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中国の「民間企業」は、英語でいえば国家の「選択されたツール」(chosen instruments)と言える。

2018年11月05日 12時33分06秒 | 日記

以下は月刊誌HANADA今月号に「中国は間違いなく政権崩壊する」と題して掲載された、E・ルトワック戦略国際問題研究所上級顧問

取材・構成奥山真司、の続きである。

「誘惑」と「贈賄」

もう一つの盗み方は、中国の国家安全部との合弁企業を通じたものだ。これをやられると、海外の民間企業は絶対に勝てない。

合弁企業は、まず「誘惑」《seduction》する。

たとえば中国本土にいる家族の先祖の墓を綺麗にして、その写真をサンフランシスコで働く中国系エンジニアの若者に送りつけたりする。

大半の中国人の若者は、先祖の墓を綺麗にしないので非常に有りがたがる。

さらに「贈賄」(bribery)だ。

例えば、いま北京では不動産バブルの状態なので、2LDKのアパートが1億円以上する。

戸建ての一軒家などは5億円以上だ。

このような家に合弁会社が従業員を無料で住まわせているのだが、中国系エンジニアたちの住むサンフランシスコなどでは住宅だけでなく、学校の学費なども高い。

それが無料となれば、本人たちの生活水準は劇的に上がる。

これができるのは、中国の企業が本当の意味で「民間の企業」ではないからだ。

中国の「民間企業」は、英語でいえば国家の「選択されたツール」(chosen instruments)と言える。

その典型例が、過去の英石油メジャーBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)や東インド会社だ。

民間企業の形はとっているが、国家からライバル企業の情報を提供してもらったり、資金を援助してもらうことで、その存続が保証されていた。

現代の中国で言えば、百度、フアーウェイ、テンセントもこれと同じだ。

アメリカではいま、こうした中国側の事情に気づいたテクノロジーロビーたちが、次々と米国政府に対して注意するよう要請し始めている。

その典型が、米国アイダホ州に本社を構える半導体製造の大手マイクロン社のケースである。

中国の半導体製造大手JHlCC(福建省晋華集成電路)は、台湾のマイクロン支社のすぐ側にシャドー会社を設立、マイクロン社の社員をリクルートして、「マイクロン社のパソコンの情報をそのまま持って来れば三倍の給料を支払う」と言って、機密情報を盗もうとしていた。

それに気が付いたマイクロン社側が台湾警察に通報、JHlCCにガサ入れが行われた。

その際、社員たちがビルから持ち逃げしたのは自社の技術ではなく、マイクロン社の情報だった。

翌日、中国福建省の裁判所が独占禁止法でマイクロン社を訴えた。 

アメリカのテクノロジーロビーは、その背後にいる「北京政府」に気付き、いま戦い始めている。

この稿続く。


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