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今回こそは日本を長期経済停滞から脱出させることができるリーダーを選べるのか。 

2021年09月26日 11時49分17秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に、経済成長目標未達に終止符を、自民総裁選の歴史的意義を問う、と題して掲載された編集委員田村秀男の日曜日連載コラムからである。
本論文も彼が財務省の受け売りの知識しか持ち合わせていない、学者や、記者達等の対極にいる数少ない本物の経済評論家である事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
見出し以外の文中強調は私。
29日投開票の自民党総裁選の投票者が留意すべきは、これまでの政権がほぼ共通した脱デフレと経済成長の目標値を掲げながら、ことごとく的のはるか手前にしか到達できない屈辱の歴史だったことだ。
今回こそは日本を長期経済停滞から脱出させることができるリーダーを選べるのか。 
平成8年発足の橋本龍太郎政権以降、日本は物価が長期的に下がり続ける慢性デフレに陥ったまま現在に至る。 
最初に「脱デフレ」を掲げたのは、意外にも、平成21年9月発足の民主党政権である。22年6月には「新成長戦略」を打ち出した。
政府と日本銀行が協力して集中的な取り組みを進め、早期にデフレを克服し、名目国内総生産(GDP)成長率3%超、実質GDP成長率2%超を目指すとした。 
24年12月発足の第2次安倍晋三政権は日銀の異次元金融緩和、機動的財政出動と成長戦略を三本の矢とするアベノミクスを打ち出し、以後10年間の平均で名目成長率3%程度、実質成長率2%程度を実現すると意気込んだ。 
令和2年9月発足の菅義偉政権はアベノミクスの継承をうたい、3年6月閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2021」で「デフレ脱却・経済再生に取り組み、実質成長率2%程度、名目成長率3%程度を上回る成長により、600兆円経済の早期実現を目指す」とした。 
グラフは平成9年度から令和2年度までを大きく3つの政権期間に分けて算出した、名目および実質GDPと、消費税増税による影響を除外した消費者物価指数の年平均上昇率である。 
民主党政権以降、政府は実質成長率2%、名目成長率3%の実現を目指し、第2次安倍政権では平成25年1月に政府・日銀の共同声期で、日銀にインフレ目標2%を約束させた。
しかし結果はすべて目標のはるか手前である。政治が軽すぎるのか、それとも実行プログラムがお粗末なせいなのか。
民主党政権は22年6月、菅直人首相(当時)の下、前述した「新成長戦略」を閣議決定した。
ところが、菅氏も次の野田佳彦首相(同)も消費税増税を国際公約し、24年に自民、公明両党を巻き込んだ消費税率8%、10%への2段階引き上げの3党合意に踏み切った。 財務省内部には「一挙に3%アップとは欧州でも前例のないほどの大型増税で大丈夫か」とする慎重論があった。
すると同省幹部は「何も知らない民主党政権だからこそ千載一遇のチャンスだ。この機を逃すな」と怒鳴りつけ、反対論を封じ込めたと聞く。 
官僚の言いなりになった民主党政権の逆を行ったのが第2次安倍政権である。アべノミクスは25年度、目覚ましい成果を挙げた。
名目成長率は24年度のマイナス0.1%からプラス2.7%に、実質成長率は0.6%から2.7%に跳ね上がった。
が、25年秋、26年4月からの消費税率8%への引き上げ実施を決めたのが運の尽きだった。 
財務省OBの黒田東彦日銀総裁は、消費税率を予定通り8%に上げないと、国債が暴落するテールリスクがあり、その場合は日銀として打つ手がなくなると、首相に警告した。
テールリスクとは巨大隕石の衝突のような、天文学的ともいえる超低確率のリスクのことだ。
デフレ経済では消費税大型増税による内需圧殺リスクの確率が圧倒的に高いことを無視した詭弁(きべん)である。  
安倍政権は26年度から一挙に増税・緊縮型へと180度転換した。
緊縮財政とは税によって吸い上げた国民所得を国債償還に回して、実物需要を消失させる。
受益者はすでに稼いだ国債金利収入に加え、国債元本相当の資金を回収する金融機関だけだ。
一般会計の緊縮分は26年度が8.4兆円、27年度が3兆円に上る。
景気はもっぱら、外需頼みで、デフレ圧力は去らず、実質賃金の下落が続く。 
安倍政権はこうして財政均衡化に大きく制約されるようになった。
令和元年10月からの消費税率10%(食料品など一部は8%に据え置き)に追い込まれ、物価安定目標2%を空文化させた。  
経済成長率目標の達成は10月4日に予定される臨時国会で決まる新政権の政策次第となる。
目標を口では唱えるものの、成長の鍵を握る財政出動を財務省主導の財政均衡路線の上で走らせるようでは、民主党政権時代以来の失敗を繰り返す恐れが十分ある。  
財政健全化優先の重圧をはね返すのは何よりも、増長する中国の脅威を前に日本だけが衰亡してしまうという、政治家が本来持つべき国家危機意識ではないか。


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