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「トランプ砲」が「トランプ節」になっただけの前代未聞の記者会見

2017-01-14 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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「トランプ砲」が「トランプ節」になっただけの前代未聞の記者会見

 「トランプ砲に短絡的に反応する必要はない」、「トランプ次期大統領の初の記者会見に注目し、語る言葉を吟味してアメリカの何がどうなるかを読み解こう」と書いたところ、初の記者会見で語られたのは「トランプ砲」と大差のない「トランプ節」であった。世界最強国家の何がどうなるかはいまだ予測不能である。

 トランプ次期大統領には当選直後から大統領職とビジネスとの「利益相反」問題が付きまとい、そのため12月に記者会見を開いて説明することになっていた。ところが記者会見は一方的に延期され大統領就任式直前の年明け11日に行われることになった。

 するとその前日にCNNが「ロシアの諜報員がトランプ氏の不名誉な情報を入手している」と報道し、一方でインターネットサイトのバズフィードがトランプ氏の側近とロシア側諜報員が接触していたことやセックス・スキャンダルに関する文書を公開した。そのため初の記者会見は「偽のニュースが流されている」というトランプ氏のメディア批判から始まった。

 トランプ氏は大統領選挙の最中にロシアがサイバー攻撃を行っていたことは認めたが、米情報機関から漏れたと思われるCNNやバズフィードの報道を厳しく非難し、CNNの記者の質問に全く答えようとはせず、記者との間で大統領会見では見たこともない激しい応酬を繰り広げた。

 その一方でトランプ氏は「良いニュースもある」と米国の自動車メーカーがメキシコでの工場建設を取りやめたことを取り上げ、「私は最も雇用を生み出す大統領になる」と胸を張り、製薬会社などにも国内での生産を要求、海外に移転する米国企業の製品には高い関税をかける方針を強調した。

 米国企業が賃金の安い海外で事業を行うことをやめさせ賃金の高い国内で生産させようというのである。1980年代の「貿易戦争」の時代にアメリカは、日本などが不当なダンピングで安い製品を米国に輸出するため米国企業が倒産し「日本は失業を輸出している」と非難したが、今度は米国企業に「外に出るな」と言うのだ。

 そして貿易では「中国、日本、メキシコとの間でアメリカは数千億ドルを失っている。貿易協定は大惨事だ」と問題のある貿易相手国を名指したうえで「貿易協定の見直し」を宣言した。「貿易協定の見直し」は米国労働者が米国内で製造する割高な製品を買わせることが目的という理屈になる。

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別 Web より

 これまでアメリカは日本でアメリカ製品が売れない理由を、日本には目に見えない障壁があるからだとして、障壁を撤廃する目的で「構造協議」や「年次改革要望書」や「TPPへの参加」を促してきた。

 日本の商慣習を変えさせ、アメリカの得意分野である金融や農業で売込みを図ろうとしてきた。それが今後は車や薬などアメリカ製品の売込みを目的に貿易協定を見直そうというのである。

 トランプ氏は「私は最も雇用を生み出す大統領になる」と胸を張ったが、それではアメリカ経済がオバマ政権で悪化して失業が増えたかと言えばそうではない。リーマン・ショックからアメリカ経済を立ち直らせたのはオバマ政権で、失業率は改善、経済も好調を持続している。従ってトランプ現象を米国民の経済に対する不満と見るのは誤りである。

 冷戦後に「唯一の超大国」となったアメリカが、21世紀を「情報の世紀」と位置づけ製造業に力を入れることをやめ情報と金融の世界に優秀な人材を投入したことがIT革命を生み、それによって世界をアメリカの価値観で覆いつくそうとした。それが世界の反発を生み、アメリカ本土を襲う9・11テロとなって現れたのである。

 アメリカは「テロとの戦い」を宣言するが泥沼にはまり込み、IT革命は大恐慌の再来となるリーマン・ショックを招いて経済は大打撃を受ける。

 オバマ政権はその困難な状況からの脱却をある程度は成功させたのだが、IT革命の波から落ちこぼれた労働者と移民問題とが結びつき、そこに焦点を当てたトランプ氏の扇動が「反グローバリズム」の波に乗った。

 政治や経済の現状と国民の意識には常にタイムラグが存在する。

 例えば国民の裕福度を示すと言われる「国民一人当たりのGDP」の推移をみると、レーガン政権時代の1985年までアメリカは世界第一位である。それが日本に竹下政権が誕生した87年に日本に抜かれて世界8位に転落した。

 その後日本はバブル崩壊によって「失われた10年」と言われたが、しかし日本は国民の裕福度で終始アメリカを上回り、アメリカに再び抜かれるのは小泉政権が誕生した2001年のことである。

 「失われた10年」と言われながら日本は世界で3位か4位の位置を保持していた。アメリカ国民の裕福度が10位以下に転落するのは2007年、2008年、2011年の3回で、2008年にはリーマン・ショックが起きている。しかし2015年には世界5位に復活するなどオバマ政権の経済政策は復活に貢献している。

 一方で近年になって落ち込みが激しいのは日本である。

 小泉政権下の2003年に11位に転落し、その後は安倍政権が誕生した2007年に20位、民主党政権の2009年から12年までは10位台を回復したが、第二次安倍政権の2013年からは20位や22位と落ち込んでいる。

 安倍総理はアベノミクスを自画自賛するため、民主党政権時代がいかにも経済の暗い時代であったかのように言うが、それは誰かが「暗い」と言うのを国民が信じ込んだだけの話で、経済の実態はそれとは別だとフーテンは考える。トランプ現象もまた然りである。

 もちろん格差の問題もあるので、「国民一人当たりのGDP」だけで国民の感情を推し量ることはできない。しかし国民生活の全体的なレベル、先進国であるかないかを見るのに役立つ指標であることは間違いない。リーマン・ショックから立ち直ったアメリカは2015年に世界5位にまで復活したが、

 それがトランプ次期大統領が仕掛ける貿易戦争によってどう推移するか、それをこれから見ていく必要がある。
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