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忍び寄る人民元崩落の危機…習氏の人民元圈拡大という野望のために、中国経済はかつてない窮地にはまった

2023年09月05日 17時25分51秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に、忍び寄る人民元崩落の危機、と題して掲載された、田村秀男の定期連載コラムからである。
経済については、岸田首相同様、所謂学者や、メディアに所属している大半の経済部の記者達が財務省の言いなりであることは歴然たる事実。
財務省の言いなりで、財務省からの受け売りの知識で生計を立てている人間たちと違い、
田村秀男氏と高橋洋一氏は、自らが研鑽した識見で正鵠を射た論説を発し続けている日本国にとって得難い人間、即ち、最澄が定義した「国宝」である。
隠れた真実、隠された真実に光を当てて、これを解明し教えてくれる。
即ち、一隅を照らし続ける仕事を継続している「国宝」である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
見出し以外の文中強調は私。

中国の習近平政権は貿易や金融取引の人民元決済化を加速させている。
が、古人曰く、「策士、策に溺れる」。
人民元の下落が止まらなくなったのだ。    
■ 口 ■ 
習政権は5年前の米国との貿易戦争勃発以降、人民元決済の増加に努めてきた。
昨年2月下旬、ウクライナ侵略のロシアに対して先進7力国(G7)が行った金融制裁を見て、人民元決済拡大を加速させた。
中国の通貨別決済シェアを支払い面でみると、18年6月では人民元24%、ドル62%、22年2月はそれぞれ41%、52%だったのが今年3月に逆転し、7月には51%、41%と差を広げた。
受け取り面でも同様の趨勢を示し、18年6月には人民元22%、ドル71%だったのが、今年5月に逆転し、7月にはそれぞれ49%、47%となった。
ロシアとの間でドルを元に置き換えたばかりではない。
西側の対露制裁への同調を拒否するグローバルサウスを取り込む好機とした。 
習氏は昨年12月にサウジアラビアを訪問し、リヤドでの中国・湾岸協力会議(GCC)首脳会議に出席し、石油・天然ガス貿易の人民元建て決済を求め、上海石油天然ガス取引所を「最大限に活用する」と表明した。
今年1月には、サウジ財務省がドル以外の通貨での貿易決済の話し合いに応じると言明した。
2月にはイラク中央銀行が対中貿易で人民元決済を認めると表明。
3月には習政権がサウジアラビアとイランの関係正常化を仲立ちした。
続いて、サウジ政府が中国、ロシア、インドや中央アジア諸国の協議機関である上海協力機構への加盟を決定。
中国とブラジルが人民元およびブラジル通貨レアルの貿易、金融取引開始で合意した。
中国の国有石油大手、中国海洋石油(CNOOC)も同月、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入した。
4月にはアルゼンチンの経済相が、中国からの輸入商品のドル建て決済をやめ、人民元建てで払うと発表した。 
8月24日、南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれたBRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)首脳会議では、サウジアラビア、UAE、イラン、エジプト、エチオピア、アルゼンチンの6カ国のBRICS新規加盟が決まった。
習氏の人民元決済圈拡大の野心と二重写しである。 
以上からすれば、習氏や側近の王毅外相の得意満面とも想像するかもしれないが、複雑な国際金融には必ず落とし穴がある。 
中国の金融、資本市場は極めて不透明で規制だらけ、すなわちリスクいっぱいである。
外国の政府、企業や投資家は巨額の人民元を入手したところで、それを資産として運用する気にはなれないだろう。
プーチン大統領や取り巻きのロシアのエネルギー企業大手だってそうである。
ロシアなどは人民元の輸出代金を香港の銀行の口座に振り込ませるが、ただちにドルに交換している。
その証拠に香港での人民元預金は2022年2月前後に急増したあとは激減したまま、ほとんど増えていない。
国際金融市場の香港では人民元とドルなどの交換が自由で、しかも香港証券取引所経由で上海、深川の証券市場にアクセスできるのが強みだ。
しかし、中国株式や債券の相場は下落続きなので損失の危険いっぱいだから、見向きもされない。    
■ 口 ■ 
本グラフは、ウクライナ開戦以降の中国人民銀行の外貨資産と人民元相場の推移である。
人民元相場の下落は昨年11月にいったん収まったが、今年に入って再び下がり続け、不動産デベロッパー経営危機深刻化とともに信託商品の焦げ付きが表面化した8月にはさらに落ち込んだ。
香港市場主導で人民元売りの嵐になっているにもかかわらず、人民元が暴落を免れている理由は、人民銀行による懸命の人民元買い支えにある。
人民銀行は管理変動相場制をとっている。
人民元の対ドルレートを前日の終値を基準とし、その上下2%以内の幅に変動を抑える。
従って人民銀行は外貨資産を取り崩す。
人民元の大量売却が起きるたびに外貨資産は大きく減るのだ。 
問題はそれにとどまらない。
人民銀行による人民元資金発行は外貨資産を裏付けにしている。
外貨が減ってゆくと、人民元増発が困難になる。
不動産バブル崩壊不況が深刻化しているにもかかわらず、人民銀行の量的緩和は小規模にとどめるしかない。
利下げも人民元大量売りを誘うので、最近でも0.1%とわずかな幅だ。 
習氏の人民元圈拡大という野望のために、中国経済はかつてない窮地にはまった。    


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