逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

オリンピック開催地の持ち回りは止める時期にきている

2008年04月25日 | スポーツ・文化

『前代未聞の余興、北京五輪聖火争奪戦』

何やらオリンピックの聖火で揉めていると、世界のマスコミが報道している。
昨今、チベット独立や中国国内の人権問題が此処にきて大きくとりあげられ、日本でも長野県の聖火リレーが色々取りざたされている。
スポーツの祭典のオリンピックと、開催国の人権問題や少数民族の独立問題が関係有るのか、無いのか。
1912年にインドを植民地にしていたイギリスが後押ししたチベット独立と、朝鮮を植民地にしていた日本が行った1932年の満州国建国と、両者にどれほどの違いがあるのか。
一方のイギリスが民族独立支援で『善』で、反対に日本が行ったのは植民地主義で『悪』だとの断定は胡散臭い。
時間的に数十年の差があるだけで、内容的には五十歩百歩である。
英国が行ったチベット独立が正しいなら、同じ理由で日本の満州国建国も間違いなく正しいことにしないと二重基準であり不公平であろう。
スポーツに政治を持ち込むべきでないとする意見と、そもそも中国にはオリンピックを開催する権利が無いとする意見。
二つの意見の間の妥協点は見つかるのか。?
今のままでは、この両者の間には、接点が見つからないだろう。
此処はいっぺん原点に帰って、考えて見るべきではないだろうか。?
何事も初めがある。
オリンピックの歴史は古代ギリシャの都市国家の持ち回り開催だった。
既に決っている次回開催地のロンドンのオリンピックは、今からでも良いから開催を中止して、オリンピックはギリシャのアテネで恒久開催とすべきではないだろうか。?

『日本の国体の問題点』

オリンピックの歴史や規模には到底及ばないが、似たものに日本の国体(国民体育大会)がある。
これが、各都道府県の持ち回り開催である。
そして国体はすでに、日本国中の都道府県をすべて一巡して、二順目に入っている。
日本の地方政治においては、国体の誘致はその時の知事の最大関心ごと。
なぜか国体の開催の為の箱物建設で大手ゼネコンがそのつど活躍して、スポーツの祭典とは縁遠い、国体誘致の為の色々な裏工作や、何やかや、余り聞きたくも無い噂が飛び交っている。
開催地になったらなったで、必ずおこるものとして有力選手の引き抜き騒動、これが必ずおこる。
もっと不思議なのは、絶対ありえない開催県の総合優勝の怪。

今のような各県持ち回り開催なら、必ず揉め事も種も、付いて回る仕組みになっている。
これは、今のままでは早晩行き詰るのは必至。
此処は考え方を根本的に改めて、各スポーツ大会ごとに開催地を固定して、今の高校野球の甲子園球場やラグビーの花園球戯場のように、選手の憧れの場所、殿堂とすべきでしょう。
高校野球が盛り上がる一因は、甲子園球場の場所、立地、歴史が大きく影響している事実は、関係者全員が認めているところである。

『先進国だけで持ち回り開催』

前回のアテネ開催の時に、ギリシャ恒久開催の案もあったらしいが、大国のエゴや商業主義の影響で立ち消えになった。
人権問題や少数民族問題をオリンピック開催と絡めれば、開催できる国はほとんど固定化してしまう。
アジアやアフリカで開催するさい、少数民族問題や人権問題、宗教問題などなど、問題を抱えていない国は一つも無いのが現状である。
例えばアフリカ。
最有力は南アフリカ共和国だが、人種問題少数民族問題以上に、貧富の格差と失業問題から来る極度の治安の悪さがある。
エジプトはイスラム同胞団のような原理主義の勃興と、ルクソール神殿での観光客無差別テロの恐怖は今でも記憶に焼きついている。
ナイジェリアは内戦状態で開催誘致どころの騒ぎではない。
アジア諸国も、問題を一つも抱えていない国は皆無と言ってよいだろう。
となれば開催国は日本を含む欧米先進国と相場が決って来る。
一部の地域や、一部の国に固定され、これ等の国々で持ち回り開催されているのが、これまでの現状である。

これではやはり、スポーツの精神の一つ、平等の原則にもとる。

中国のように、先進国といえない国でも開催するメリットは確かにあるだろう。
今回の中国で開催のメリットは確かにあった。
破壊と殺戮が主な任務の軍隊と、公共の治安維持が目的の警察は、まったく違うものです。
今回のチベットの騒動で、以前の天安門事件の時のような、軍隊や戦車の出動がまったく無かった事に、もっと私達は、注目しても良いのではないだろうか。?

ハンガリー動乱(ブダペストの春)やチェコスロバキア(プラハの春)動乱では戦車が出動して市民を押さえつけたが、その20年後では大きく情勢は変わっていた。
オリンピク北京開催は、数ヵ月後の話で、変更は間に合わないので、今回はみんなが成功に協力すべきではないだろうか。?
北風よりも、太陽の方がコートを脱がす為には有効な方法だと言うことは、みんなが知っている。

『ギリシャのアテネでの恒久開催』

次回のロンドンは、中止して、前回開催地のギリシャのアテネに変更すべきである。
アテネなら、前回開催の実績もあり、設備もそのまま使いまわせる。
アテネなら、ギリシャのオリンピアの数千年の伝統や権威があり、各競技における選手個人のモチベーションの向上が、確実に予想される。
特に「オリンピックの花」と言われているマラソンルートの固定化による競技の公平性や権威付けは、論をまたないであろう。

この先、4年間でイラク戦争やアフガニスタン戦争が終結している見込みが、まったく立たない現状での、戦争国家イギリスでのオリンピック開催は、オリンピック精神に泥を塗る行為である。
現在戦争当事国で、地球温暖でCO2の削減を最も強硬に主張しているイギリスが、次回の開催国である事を、疑問に感じる人が一人もいない不思議な社会。
欧米のダブルスタンダード、此処に極れり。
イギリスのロンドンでのオリンピック開催は、世界平和とも相容れないし、資源の無駄使いで、環境に悪影響を与える。
そもそも、根本的に環境保護とか、リサイクルとかの精神は、新しく造るのではなく、今ある品物、建物、設備を『如何にして長い間、役立てるか』『どれだけの回数を利用できるか』なのです。
オリンピックロンドン開催は、世界の趨勢に対する明らかな反対行動(逆行)で、賛成できる理由は一つも見つからない。


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私もそう思いますね (kaetzchen)
2008-04-25 11:45:09
国体にせよ,オリンピックにせよ,政争の道具にされてしまっている.どちらも,開催県・国が有利になる.私がこの手のスポーツ観戦に見切りをつけたのはそれが理由だ.それ以来,もう四半世紀,国体とかオリンピックの類には全く関心がない.

要するに原点のギリシアのアテネへ還れば良い.ヨーロッパでも貧しい国の中に入るギリシアへ戻せば,良い景気刺激策となるであろうし,せっかく作った施設がリサイクルされて良いことだらけではないか!

中国が嫌いな連中はモスクワオリンピックの時のように来なければよい.私はロシア語が第一外国語だったので,あのモスクワオリンピックの時の日本政府の態度には激怒した.そのために涙を呑んだエリート選手がどれだけいたのだろうと思うと,政治は人を幸せにしないのだろうか……と考えたりもする.

# ようやく午後に点滴が抜けるようです.今,おかゆを少し食べたところ.肺炎でダイエット(笑)
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コメント有難う御座います (ブログ主)
2008-04-25 18:24:11
ギリシャは観光が最大の売り物ですが、欧州では貧しい国で、オリンピック恒久開催は大きな景気刺激策になるでしょう。
多くの観光客がギリシャに集まれば、当然周辺国もいくらかは潤う。周辺国は旧ユーゴ諸国やキプロス、トルコなど何れも武力紛争の経験があり、経済的に遅れてている。
経済的に遅れているから、武力紛争の種になると言う悪循環が有る。
オリンピック開催でみんなが経済的に潤って、紛争を武力ではなく話し合いで解決しようとする契機になれば、これ以上良い事は無い。
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バルカン半島は貧しい (kaetzchen)
2008-04-26 14:59:46
ブログ主さん,そうなんですよ.東欧の国々がどうして社会主義化したか,あまりにも貧しかったからです.ギリシアやトルコは多少ましだったから,資本主義を保ち,トルコなどは NATO に入ってたりもする.

そしてソ連が崩壊した後,コメコンも崩壊し,さらにユーゴも崩壊していった.残ったのは民族間の内戦と貧困だけだった.トルコにしても内戦が絶えないのは少数民族の割合が多いせいで,早い話が独立紛争なのだ.しかし,国家として独立した所でメシが食える訳がないから,最終的にはチベットのように大国の尻尾にぶら下がるしか経済的に独立することは不可能だ.

結局のところはメシを食う,経済的に独立する,という所に落ち着くんでしょうかねぇ.熱が下がらないのでこれ以上考え付かないんだけど(泣)
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Unknown (Runner)
2008-04-27 23:55:55
五輪の年が米国大統領選挙の年というのも不安定要素です。
しかし、アテネ恒久開催というのは、いい牽制になりますね。
今回、列強政府がボイコットに慎重なのは、もしかすると、IOCから「もう一回、ボイコットしたらアテネにするぞ」と通達されているのかも知れません。
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コメント有難う御座います (ブログ主)
2008-04-28 12:39:54
ロス五輪から放送権料やコマーシャル権で大きく儲かる構造に変化した。
それで地元開催権が政治の道具(商売)になったらしい。
アテネ以外のどの都市に決っても、騒動の種は尽きない。

4年の後のロンドンでは、中東の戦争が終結していなかったら、聖火の妨害どころか、ミュンヘン五輪のパレスチナゲリラ以上の大騒動になりかねない。
中国以上に、イギリスは絶対駄目ですね。
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