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一党独裁体制を守るためには、どんなことでも平気でやるのが中国共産党政権の一貫したやり方である

2021年08月05日 11時36分31秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に掲載された石平さんの定期連載コラムからである。
王外相とタリバン会談の深層
本紙既報通り、中国の王毅国務委員兼外相は7月28日、天津市でアフガニスタンのイスラム原理主義勢カタリバンの幹部と会談した。
鄧小平時代以来の中国外交史上、これほど異例、異様な会談はない。 
外相としての王氏の、しかるべき会談相手は本来、各国政府の外交責任者であろう。
王外相がアフガニスタン政府の代表ではなく、その国内の一勢力幹部と会談すること自体はまさに異例。
アフガニスタン政府と公式の外交関係を持ちながら、その敵対勢力と会談を持ったことは、相手国の内政に対する乱暴な干渉であり、アフガニスタンとの国家間関係を壊してしまう恐れもあるだろう。 
さらに重要なのは、タリバンがテロ活動を行っている疑いを持たれている組織であることだ。
実際、今年5月にカブールで58人が死亡した爆弾テロが起きたとき、アフガニスタンのガニ大統領は真っ先に「タリバンによるテロだ」と非難した。 
この点からしても、王外相とタリバン幹部の会談は実に異様なものであることが分かろう。
会談を持ったことで中国の国際的イメージのさらなる悪化は必至である。 
ただでさえ国内の人権抑圧などで国際社会からの厳しい批判にさらされている中国がどうして、「テロ組織と手を組んだ」と非難される愚挙に出たのか。
中国政府の意図を解き明かすには、会談の時間と場所が鍵となる。 
実は、王外相とタリバン幹部の会談が行われた2日前、天津市内の同じ場所で、王外相は米国務副長官のシャーマン氏と会談を持った。 
その「絶妙」なタイミングからすれば、中国側がタリバン幹部をわざと天津に呼んで会談を行ったのは、2日前の米中会談を強く意識したもので、アメリカに対する一種の
見せつけである、と理解できよう。 
つまり、中国はアメリカとの駆け引きで優位に立つために、タリバンという「テロ組織」に接近する“禁じ手”まで使ってしまった。 
ここまでして中国政府は一体、アメリカから何を勝ち取ろうとしているのか。 
同26日に行われた米中会談において王外相は冒頭から、中国側の「3つの基本要求」を持ち出し、それらの受け入れを米国側に強く迫った。 
その時、王外相が筆頭にあげたのは、「中国の特色ある社会主義の道と制度に挑戦し、その転覆を試みてはならない」ということである。
より分かりやすい表現に言い換えれば要するに、王外相は米国政府に対して、中国共産党一党独裁の「社会主義体制」の転覆を試みないよう求めたわけである。 
ちなみに、王外相の出した「3つの基本要求」の2番目と3番目はそれぞれ、「内政干渉しないこと」「主権と領土の保全を損なわないこと」である。
結局、中国政府にとって、「主権」や「領土」よりも共産党支配の政治体制の維持と保全こそが最大の関心事であることが分かろう。 
そして、まさにこのような視点から、米中会談直後に、中国政府がタリバン幹部との会談をセットした深層の理由がうかがえるのである。 
つまり、習近平政権はこの際どい行動をもって、アメリカに対して1つの明確なメッセージを送ったのである。
それは、「もしも米国政府が中国共産党に対する体制転覆をたくらむのであれば、われわれはテロ組織と手を組んででも徹底的に抗戦するぞ」というものだ。 
これは単なる脅しではないと思う。
彼らのやりがちなことである。
一党独裁体制を守るためには、どんなことでも平気でやるのが中国共産党政権の一貫したやり方であるからだ。 
中国という国の危険性はまさにここにある。

 

 


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