文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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「反米」を露骨に見せながらも、「戦後秩序」すなわちヤルタ・ポツダム体制の固定化を信じて疑わず、

2018年05月07日 22時19分38秒 | 日記

以下は前章の続きである。

「世論」の英訳語は「public opinion(公的な意見)」とされるが、実際のそれは「popular sentiments(大衆的な感情)」であろう。 

戦前から戦後もしばらくまでは、public opinionは「輿論」、popular sentimentsは「世論」と区別して用いられていた。

昭和21年に当用漢字表から「輿」が除外され、やがて「輿論」と「世論」の違いが曖昧模糊になり、今日新聞や放送局の「世論調査」でそれが解説されることもない。

森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書の改竄が明らかになり、マスメディアは一斉に安倍内閣に対する「世論」調査を実施した。 

予想どおり、安倍内閣の支持率は急落した。 

中略。

〈公文書の改ざんは、幾重もの意味で、民主主義の根幹を掘り崩す行為である。問われているのは安倍政権のあり方そのもの〉で、〈5年余に及ぶ「安倍1強政治」が生んだおごりや緩みと、無縁ではあるまい〉(3月13日付社説)、〈森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんは、立法・行政・司法が相互にチェックし、均衡をはかる憲法の基本原則を侵し、民主主義の土台を壊した。この目の前の憲法の危機を正すことこそ、与野党を超えた立法府の喫緊の課題である〉(3月23日付同)などと、森友文書の改竄から憲法の危機にまで問題を広げて安倍批判を展開した。 

無理筋だらけの推論

そもそも森友学園の問題とは何か。 

新たに小学校開設をめざした籠池泰典氏が政治家への陳情と近畿財務局との交渉を繰り返した結果、最終的に理財局長が国有地売却を決定した。

「陳情」も国有地売却もそれ自体に違法性はない。 

問題は「ごみ撤去費用の8億2、200万円を差し引いた1億3,400万円、10年の分割払いによる土地の売却」という財務省理財局の決定が適切だったかどうか、そこに安倍首相の具体的な「指示」「関与」があったかどうかである。 

値引きについて根拠が不十分という会計検査院の指摘はあったが、改竄前の文書を見ても、安倍首相の「指示」「関与」があったとは考えられない。 

3月19日に新たに財務省が明らかにした削除文書によれば、もともと土地を所有していた国交省大阪航空局がごみ撤去費用として8億円余の値引きを見積もって近畿財務局に提案していた。

森友学園との取引が「本件の特殊性」というのは、ごみの問題ほか「地歴」の複雑さを指すと見るのが妥当で、それ自体は豊中市に売却された隣接地(野田中央公園)も同様だ。 

安倍首相の「指示」や昭恵夫人の「口利き」と推断するのは無理筋で、財務省の首相への「忖度」云々に至っては、その責任を首相にどう取れというのか。 

たしかに文書改竄は許されないが、公文書破棄や改竄という不祥事は安倍内閣に限ったことではない。 

根本的なことをいえば、組織における「保身」「責任回避」という病理で、組織下部にその皺寄せがくるのは官庁に限らず民間企業にもざらにある。

昨年2月の国会で安倍首相が、「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」と発言し、その後佐川宣寿理財局長(当時)が「国有地売却は適正」として森友側との価格交渉を否定した答弁との整合性を図る必要に迫られた。

書き換えはその結果であろう。 

看過していいわけはないが、「不都合な真実を隠蔽する安倍」と「不正を追及する野党」といった単純な構図で、あたかも国家の一大事のごとく大見出しを打って国民に刷り込もうとする『朝日新聞』など「反安倍」メディアの底意がどこにあるかは承知しておきたい。 

第一次政権当時もそうだったが、『朝日新聞』の安倍批判は、たんなる「時の政権」批判にとどまらない。

そこにあるのは安倍氏が掲げた「戦後レジームからの脱却」という政治目的を嫌悪し、断固阻止すべきという、まさに「政敵」を潰す姿勢だった。 

「日本を米国の脅威たらしめない」「独立国として起たせない」というのが米国の初期対日占領方針で、これに基づいてGHQは検閲と情報統制を行ない、戦後の日本人の言語空間、社会構造はそれに馴致された。 

『朝日新聞』はそれを遵守する優等生として戦後を歩んできた。

「反米」を露骨に見せながらも、「戦後秩序」すなわちヤルタ・ポツダム体制の固定化を信じて疑わず、国家は自衛権を持ち、その行使の手段として軍隊を持ち得るという常識は、『朝日』にとっては非常識なことで日本には認められない。

その非常識、暴挙を通そうとする安倍首相は断じて許せない、ということだ。 

憲法改正を自らの内閣の政治日程に具体的に挙げたのは、歴代自民党政権で安倍首相一人である。

『朝日』にとっては最大の「政敵」で、敵である以上、そこに真摯な対話は必要ない。

「丁寧な説明を」と言いつつ、つねに『朝日』にとって批判しやすい論争設定をし、その言語空間に安倍氏を誘引し続け、安倍氏が焦れて、つい感情的な言葉を吐露すると、さらにそれを利用し安倍氏を「信頼できない人物」「傲岸で危険な人物」として国民に印象づけようとする。

この稿続く。


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