文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本の場合、戦後が本当に酷い

2022年01月03日 17時33分08秒 | 全般

以下は、月刊誌WiLL2020年12月号に掲載された戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之と阪大文学部出身者の中ではピカイチの文芸評論家小川榮太郎の対談特集からである。
見出し以外の文中強調は私。
赤い巨塔 日本学術会議という病
学はあっても心は反日
山極壽一京大前総長は研究費不正疑惑の説明責任を果たしたのか
名簿だけ出して説明していない―?学者の傲慢さ、いかばかりか
何様なのか
高山 
菅政権が発足して1ヵ月、なかなかの粘り腰だ。
小川 
真っ先に日本学術会議にメスを入れたのは大したものでしたね。
これによって、メディアが大騒ぎし、叩かれまくるのは分かり切っていた。それでもなお決断された。
逆に、日本学術会議の実態がネットを中心に次々に明らかになってきました。
高山 
今回のリストを提出したのは、学術会議前会長の山極壽一(京大前総長)だった。
曰く、「名簿だけ出して、直接、説明していない」と。
一体何様なのか。
10億円ももらっているわけだから膝を屈して「日頃からお世話になっています。今回はこのようなメンバーにしました」と説明責任を果たすのが当然だろう。
ところが、説明もせず、任命拒否されたと憤っている。
学術会議側こそやるべきことをやれと言いたい。
小川 
山極前総長は、霊長類から人類の問題をとらえる、非常に重要な主題を扱う学者なんだけど、人類を論じるとなると、戦争とか統治、男性原理を否定的に語ろうという臆断で、せっかくの霊長類研究を台無しにしている。 
霊長類のまともな記述を読んでゆくといきなり「人々が先祖を崇拝し、家系図を大事にするのは、先祖を引き合いに出して土地の権利を守れるからである」なんて独断がするりと入ってきて油断がなりません(笑)。
まあ、そうした学者としての評価はともかく、彼の出身母体である霊長類研究所に最大で5億円とも言われる研究費の不正疑惑が取りざたされていますね。 
学問への疑問はいずれ私の人類研究の著書で突き付けようと思っているけど、こちらの不正疑惑は早めに説明責任を果たした方がいいでしょうね。
説明責任って、この人たちの大好きな言葉でしょう?
高山 
法政の山口二郎にしても科研費と称して、日本学術振興会から6億円ももらっている。
「安倍に言いたい、お前は人間じゃない。たたっ斬ってやる!」と言うような輩に日本人の血税が流れていること自体、信じられない。 
前川喜平が野党の合同ヒアリングで意見を求められ、文科省事務次官時代、文化審議会の文化功労者選考分科会の委員候補の名簿を杉田和博官房副長官に出したら、安全保障関連法に反対していた学者など2人について「『こういう政権を批判するような人物を入れては困る』とお叱りを受けたと暴露した。 
さらに、任命拒否された6人についても、前川は「安保法や特定秘密保護法などに反対する姿勢が拒否の理由ではないかと強く推定される」とし、「学問の自由、表現の自由、思想・良心の自由に対する侵害だ」と政権批判している。
小川 
組織ぐるみで天下り斡旋をしていて、文科省の調査報告書でその首謀者として違法行為認定をされた前川さん。
一体どの口が言うんですかね。
高山 
そうだよ。
朝日は日本学術会議の会員候補6人が任命されなかった問題で、「首相が推薦通り任命する義務はない」とした内部文書があったと報じた(10月7日付)。
その文書は内閣府の学術会議事務局が作成した2018年11月13日付のもので、会員が特別職の国家公務員であることを踏まえ、安倍首相(当時)が「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」と。2年前から学術会議の意義が問われていたことがわかる。
小川 
根深い話です。
高山 
学術会議の会員は1984年、法律の改正によって学者問での選挙で選ぶ方法から研究分野ごとに候補者を推薦し、その推薦に基づいて総理大臣が任命するという形式に変わった。
それまでの選挙のやり方は、票を集めることに必死で権謀術数が渦巻いていたようだ。
教授会の派閥や学閥の力が強すぎて、公平性がなかった。
帝京大学にいたことがあるから、よくわかる。
助教授から教授へと推薦する話が上がったら、それこそすさまじい闘争を繰り広げていた。
小川 
そうした権力関係で雁字搦(がんじがら)めになっている大学人たちの世界を徹底的に笑いのめしたのが筒井康隆さんの『文学部唯野教授』。
高山 
その後も、学会の仲間うちで会員を引き継ぐなれ合いなどが問題視されて、2005年、再び会員の選出方法が変更された。
210人の学術会員と、約2000人の連携会員で構成され、それら会員が「優れた研究又は業績がある」科学者をそれぞれ推薦。
その上で選考委員会を経て、学術会議が最終的に推薦する候補者を絞り込む仕組みになった。
小川 
予算は10億円ついていますが、ほとんど事務局の運営費に充てられています。
そういう意味で、学術会議の会員に選ばれたからといって、報酬が上がるわけではありません。
しかし、ここが肝心なところなんだけど、「名誉」という利権がつく。
文化勲章・文化功労者の受章にもかかわるし、政府の諮問会議に呼ばれることもある。
高山 
自民党が本腰を入れて、政調会長の下村博文を中心に「学術会議の在り方を検討するプロジェクトチーム(PT)」を発足させた。
調べてみたら、学術会議が何もしていないことが判明した。
選挙制の頃は、年間20件ほどあった政府に対する提言や勧告が、推薦制になった途端、年に数回あるのがせいぜい、ほとんどゼロ行進になってしまった。
小川 
存在意義が問われてしかるべきですよ。
学会そのものの歪み
高山 
そもそも学術会議を支える母体の学会そのものが歪んでいる。
任命拒否された6人の中に、歴史学者の加藤陽子がいたけど、彼女の背後には日本歴史学協会や日本考古学協会が存在している。
小中学校の歴史教育は、そのコントロール下に入っていて、その代表として加藤の名前があがっているにすぎない。 
三内丸山(さんないまるやま)遺跡などが発掘され、縄文人の人骨からY遺伝子を取り出し、最新科学を使って調査をしたところ、縄文人と現代日本人が、ほとんど同じだと判明している。
今までの歴史学では縄文時代から弥生時代に移ったとき、多くの渡来民族がやってきて、別の人種に変わったと考えられていた。
もっとひどい話になると、縄文人の耳垢はねっとりとしていて、弥生人のそれはサラサラしているという説まであった。
江上波夫の「騎馬民族説」も、ある時点までは実際に信じられていた。 
最新科学の研究成果を踏まえれば、弥生人渡来説や、騎馬民族征服説はすべて打ち消されることになる。
ところが、日本の教科書の記述はいまだに、稲作が大陸から持ち込まれてきたとしている。
さらに聖徳太子はいなかったとか、『古事記』の世界をすべて否定する輩まで出てきた。
学術会議のシステムが続く限り、この迷妄から脱することができない。
小川 
似非学問が大手を振っている状態が、今の日本のアカデミズムの実態です。
しかし、これはフランス革命以後のヨーロッパの社会・人文学に由来する根深い問題でもあるんですね。 
今、イギリスの政治哲学者、エドマンド・バークについての論文を執筆しているのですが、バークの論考を読むとフランス革命を契機に、ヨーロッパの人文学が政治プロパガンダと切り離せなくなったことがよくわかります。
自由、平等、人権という綺麗ごとは、確信犯のプロパガンダと手を繋いで登場したんです。
このことを最大限利用したのが共産主義思想だった。 
日本の場合、戦後が本当に酷い。
GHQに由来する東京裁判史観、東大憲法学、戦後民主主義、さらにその裏に共産主義が引っ付いている。
そういう学者たちが、公正・公平、ノンポリを装いながら、国民に世界観を強制してきたんだ。
今回の任命拒否は、その根を辿(たど)れば、世界観戦争、イデオロギー争奪戦なんです。
だから彼らは過剰に反応しているんです。
高山 
真実があぶり出された(笑)。
小川 
その証拠に、日本物理学会、日本数学会などをはじめとした93にも及ぶ理系の学会が、共同会見をネット上で行い、「早期の解決が図られること」を求める共同の緊急声明を発表しました。
それ以外にも9条科学者の会や安保法に反対する学者の会、日本ペンクラブ、日本マスコミュニケーション学会なども声明を発表しています。
要するに、こういった団体の執行部が“汚染”されているのです。
ただ、彼らが騒げば、確かに政権の支持率は一時下がるかもしれませんが、国民、特にネットで情報をとる若い層の国民が、日本アカデミズムの奇怪さをつぶさに知る事になる。
高山 
学術会議なんて叩けば叩くほどホコリが出てくるところだから、大いに期待したいね。
この稿続く。


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