文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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社会的に統制しないと世界はとんでもないことになってしまうと思い込んでいる

2021年05月11日 14時40分18秒 | 全般

以下は発売中の月刊誌WiLLに『人新世の「資本論」』をメッタ斬り!と題して掲載されている古田博司と朝香豊の対談特集からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
朝香
「最先端のマルクス研究」といわれますが、大きな違和感を覚えます。
古田
これまでの環境論と変わらない。マルクスの“変異ウイルス”ですね

『人新世の「資本論」』(集英社新書)が二十万部を突破したという。
中央公論新社が主催する「新書大賞2021」にも選出された。
「最先端のマルクス研究」とのことだが、地球温暖化論の焼き直しらしい。ということは、「石油が枯渇する」「森林がなくなる」と同類の“あおり”なのか。
“人新世”とは聞きなれないが、「人類が地球を破壊しつくす時代」だという。
ただ『人新世―』は危機をあおるだけでなく、危険な社会変革をもあおる“過激思想”だ。
さすがはマルクス研究者、著者の斎藤幸平氏は地球温暖化の元凶が資本主義だといい、猛烈に“左旋回”する。
エリート任せのSDGS(持続可能な開発目標)じゃ物足りない!
経済成長をあきらめ、電気はマイクロ水力発電で!
まるで古代のムラ社会に戻れといわんばかり。
“脱成長”なんてやったら、筆者が救いたいであろう「世界の貧しい子どもたち」がいちばん苦しむのでは……。
ともあれ、「脱炭素」を加速させ、中国の脅威から目を逸らさせるにはピッタリの“あおり”だろう。
古田、朝香両氏はどう読み解くのかー。

人類は豊かになっている
古田 
斎藤幸平さんの『人新世の『資本論』(集英社新書)を読みました。
朝香さんはどう思った?
朝香 
一言でいえば、資本主義によって人類が地球を破壊した。
もう経済成長はやめて、ムラ社会のような小さな共同体に戻ろうーという話です。
その思考に、マルクスを都合よくまぶしているといった印象です。
古田 
斎藤さんは「人間が地球を征服しつくした」と思い込んでいますね。
それが「人新世」というわけ?
朝香 
「人新世」という変わった言葉は地質学の新たな時代区分で、ノーベル化学賞を受賞したオランダのパウル・クルッツェンが名付け親です。
彼の専門はオゾンホールで、典型的な地球温暖化論者。
古田 
斎藤さんたちが「征服しつくした」と思い込んでいる地球はいま、大国を中心に北極圏に進出をはじめている。
ということは「未開拓」だからでしょう。
ディスカバリーチャンネルを見ると、密林・サバンナ・大河……地球はまだまだ自然だらけだとわかります。
朝香 
『人新世―』を読んでいると、左翼時代の自分を思い出します。
斎藤さんは、わたしと同じ気持ちで左翼になったんだろうなと。
地球の資源を好き勝手に利用しまくる人間のあり方は、果たして正しいのだろうかーとつねに自問している。
そして社会的に統制しないと世界はとんでもないことになってしまうと思い込んでいる。
その「正義感」に、マルクスが響くんですよね。
古田 
前回の対談でも話したけど、斎藤さんのようなマルクス信者・リベラル教徒は、ほんとうの貧困家庭からは出てきません。
かといって、上流階級でもない。
それなりにお金がある。上の下あたりから出てくるイメージです。
朝香 
斎藤さんも東京にある私立の中高一貫校を卒業して、アメリカのウェズリアン大学に通っています。
修士と博士はドイツの大学院ですから、裕福な家庭だったことは間違いありません。
『文藝春秋』(四月号)の池上彰さんとの対談では、こんなことを言っています。
《大学は米国で学んでいたのですが、その時に、米国社会の凄まじい格差を目にして「マルクスを学びたい」と思いました》
《よく目を凝らして見れば、大学内でも、食堂の従業員や清掃員などはものすごく貧しい。他方で、投資銀行に就職した友人などは、いきなり年収2000万円を手にしたりする》
吉田 
自分が裕福だから、それは大さな格差を感じたんだろうね。
だからといってマルクスとはね。
格差は資本制だけが生むものではないよ、中世なんかもっと格差社会ですからね。
良い人なんだろうけど単純だなあ(笑)。
わたしは産経新聞(2019年3月14日付)の「正論」欄に、「社会主義経済はフェイク」「人類の愚行」とハッキリ書いてしまった。
社会主義がフェイクである以上、資本主義でやるほかないでしょう。
格差の拡大とか負の側面もあるけど、資本主義を全否定したら何も残りませんよ。
朝香 
格差が広がっているのは事実です。
でも貧困層がどんどん貧しくなっているわけではない。
貧困層は確実に底上げしてきたのです。
たとえばインフラ整備が進むことで、自然災害で亡くなる人はこの100年間で半分に減りました。
ほかにも、全世界で8割の1歳児が何らかの予防接種を受けられるようになった。
1990年から2015年にかけて、世界の人口は58億人から73億人に増えたのに、飢餓人口は10億人を超えた状態から8億人を割るまで減っている。
世界の絶対的貧困層の割合は年間約0.6ポイント低下していて、現在は10%程度になったーこの数字は20年前と比べて半分以下で、2040年には絶対的貧困層がほぼ解消するといわれています。
もちろん、ホームレスはいなくなったほうがいいし、奨学金が返せない人や生理用品が買えない女性がいるのは問題です。
ただ社会全体を考えるうえで、そういった問題を誇張して人類全体が豊かになっている事実を無視するのは、知的な態度とはいえません。
古田 
「木を見て森を見ず」だね。
朝香 
斎藤さんがいう“脱成長”を実行したらどうなるか、現実をみればわかります。
2020年、コロナショックで世界経済は落ち込んだ。
まさしく“脱成長”した結果、絶対的貧困層の増加が懸念されているんす。
“脱成長”は本来、斎藤さんが救いたいはずの貧しい者を、ますます貧しくしてしまうことになぜ気づけないのか。
この稿続く。


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