白い長編小説、と言われる『7年間の夜』の作者です。

実は『7年間の夜』も借りているんだけど、今年の韓国小説で話題のベストセラー、『28』から読んでみました。


物語はソウル近郊の架空の年、ファヤンを舞台にしています。

ある冬の日、謎の病気が発生します。感染力が強く、感染したら目が真っ赤に充血し、致死率は100パーセント。そして、どうやら犬と人と共通で感染するらしい。
ファヤン市は閉鎖され、閉ざされた中で人々は死の恐怖と戦います。

この病気の真相を巡って、動物シェルターの若い獣医師、救急隊の退院、病院の看護婦、救急隊から抜け出した過去のある退院ドンヘ、女性新聞記者、犬のリンガーなどが出会い、対立し、助け合い、疑い、殺し合い・・・という群像劇です。
それぞれの登場人物に焦点をあてて、多角的に話が進んでいくんですが、初めは接点がないように見えた登場人物たちがつながって話が動き出していくあたりが、最高にワクワクします。

大切なキャラクターの一人、というか、一匹、リンガーの章は、犬なのでより鋭く察知できる出来事、犬だから理解できないできごと、そして、犬も人と同じように悲しむ感情の起伏が、むしろ淡々としているほかの登場人物と対比的で、物語の流れを作っているようです。殺処分された仲間が助けを求める鳴き声が、幻聴となって聞こえるあたり、そんなことあるのかな?と思いながらも一気に読まされてしまいます。

また、謎の伝染病の発生にあたって大統領が戒厳令をだし、軍隊が街を閉鎖する、というくだりはやはり韓国ならでは。日本を舞台にしたら、なかなか市民に銃を向けるストーりーは書けないのではないかと。

チョン・ユジョン作家は元看護婦だそうで、救急病院の人の動きが目に見えるように鮮やかに描かれます。
また、これは作者の持ち味だそうですが(解説より)、予定調和を狙わないストーリー展開に引っ張られっぱなし。
例えば、アメリカのヒーロー映画だと
「この人は生き残るのね」と、一発で見え見えだったりしますが、そういう予定調和は一切なし。
感情移入していた登場人物がボロボロになって死んでいくのはショックですが、それも物語の力強さかもしれません。

『28』はナゾの病気が発生してから、一段落して物語が終わるまでの日数ですが、
私は28日以上かかりました・・・。

力強い物語に振り回されてみたい方はぜひ!!
今なら韓国の書店で平積み販売中です。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
話題作 (ハーちゃん)
2013-11-04 00:08:44
ですね(^^)。

たまさんの文章でとってもよくわかったから、読まなくてもいいかな、なんて(^^;)。ダメ?

まだ「魔人」を読んでいるのです。チョー遅い!
どうぞどうぞ。 (たま)
2013-11-04 00:52:39
いいとか、ダメとかの話じゃないですから。

わかりすぎるレビューはだめですか?
こわい… (海)
2013-11-04 06:52:33
こわすぎ、悲しすぎだわ(T_T)
しかも、実際にないとは言い切れなさそうな設定が怖い!
でも振り回されるのは好きです。
最近、ぬるめのばっかり読んでいるので、そろそろ熱いのが恋しいかな。

ううん (ハーちゃん)
2013-11-05 00:06:21
でも有り難いかな?だって読めないかも知れないし。
1冊読むのに時間がかかってね。辞書を引くのに(^^;)。
イヌははたして・・・ (ヌルボ)
2013-11-21 20:02:00
私は9月に読み終えましたが、28日どころかその3倍近くもかかってしまいました。

おもしろかったですが、たしかに「予定調和を狙わないストーリー展開」で、もし映画化されるとしたらラストを変えるでしょうね。

「軍隊が街を閉鎖する」とか「市民に銃を向ける」というのはまず日本では考えられませんが、韓国では光州事件があったし、チョン・ユジョン自身光州在住とか・・・云々は、自分のブログ記事でも書きましたので、目を通していただければ幸いです。
http://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/fdb7f12b6962643c28b27bee7996f961

なお、イヌははたして遠くにいる敵を探し出してまで復讐することがあるのか、という点については首をかしげているのですが・・・。
犬は (たま)
2013-11-21 21:58:36
犬の心理描写はリアリズムから外れてますが、
それがこの物語の面白さだと思います。

時間があるときに読ませていただきます。

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