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日本には今こそ核戦略が必要だ…現実を見据えるときだ…核の恫喝に屈しないよう…米国の庇護に甘えず 

2022年06月16日 08時34分20秒 | 全般

以下は、昨日の産経新聞「正論」に、日本には今こそ核戦略が必要だ、と題して掲載された兼原信勝、元内閣官房副長官補・同志社大特別客員教授の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読
6月5日、北朝鮮が複数地点から弾道ミサイルを発射した。
少なくとも1発はミサイル防衛で防御できない変則軌道のミサイルだった。
国民が極貧の暮らしにあえぐ北朝鮮だが金正恩総書記は核・ミサイル能力の誇示に余念がない。 
北朝鮮の核・ミサイル開発は、国連安保理決議に違反し、核拡散防止条約(NPT)に違反する。
安保理に北朝鮮非難決議が提出されたが、中露は拒否権を発動した。 
現実を見据えるときだ 
米英仏露中の5ヵ国(P5)は、国連安保理に常任議席を与えられてきた。
しかし、実のところP5は、自由主義圈の米英仏と全体主義国家である中露の寄せ集めに過ぎなかった。
プーチン大統領のウクライナ侵略でロシアの本性が現れた。
中国も棍棒(こんぼう)外交による拡張主義に転じている。
安保理は冷戦時代のように再びぽっくりと割れてしまった。 
最早、戦後秩序は崩壊しつつある。
中露の庇護の下で、北朝鮮の核・ミサイル開発が止まることはない。
日本は、その現実を見据えるべきである。 
北朝鮮は、今も7回目の核実験の準備を着々と進めているであろう。
北朝鮮に対して最大の影響力を持つ中国には、北朝鮮を本気で止めようとする意思が見えない。
中国にとって北朝鮮の核は恐れるに足りない。
むしろ中国は、強大な中国の圧力を嫌う北朝鮮が日米韓側にすり寄ることを恐れている。
実際、クリントン政権時代には、日米韓などとの協力で寧辺の原発共同開発まで進みかけた。 
朝鮮半島は、中国にとって戦略的要衝である。
アヘン戦争以来、中国の敵は万里の長城を越えてくる騎馬民族ではなく、潮海湾から侵入して北京を蹂躙する欧米日という海洋勢力だった。
清朝の重臣、李鴻章が見抜いたように、潮海湾を守るには朝鮮半島、遼東半島、山東半島こそが戦略的要衝となった。
またそもそも朝鮮は、統一新羅以来、一貫して朝貢国家であった。
朝鮮戦争によってやっとその北半分を取り返した。
中国は「北朝鮮は、何があっても西側に渡さない」と思っているであろう。
核実験やミサイル実験は、北朝鮮が西側と距離を広げる格好の材料なのである。 
核の恫喝に屈しないよう 
その中国は自分自身の核兵器増咥に余念がない。
後10年もすれば核弾頭が800発に及ぶという予測もある。
新START(戦略兵莽削減条約)で米露の戦略核弾頭配備は1550発に限られている。
中国との間には、米露聞のような相互査察、信頼醸成、軍備管理、軍縮の枠組みはない。 
習近平主席の中国は台湾「解放」を国是、党是としている。
日本がウクライナ戦争から汲むべき教訓はロシアが侵略を行ったのみならず、小規模核使用の恫喝をしたことである。
同様に台湾有事に際して中国は、核の恫喝で日米のデカップリング(切り離し)を狙うかもしれない。
日本が戦線離脱すれば、米国は容易に破れるからである。
米国は、東京への核攻撃や、米軍基地への核攻撃には核で報復すると明言するであろう。
しかし仮に核兵器で東京が消滅すれば、米国は中国と停戦協議に入るであろう。
東京の消えた日本に同盟国としての価値はない。 
あるいは、中国は「離島の自衛隊基地を核攻撃する」と恫喝してくるかもしれない。
小型核の破壊力は広島型原爆の威力を下回り得る。
米軍は、核を用いなくても他のあらゆる手段で勝利を目指し得るというであろう。
軍事的には合理的である。しかし、国民はパニックになるであろう。
総理はそこで国民に「核の恫喝に屈しない」と言えるのか。 
米国の庇護に甘えず 
今こそ日本は核戦略を持たねばならない。
最早、世界で最も危険な核の谷間にある日本である。
NPT下で自前の核は持てない。ならば米国の核抑止力を万全にするしかない。
日本が100%以上の安全を保証するように求めなければ、米国は今以上の努力はしない。
日本は米国が冷戦後廃棄した潜水艦配備の中距離核ミサイルの復活を求めるべきである。
中国は日本を狙う中短距離ミサイルを1600発保有していると言われる。
米国は、中距離核ミサイルを持っていない。この非対称は克服されるべきである。
核トマホークは米空母機動部隊用の兵器であるが、類似のミサイルを復活して日本防衛にも用いると米国に宣言させるべきである。
日本は、非核三原則を修正し、米核搭載原潜の寄港を正面から認めるべきである。 
さらに進んで、中距離海上核を海上自衛隊の潜水艦に搭載して、米国の核戦略の一角を担わせることも検討するべきである。
核シェフリングは真剣な国民的議論の俎上(そじょう)に載せるべきである。
また、日本も原潜の導入に真剣に取り組まなくてはならない。
豪州海軍は米国製の原潜の導入を決めた。日本も見習うべきである。
これ以上、米国の庇護に甘えていてはいけない。
前線国家は日本の方である。
核問題には日本の生存がかかっているのである。

 

 



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