以下は前章の続きである。
東大が「左翼」に見える理由
保守論壇にあるもう一つの誤解として、東京大学には左翼が多いというものがある。
冒頭の調査でも確かに実数は多いが、それは分母が大きいからで、率としてはそれほど高くない。
それでも、左翼が多いという誤解が生じるのは、軒並み左に偏向している大手マスコミが、自らのイデオロギーに合う東大教員を好んで起用するため、その印象が強くなるからだと考えられる。
実際、私は東京大学の政治学や社会学などを専門とする複数の文系教員と学術的なやりとりをしているが、どの先生も社会「科学」たる立派な研究をされている。
定量的分析は、メディア・バイアスで生じる誤解を解くという意味でも有益かもしれない。
なお、筑波大学の教員としては、本学が75大学中7番目に政治からの独立を大事にしている大学であるという点には、言及しておかなければなるまい。
最近は、各種経済誌で就職に有利な大学といったランキングがしばしば掲載される。
そのような現金な基準で大学を選ぶのもいいが、政治から独立した自由な学問の文化が守られているか否かという基準で大学を選ぶこともできる。
そういう高尚な趣味がある方は、本稿で紹介した調査結果を是非参考にしていただければと思う。
掛谷英紀氏昭和45(1970)年、大阪府生まれ。東京大学理学部生物化学科卒業。同大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。専門はメディアエ学。現在、筑波大学システム情報系准教授。著書に『学問とは何か専門家・メディア・科学技術の倫理』(大学教育出版)、『学者のウソ』(SBクリエイティブ)など。