文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本ではほとんど報じられていないが、米捜査当局が千人計画絡みで取り締まりを強化し始めていることを示す重大な動きである。

2020年07月27日 11時14分06秒 | 全般

以下は、習近平の頭脳狩り「千人計画」、と題して月刊誌Hanadaに掲載された、産経新聞論説副委員長佐々木類の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
朝日新聞等の新聞や、NHK等のテレビメディアの報道が如何に中国の工作下にあるか。日本国民は愕然とするはずである。
だが、それは世界中のメディアにとっても同様だろう。
ハーバード大教授が逮捕
「千人計画」(Thousand Talents Plan)という謎めいた響きを持つ言葉が、日米両国で再び注目を集めている。 
きっかけは、中国・武漢にある大学と関わりのあった米ハーバード大学教授という大物科学者の逮捕劇だ。
今年1月、中国と内通していたことが米国内法に違反したとして米司法省に逮捕、起訴された。
武漢と言えば、新型コロナウイルスの発生源だ。この教授とコロナ禍にはどんな関係があるのか、ないのか。 
この話を詳述する前に、千人計画とは何なのか、まずは簡単に説明しておきたい。 
千人計画とは、ノーベル賞受賞者を含む世界トップレベルの研究者を一千人規模で集め、破格の待遇で中国に招聘する国家プロジェクトだ。
言うなれば、最先端技術を中心とした知的財産を米国など諸外国から手っ取り早く手に入れる計画だ。
もともと、1990年代に先端技術の獲得を急ぐため、海外に留学していた中国人研究者を対象に、中国政府が国策として彼らの帰国を積極的に働きかけたのが始まりだ。 
彼らは海を漂って母国に戻ることから「海亀」と呼ばれる。
中国語で海外から戻るという意味の海帰と海亀の発音(ha・igu・i)が似ていることに由来する。 
北京五輪が開催された2008年以降は、「千人計画」の一環として米
国を中心に中国人以外の外国人研究者の招聘にも乗り出した。
これら外国人研究者を中心とした「外専千人計画」など、いまでは200近い招聘プログラムがあるとされ、「万人計画」などとも呼ばれている。 
しかし、中国共産党肝煎りのこの計画が躓(つまづ)き始める。
2018年ごろだ。米捜査当局による中国人研究者の逮捕や米大学、研究機関による解雇が相次いだのだ。 
これを機に「千人計画」という四文字が表立って語られることがなくなり、中国の公的文書から一斉に消えた。
米国の圧力に焦った習近平政権が、党や政府の通達文書から「千人計画」を削除するよう指示したためとみられる。 
だが、計画自体は地下に潜っただけであり、参加する研究者があとを絶だない実態をみると、むしろ、加速しているとみてよかろう。
米国では、安全保障を脅かす危険な計画として、連邦議会や司法省が警戒を強めているのがその証左だ。
計百万ドルの見返りに 
こうしたなか、千人計画にかかわる日米両国の関係者らに衝撃が走ったのが、先述したハーバード大教匹が逮捕された1件だ。
米司法省は今年1月28日、千人計画への参加をめぐって、米政府に虚偽の報告をしたとして、ナノテクノロジーの世界的な権威として知られるハーバード大化学・化学生物学学部長のチャールズ・リーバー教授(60)の改制捜査に踏み切ったのだ。 
ナノテクノロジーとは、物質を分子や原子という極小の世界において自在に制御する技術のことだ。
中国のみならず、世界が競って開発に注力している分野でもある。 司法省によると、リーバー教授は2012~17年ごろ、千人計画に参加し、月額5万ドル(約539万円)の給料や15万8千ドル(約1700万円)の生活費など、計100万ドル(1億700万円)を受け取っていた。見返りに、中国・湖北省の武漢理工大学の名義で論文発表などを中国側から要求されていたという。 
リーバー教授は、軍事関連の研究などで国防総省やNIH(米国立衛生研究所)といった連邦政府機関からも、計1500万ドル(16億3600万円)もの研究費を受け取っていたが、米政府に報告する義務を怠った(2020年1月30日付、英BBC日本語電子版)。 
米国内法では、外国から資金提供を受けた場合、政府に報告しなければならない。
だが、教授は千人計画への参加を隠したまま、FBIの事情聴取にも関与を否定した。
司法省が教授の逮捕に踏み切ったのは、極めて悪質とみたためだ。
ハーバード大は「極めて深刻で捜査に協力する」とコメントし、教授を無期限の休職処分としたことを明らかにした。
武漢と深い関わりが 
リーバー教授はペンシルベニア州フィラデルフィア出身。スタンフォード大学博士課程を修了し、2015年からハーバード大で化学・化学生物学学部長を務めていた。
400本を超える論文を共同で執筆している。 
リーバー教授の起訴が米国内外に波紋を広げたのは、武漢理工大での論文作成にみられるように、新型コロナウイルスが発生した武漢と深い関わりがあったためだ。
教授が逮捕されたのが、中国・武漢市が都市封鎖(ロックダウン)されたのとほぽ同じ時期だったことも注目を集めた。
新型コロナウイルスが生物兵器である、との噂が公然と語られ始めた時期と重なっていたからだ。 
まず浮上したのが、リーバー教授が武漢で発生した新型コロナウイルスを中国に売却したのではないかという疑惑だ。
ファクト・チェック’で知られる米サイト「スノープス」によると、リーバー教授は、2011年から武漢理工大で特別招聘教授を兼任していた。 
このため、リーバー教授が関わったとは言わないまでも、新型コロナウイルスが人工的に造られた生物兵器ではないかとの憶測が広がり始めた。 
だが、スノープスは、リーバー教授への強制捜査と新型コロナウイルスの関係について「証拠はどこにもない」と否定し、起訴されたのはあくまでも米政府への申告義務を怠った収入面での経済的な理由と学術面での不当な情報持ち出しが理由である、との見方を示している。
人民解放軍が「学生」と偽り 
ハーバード大のある米北東部のボストン市周辺では、このほかにも大学関係の中国人2人が虚偽申告などの罪に問われている。
マサチューセッツ州連邦地検の検事が1月28日の記者会見で発表したところによると、ボストン大学でロボットエ学を研究する中国人女性(29)はビザ申請の際、人民解放軍士官という肩書を隠して「学生」と偽り、詐欺や虚偽中昔などの罪に問われた。
女性士官は米軍のウェブサイトにアクセスして中国へ情報を送るなど、多くの任務を果たしたとみられる。 
ハーバード大でがん研究をしていた中国人の研究者(30)は、ソックスのなかに生物試料の瓶21本を隠したまま帰国便に搭乗しようとしたうえ、連邦当局者に嘘をついた罪に問われていることも分かった(2020年1月29日付、米CNN日本語版)。 
州検事は「中国が米国の技術を盗み取ろうとしている作戦のほんの一部だ」と語り、ボストンは大学や研究施設が集中しているため標的になりやすいとの見方を示した。 
千人計画絡みの事件は続く。
5月8日、米司法省は南部アーカンソー州にあるアーカンソー大学の中国系米国人教授を逮捕、起訴した。
中国政府や企業から資金供給を受けていたにもかかわらず、虚偽の申告をした罪だ。
リーバー教授と同じ罪で、最長20年の懲役刑となる。 
米司法省などによると、この教授は仲間の中国人研究者に送ったメールで、「中国のネットで調べれば分かるが、米国が『千人計画』の学者をどう扱うかが分かる。私がその一人であることを知っている人は少ないが、このニュースが広まったら私の仕事は大変なことになる」と書いている。 
アーカンソー大はこの教授を停職処分としたうえで、FBIの捜査に協力している。
教授は同大学で1988年から教鞭をとり、電気工学系の高密度エレクトロニクスセンター所長を務めていた。 
南部ジョージア州アトランタの名門、エモリー大学の中国系米国人学者も千人計画に参加し、米当局に申告詐欺罪で起訴された。
この学者は過去6年間、中国の複数の大学で千人計画関連のプロジェクトに参加していた。
中国当局からの資金提供とみられる学者の海外収入は50万ドル(約5370万円)に上ったにもかかわらず、申告せずに虚偽報告をしていた。
学者は執行猶予1年、35,000ドルの罰金刑となった。 
散発的な強制捜査のせいもあるのだろう。
日本ではほとんど報じられていないが、米捜査当局が千人計画絡みで取り締まりを強化し始めていることを示す重大な動きである。
一つひとつの事件をたどっていくと、背後にハイテクや学術分野で米国としのぎを削る中国への米当局の警戒感が色濃く浮かんでくる。
頭脳ごと盗み出す 
中国は建国百年に当たる2049年を目標に、製造強国となってハイテク分野で世界の覇権を握ることを狙っている。
そのために手っ取り早く、米国の知的財産を頭脳ごと盗み出そうというのが千人計画であることは書いてきたとおりだ。 
中国は2016年3月、中国共産党の第13次5ヵ年計画(16~20年)に「軍民のより深い融合の推進」を掲げ、7月に発表した軍民融合戦略に関する方針に「科学技術・経済・軍事において機先を制して有利な地位を占め、将来の戦争の主導権を奪取する」と明記した。 
17年1月には、習近平国家主席がトップの中央軍民融合発展委員会を設立して、中国軍の近代化を図っている。
軍民融合戦略の方針にあるとおり、中国にとって、軍事と民間には境がないどころか、表裏一体であるという事実を押えておかねばならない。 
そこで中国が目をつけたのが、陸・海・空という従来の戦闘空間に加え、宇宙、サイバー、第5世代(5G)移動通信システム、AI(人工知能)といった領域だ。
米国に勝利するため、革新的技術を持つ博士クラスの「高度人材」の獲得に躍起となっていく。 
千人計画と同様、米国を刺激することを避けるため、中国がその存在を伏せるようになったハイテク産業戦略「中国製造2025」は、千人計画の数年後に始まった。
優秀な人材の誨保に一定のめどがついたことから起案されたとみられ、千人計画と中国製造2025が連動していることが分かる。 
実際、中国当局は2014年、08年から始めた千人計画の成果として「中国製造2025」で示したようなハイテク産業で「多くの中国独自の製品を生み出した」とし、核技術、有人宇宙飛行、有人潜水艇、北斗衛星ナビタステムなど軍需産業などの分野で、「技術的難関を突破した」とアピールしている。 
米国はまさに、その両方に神経を尖らせているが、これこそ、米中貿易戦争の裏側で繰り広げられている情報戦の実態なのである。
中国に「影の研究室」を設立 
それを裏付ける動きが米国内で表面化してきた。
リーバー教授を逮捕する2ヵ月前の2019年11月のことだ。
米連邦議会は「中国の千人計画は脅威である」との報告書を公表した。
上院の国土安全保障小委員会(共和党の口ブ・ポートマン委員長、オハイオ州選出)が超党派でまとめた。
FBI、全米科学財団(NSF)、NIH(米国立衛生研究所)、エネルギー省、国務省、商務省のほか、ホワイトハウス科学技術政策室の7つの組織を対象に、8ヵ月かけて調査したものだ。 
報告書はまず、こう指摘した。 
「中国の国外で研究を行っている研究者らを中国政府が募集する人材募集プログラムにより、米政府の研究資金と民間部門の技術が中国の軍事力と経済力を強化するために使われており、その対策は遅れている」 
具体的には、中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指しており、中国政府は1990年代後半から、海外の研究者を募集して国内の研究を促進。
この稿続く。

 

 


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