今月、東京郊外で開催された家電国際見本市で話題をさらったのは、最新鋭のデジタルカメラや薄型テレビではなく、ユーロの急落がこの国の製造業に与えるダメージの大きさだった。
パナソニックの大坪文雄社長は会場で「対欧州売上高は今年、どの分野も下がっており、状況は極めて深刻」と語った。
この半年間にユーロは対円で18%も下落し、ユーロ高のピークだった2008年の1ユーロ=169円から37%も下げ、106円台を割っている。
円高との戦いでは実績がある日本企業だが、これまではドルが相手だった。ソニーの場合、1ユーロ当たり1円の円高が進むごとに、60億円の営業利益が吹っ飛ぶ。
対ドルではこうした問題は生じないという。ソニー関係者によると、為替ヘッジと、慎重に練り上げた調達戦略により円高・ドル安は「実質的に何の悪影響も及ぼさない」。製造業がドルよりユーロの変動に弱い第一の理由は対応期間の問題だ。
ドル安は1985年から一貫して進んできたため、日本企業には対策を講じる十分な時間があった。米国に多数の工場を設立し、賃金も部品代もドルで支払ってきた。
対照的にユーロは、08年の信用危機に至る時期まで対円で徐々に上げていたため、このところの急落は日本企業に不意打ちを食らわせた。日本の大半の製造業は11年度のユーロ相場を110~116円と見込んでおり、現在の水準が続けば業績予想の下方修正を迫られる社も出てくる。
もう一つの理由は、ユーロ建て取引が限定的な点だ。原材料の調達は米国以外でもたいていドルで決済されるため、日本企業は為替変動の影響を免れることができたが、ユーロの場合、圏外ではこうした機会がほとんどない。
トヨタの担当者は「一部納入業者とユーロ建て決済に向けた交渉をしているが(欧州の信用危機で)難しい」と言う。業界関係者は、東日本大震災の影響から完全には脱却していない日本の製造業に対し、欧州企業がユーロ安で競争力を強めることも懸念している。
(26日付)=英フィナンシャルータイムズ特約
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米社の買収、審査を延長 ■中国商務省
ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)などを運営する米外食大手ヤム・ブランズによる中国鍋チェーン大手の小肥羊集団の買収を巡り、独占禁止法に基づく2次審査期間を60日延長し、12月24日までに審査結集を出す。
小肥羊が26日発表した。中国の独禁法によると、申請受理から30日以内に1次審査を行い、2次審査はさらに90日以内に結論を出すが、必要に応じて60日間延艮できる。
外資による中国企業買収では2009年に米コカ・コーラによる匯源果汁集団の買収が審査で認められず、今回の買収の行方が注目されている。(大連支局)