妊婦のジカウイルス感染で先天性異常が発生する問題で、そのメカニズム解明が少し進むとともに、抗生剤dulamycinが細胞への付着を妨げて予防に使えるかもしれない・・・と一筋の(しかし時間的にはまだまだの)光明が見えてきました。
- カルフォルニア大(SA,バークレー)の報告。
- ジカウイルスの感染にあたり、感染した細胞はすべてTIM1タンパクを持っていた。この細胞が、ジカウイルスが細胞に付着するにあたり重要な役割を果たしているのではないかと疑い文献検索したところ、デングや西ナイルでは抗生剤duramysinが付着を防ぐ役割をはたしていることが分かり、ジカウイルスでも試してみたところ効果が確認された。ただしこれは試験管内の実験であり、今後、生体内での研究が必要であるが、ワクチン開発よりは早く結論が出そうだ。
- また、ウイルスが胎盤細胞に作用するメカニズムを研究。妊娠初期においては、胎盤表面の細胞はあまり感染せず内側の細胞が感染しやすかった。対して妊娠中後期においては、胎盤表面が感染し、羊水に入ってゆくのが確認された。胎盤はウイルスを血流の中に入れて胎児の細胞に到達するのを助ける役割を果たしている。
- アフリカ由来のオリジナルウイルスと、いま中南米で流行中のウイルスでは、後者の方が増殖がはやく、最近になってジカが問題化した背景のひとつかもしれない。
ウイルスは胎盤細胞に感染し、時期により細胞は違えどあの手この手で胎児に到達すること、そして、抗生剤dulamycinでウイルスが細胞に感染することをブロックできること、これから臨床応用までまだ時間はかかるけれども、それはワクチン開発よりは早いだろうということです。
「すでに存在する薬」によってさまざまな先天性異常が防げるのならば、非常に有望な手段を手にできることになります。良いデータが出ることを願っています。
ソースはSTAT
https://www.statnews.com/2016/07/18/zika-fetus-infection-dengue-antibiotic/
Antibiotic may help limit Zika’s damage, new study suggests