直観と直感。
同じ発音の言葉だが意味は異なる。直感とは「inspiration」で、降って沸いてくるがごとく閃くもの。誰にでも起こり得るが極めて偶発的なものだ。
一方、直観とは「intuition」で、閃きのように見えても実は冷静な状況分析や論理的思考の上に成り立つものだ。
この「直観」を働かせるには、一定のレベル以上の経験や訓練、知識が必要になる。この直観という曖昧なものを科学的に解明しようと2007年から理研脳科学総合研究センターの認知機能表現研究チームが国内に発足した。
この直観のメカニズムを探求するのに、研究対象になったのが将棋のプロ棋士たちと将棋のアマチュアたちの脳だ。脳波に基づく研究チーム、心理学的実験による研究チーム、f MRI(機能的核磁気共鳴画像)を駆使した研究チームと3つのチームから脳の活動場所が明らかになった。
現在、日本には160人くらいの現役プロ棋士がいる。そのほとんどは幼少期から将棋に親しみ、小中学生の頃から本格的に腕を磨いて20前後でプロデビューを果たす。
10代のほぼ10年間をどっぷり将棋漬けで過ごすわけだが、「この集中的な訓練期間があるからこそ」脳内の特別な場所の神経回路が開発され直観的思考回路が育っているらしい。
将棋のトップ棋士とアマチュア棋士の脳活動の間には、決定的な違いがあったという。彼らは先天的に特別な脳を持っているわけではない。長年の鍛錬で、大脳皮質と大脳基底核が鍛えられ、直観を導く神経回路を結実したのである。
詳しく知りたい方は「直観をつかさどる脳の神秘」と「将棋プロ棋士の脳からちょっの謎を探る」というタイトルで研究最前線が特集記事としてネット上に公開されているからみていただきたい。
もともと左脳には、言語中枢があり、言語的、論理的、分析的な思考、認識、行動を引き受けている。
右脳には、音楽中枢があって、直観的、イメージ的、総合的、幾何学的な思考、認識、行動を引き受けている。特に、右脳は、視覚空間感覚、パターン認識、鳥瞰的展望のうちでも感情表現や強調表現などを受け持つという。
現代人は左脳が極端に発達して、右脳をいかに働かせるか、活用するかが鍵らしい。芸術的なことや絵画的なこと、幾何学的なこと、感情表現的なことなどをつかさどる行動を生活や仕事の中に見つけたい。