中国の接近を阻む厚い壁
中国が経済的に影響力を増している中南米などの地城でも、アメリカにはまだ切り札がある。昨年、中国はアメリカを抜いて、ブラジルの貿易相手国トップに躍り出た。ベネズエラ、チリ、ペルー、コスタリカ、アルゼンチンの貿易相手国としては現在2位だ。
とはいえ過去10年間で、アジア全体の対中南米貿易(もっぱら中国が原動力になっている)が96%急増したのに対し、アメリカは総額で118%増とそれを上回る伸びを示した。上海の投資コンサルティング会社サイノラテン・キャピタルによれば、中国の対中南米投資は08年末の累積で120億ドル止まりだった。
「中国経済評論」誌によれば、ミシガン州の対中南米投資より少ない。
中国と中南米が接近するには、文化や地理が壁になる。「アメリカと中南米は共存する運命にあり、中国はとても太刀打ちできない」と、米ブルッキングズ研究所の中南米専門家であるケビンーカサスザモーラは言う。
中南米におけるアメリカのソフトパワーの魅力に比べれば、中国は影が薄い。アメリカのソフトパワーは大衆文化と言語と理念を通じて共感を呼んでいる。中南米のほとんどの国は民主主義国家として機能しているか、民主主義国家を目指している。
中国は語学学校の孔子学院(世界中に約300校、うち約20校が中南米にある)を通して中国語や中国文化への関心を高めようとしているが、中南米で中国語が話せる人も、中国でスペイン語が話せる人も、まだわずかしかいない。
アフリカでも、さすがオバマゆかりの地とあって(レストランから洗車場まで、オバマにちなんだ名前だらけだ)、ソフトパワーは大いに効果を挙げている。アメリカ文化の影響は、映画から音楽、ファッションまでアフリカ全体に浸透している。アフリカの学生は今もアメリカ留学を夢見ており、英語はまさに必修だ。
援助でイメージアップ
いざというときに頼りになるのもアメリカだ。今年7月、ウガンダの首都カンパラで連続爆破テロが発生し、85人を超える死者が出た。ヨウェリ・ムセベニ大統領は事件前、自国の民主化ペースをめぐって米政府と辛辣な応酬を交わす一方、中国との関係を強化していた。ところが事件直後、ムセベニは中国政府ではなく米政府に助けを求め、捜査員の派遣など2400万ドル相当の支援を受けている。
こうした努力は、このところ政治的失策続きの中国(アフリカにおける粗雑な建設作業、南シナ海での領有権争いなど)とは対照的で、アメリカのイメージアップにつながる。アメリカには文化、軍事、科学、経済の分野で多くの切り札を活用するチャンスがあることも際立たせる。
冷戦終結から20年間、アメリカは世界唯一の超大国だったが、切り札の多くを生かし切れなかったか、使い方を誤った。中国の台頭は、アメリカに世界への関与を迫るという意味では、アメリカにも他の国々にもプラスになる。