
様々な仕事をするも失敗続きの林田夫婦は、
商売をする決意をかためた。
売り物は、
人に幸せを届けたいという思いから、
千羽鶴屋を営むことにした。
林田夫婦は店舗の借り入れの費用の為に、
親族から縁戚にまで借金して、
店舗を借りた。
店舗内のレイアウトをして、
夫婦2人で売り物の千羽鶴を3日間の不眠不休作業の末、
少しばかりやけど、
千羽鶴を店内に飾ることが出来た。
そして、
これらの千羽鶴は完売した。
林田夫婦は高値で売れた千羽鶴を量産しようと、
徹夜一歩前の折り作業に専念した。
千羽鶴は、
完成すれば売れるということが多かったけど、
次第に売れなくなった。
それでも、
林田夫婦は必死に千羽鶴を折まくった。
数ヶ月が経過した。
千羽鶴はひとつふたつ売れる程度になり、
結局、
千羽鶴は、
店内をびっしりと飾ることになった。
更に時が経ち------
林田夫婦は、
所狭しに店内を独占する千羽鶴を少しでも売ろうと、
期間限定千羽鶴10%オフのサービス販売をもしてみたが、
やはり売れなかった。
林田夫婦は、
借金返済に心を悩ませるようになった。
どうしても千羽鶴が売れないことへの焦りが強くなった。
そんな時、
エイジが店内に入ってきた。
しばらく千羽鶴を見回していたが、
林田夫婦に、
「こんなに千羽鶴置いてて意味があるんですか?フツー、商売って生活に必要なものが売れるんじゃないんですか?」と問いかけて来たので、
林田夫婦は、
「この千羽鶴は私たちが精魂込めて折り上げた芸術品です」と答えた。
エイジは、
「ふうん」と何気なく返事をして、
「けど、芸術品だと言ってもあんたらシロウトでしょう?」と尋ね返した。
林田夫婦は、
心に、
千羽鶴屋の失敗を悟ることになった。
エイジは、
「こんな同じ千羽鶴並べるよりも、光る千羽鶴とか鶴の鳴き声がする細工した千羽鶴なんかだったら売れますよ。人は他に売ってないモノを買いますからね」と言い、
店を後にした。
林田夫婦は考えた。
エイジの言うとおりの千羽鶴を折れば完売するやろう。
が、
自分らはシロウト。
そんなもん作れるはずがない。
林田夫婦は千羽鶴を仕舞い込み、
千羽の鶴キャンディ手作りして千羽鶴風にして、
お店に飾ったが、
直射日光で溶け出した挙げ句に、
アリにたかられてしまった。
林田夫婦は、
商売の難しさを知り、
夜逃げ計画を企てることとなった。