世間知ラズノ孤独

享楽日記。

12月に読んだ本

2009-01-05 | 
R・チャンドラー 『長いお別れ』
          『ロング・グッドバイ』
島田荘司 『透明人間の納屋』
横山秀夫 『半落ち』

心の宝物その2 R・Chandler「THE LONG GOODBYE」
図書館で運よく春樹訳を見つけたので、1行ずつ読みくらべてみた。・・・ヒマ人だな!まあほんとにヒマだったんですけど。
こんなことやったのは初めてですが、なかなか興味深い作業でした。まったく正反対の文章がいくつもあったりしてね!
全体的に、端折られすぎて意味がわかりにくくなっている清水訳を春樹訳で補うという感じでしたが、全てを丁寧に訳してあるからといって、春樹訳がわかりやすく面白いかというと、そういうわけでもないんですよね。まあ単に好みの問題かもしれませんが。
同じことを全く違う表現で書いてあるところでは、清水訳の方がいいと思うことの方が多いのだ。なんというか、シビレる、という感じ。
2つをくらべて、これがなぜこうなるのか、思考の過程を考えてみるのも面白かったです。
清水訳があちこち端折られているのは、そういう時代だったということもあるかも、と春樹氏は書いていましたが、清水氏が映画字幕の仕事をしていたせいもあるんじゃないかと思う。いちばん重要なエッセンスを短く表現するのが上手いというか慣れているというか、職人技みたいな?いい意味で。(彼の『映画字幕は翻訳ではない』も面白いです)
というか、春樹訳「というか」多すぎじゃね?すごく気になったんですけど。
そんなわけで、清水氏の文体込みで『長いお別れ』を愛しているわけですが、その面白さを再認識したという点でも、『ロング・グッドバイ』を読んで良かったです。
唯一無二のラストの切なさ、マーロウの孤独が、私を惹きつけてやまないのです。
『透明人間』と『半落ち』は、どちらもあっと驚く意外な結末だった。そしてどちらも泣かされた・・・・