以下は前章の続きである。
内容はアメリカのトランプ政権が2月2日に公表した「核戦略見直し」(NPR)への全面的な反対だった。
朝日新聞はさらに2月7日朝刊の「核戦略と日本」「これが被爆国の談話か」という見出しの社説で、「核戦略見直し」を日本の防衛にとっての核抑止の強化として歓迎する日本政府を激しく叩いていた。
さて、ここでまず「核戦略見直し」の骨子を紹介しておこう。
日本のメディアでは「核戦略体制の見直し」と表現するところがほとんどのようだ。
だが、原題の直訳は「核体制」である。
朝日新聞の主張の危険性や虚構を知るためには、その主張の標的の実態を把握することが欠かせない。
発表の要点は次のようだった。
・アメリカやその同盟国にとって外部からの核兵器の脅威が高まった。
とくに核の限定的な先制使用を語るロシア、核戦力全体を増強し、地域覇権を拡大する中国、核・弾道ミサイルの開発を進める北朝鮮の脅威は深刻である。
・これら多様な脅威の効果的な抑止や同盟国への拡大抑止の強化のために、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の弾頭の爆発力を低減させ、小型核として運用するとともに、核弾頭を搭載した海洋発射巡航ミサイル(SLCM)を再配備する。
・今後5年から10年の核政策として核抑止力の信頼性確保に向け、大陸間弾道ミサイル(ICBM)とSLBM、戦略爆撃機から成る「核の三本柱」と指揮管制システムの近代化を本格化させる。
・中国、ロシアなどの核の脅威増大に備えるため、オバマ政権の「核兵器なき世界」の主張を後退させ、「柔軟かつ多様な核戦力」を強化して、アメリカ自体の核抑止と日本など同盟諸国への拡大抑止を再構築する。
・アメリカが核使用に踏み切る条件としては、「アメリカと同盟国の死活的権益の防衛に向けた極限状況下でのみ核使用を検討する」とし、オバマ前政権の方針を原則として踏襲する。
以上のようなトランプ政権の新たな核戦略に対して、日本政府は高い評価を示した。
この稿続く。