goo blog サービス終了のお知らせ 

Sun Set Blog

日々と読書と思うコト。

『プラダを着た悪魔』

2006年11月22日 | Movie


 今日は休日だったので、『プラダを着た悪魔』を観てくる。

 パンフレットの見出しを抜き出すと、

 オシャレに無関心な彼女が得たのは、世界中の女性が死ぬほど憧れるあの仕事!
 カリスマ編集長の要求は悪魔的ハイレベル。努力とやる気だけで乗り切れるのか?
 キャリアとプライベート、どうやってバランスを取ればいい?

 という映画。男性よりも、女性にとってより感情移入できる作品なのだと思う。
 メリル・ストリープ演じる文字通り悪魔のような編集長は極端かもしれないけれど、どこの会社にだって似たような上司はきっといる。彼女(彼)たちの要求に日々応えながら、それでも頑張っている女性にとっては、小気味よい展開が感情移入しやすいんじゃないだろうか? しかも、垢抜けない女性が洗練された、魅力的な女性へと変身していくサクセス・ストーリーなので見ていて単純に楽しいし。

 けれども、最後には自分にとっての本当の幸せは何なのだろうと自問し、ある決断をするというのが現代の物語だという気がする。昔なら、社会的なサクセス・ストーリーの部分で、幸せになって終わりだったように思う。けれども、いまでは仕事とプライベートのバランスをどうするかとか、自分にとっての幸せは何なのかとか、それは環境や年齢や時期によっても随分と揺れ動くし……とか、何かと悩み事が多くなりがちだのだ。もちろん、昔だっていろいろと悩みはあったのだろうけれど、それでも現代は考えなければならないことが随分と増えてしまった。いいのか悪いのかは別にして。

 個人的には、様々な洋服をまとったアン・ハサウェイが魅力的だった。マンガの登場人物なみに大きな瞳が印象的なアン・ハサウェイだけれど、作中でディレクターのナイジェルに洋服を選んでもらうあたりから、そのファッションを見ているだけで随分と楽しませてもらった。個人的にはスーパーブランドとかはほとんど興味がないのだけれど、それでもお気に入りの服とかカバンを持っていると嬉しくなるという気持ちはわかるし、一部の人がこの映画に出てくるような最先端のブランドにある種の芸術性を見い出し、生涯をかけているというのも話としてはわかる。作中にも日々纏われるという意味で芸術作品よりも崇高だというような台詞があったけれど、そこまでの付加価値がなくてもいいはずのものなのに、それでもとり憑かれたかのように情熱を傾けてしまう力がファッションにはあるのだろうなと思う。

 印象的だったのは、冒頭まだファッションに無頓着だったアンディのブルーのセーターが、実際には数年前に自分たちが作り出した流行による流れの中で生まれたものだという話。超一流のファッションデザイナーとファッション誌が流行を生み出し、それがたとえばLimtedやH&M、あるいはGap(日本ならユニクロ)といった大衆相手のチェーンストアへと繋がっていくというのは実際そうで、ホットファッションが手の届く価格にトレードオフされたものを自分たちは手に入れていることになる。そういうちょっとした台詞が、リアリティを生み出していると思う。

 あと、観る前からマドンナの「Vogue」はかかるだろうなと思っていたのだけれど、やっぱり挿入歌として流れていた。

 そして、映画を見終わってから、会社に行って3時間ほど仕事をしていく。映画に影響されて自分の仕事を頑張ろうと思ったというより、前の日にバタバタして終わらなかった分があったというのが正直なところ。やれやれ。


 ★★★(★=1点、=0.5点。満点5点)。


―――――――――

 お知らせ

 Text Sun Setの【Travel】は、地道に更新中なのです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2つの『イルマーレ』

2006年09月29日 | Movie

 キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック主演の『イルマーレ』を観てきた。その2日後に、部下から借りたDVDでオリジナルの『イルマーレ』(韓国映画)を見た。どちらもとても面白く、久しぶりにいい映画に出会えたと嬉しくなってしまう。

『イルマーレ』という映画があることは知っていた。ただ、なんとなく知っているというくらいで、過去からの手紙が届く話くらいにしか思っていなかった。いつだって見てみたいリストでは随分と優先順位が低いところにあって、たぶんリメイクがなければオリジナルを見ることはなかったような気がする。

 今回リメイク版の方を観たいなと思ったのは、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックが出ていたからだ。2人ともそれぞれ好きな俳優で、しかも個人的な印象としてキアヌ・リーブスは脚本を選ぶ俳優というイメージがあったので、きっと面白いのだろうと思っていたのだ。考えてみれば、キアヌ・リーブスが以前に出ていたラブ・ストーリーは隠れた佳作(だと個人的には思っている)『スイート・ノーベンバー』なわけだし。

 そして、落ち着いてインターネットなどであらすじを読むと、とても魅力的な設定だとあらためて実感させられた。過去と未来で手紙のやり取りをするなんて、(もちろんあり得ないけれど)やっぱりとても素敵な話だ。

 物語は、湖畔に建てられたガラスの家に住んでいたケイトが、ポストに次の住人宛の手紙を出すところからはじまる。それは、ガラスの家から引越しをするケイトが、自分宛に届いた手紙を転送して欲しいという依頼を記した手紙だった。けれども、その手紙はなぜか2年前に同じ家に住んでいたアレックスの元に届く。自分が住み始める前までは何年も廃屋だったはずのガラスの家の前の住人だと名乗る手紙に、アレックスは不信感を抱く。そして、幾度かのやり取りを経て、ケイトは2006年を、アレックスは2004年を生きていることがわかる。どこかで時がねじれ、ポストが、あるいは別の何かが、孤独な2人を結びつけたのだ。

 オリジナルもリメイクも、基本的な設定は同じだ。主人公たちは孤独を纏っている。オリジナルでは女性は失恋による心の痛手を負い、リメイクでは仕事自体には充実感を抱いているけれど、誰とも本当の意味で心を通わすことができていないという都市に生きる不器用な女性として描かれている。男はどちらでも建築家(オリジナルでは建築家の学生)で、高名な建築家である父親との関係から孤独を感じている。父親から捨てられ、愛されなかったというトラウマを持っているのだ。

 そして、4人は世間から隔絶された場所に建てられたガラスの家(オリジナルでは海辺の家)に暮らし、一人きりで世界と向き合っている。オリジナルの海辺の家は世界の果てさながらの海岸沿いに建てられているし、リメイクの湖畔の家も、世間から遠く離れ自然の中に溶け込んでいる。孤独感のようなものが、増幅されるような「果て」の場所だ。

 もちろん誰だって孤独感にさいなまれることはあるだろう。けれども普通は孤独に覆われてしまう前に、家族や、恋人、あるいは友人がその孤独感を忘れさせてくれたり癒してくれたりする。心の中の柔らかいどこかに、何かがそっと浸されて、静かに波紋が広がるように心が震えて癒されたり救われたりするのだ。けれども、4人の主人公たちにとっては、心の中にある静かな湖のような場所は静けさに覆われたままで、揺れ動くこともない。世界から遠く離れた場所にただ一人きりで、孤独を自らの内に抱え込んでいるのだ。

 そんな静かな場所を少しずつ揺らしていくのが、交わされていく「手紙」だというのはとても魅力的だ。世間から離れて暮らしている場所にも手紙は届く。それに、手紙はダイレクトなコミュニケーションとは異なり、自分のペースで読み進めることができる。つまり、孤独な世界に生きている彼たち(彼女たち)にとってふさわしいリズムを持っている。自分の世界の内側で、読み進めていくことができる手紙は、ゆっくりと周波数を合わせていくタイプの主人公たちにはこれ以上相応しい媒体はないとさえ思える。主人公たちは手紙を通して少しずつ心を通わせていく。自分の考えていることや思いを言葉にする。その言葉の連なりが、少しずつお互いの距離のようなものを近づけていく。そして、彼たち(彼女たち)は自分たちの閉じこもっている(閉じこもっていた)場所から踏み出していこうとするのだ。
たとえ時の流れが異なる場所であったとしても、近付いていく力を留めることはできない。

 2本の同じ骨格の物語を見て、一番強く感じたのは人は「理解し合える」誰かを求めているということだ。もちろん、そんなものは小説や映画の世界の中にだけしかなくて、現実にはなかなかあり得ないことかもしれないけれど、それでもある種の幻想や希望、あるいは願望として「そういう誰か」を求めている人は少なくないのだと思う。自分が相手のことを一番理解できるし、相手も自分のことを一番理解してくれる。そんなパーフェクトな誰か。今回の作品では、その誰かが異なる時代にいたという話。そして、思いを言葉にして、少しずつ時さえも越えて結ばれていく話。

 他にも、生きる時代が異なる(一緒に過ごすことができない)ことや、タイムラグを巧みに活かしたエピソードが多数あって、飽きずに引き付けられた。最後はいったいどう着地するのだろう? というのがとても興味深かったし、想像しやすい「もし」なので、感情移入だってしやすかった。また、ハリウッド版のリメイクの方が、時空を超えた手紙が到着したときにはポストの横のレバーがかちりと動くなど、見ている人にとってわかりやすく作られていた(男と父親とのエピソードについてもオリジナルではやや唐突な印象を受けたけれど、リメイクではその描写に時間をかけた分妥当性の高いものとなっている)。

 詩的な感覚と透明度が高いのはオリジナル。
 リアリティとストーリー性が高いのはリメイク。
 そして、どちらも見応えはあり。
 DVDを貸してくれた部下はオリジナルへの思い入れが強すぎて、リメイクを観に行くつもりはないと話していた。とてもお気に入りの映画なのだそうだ。確かに、オリジナルを最初に見ていたら、僕もそう思っていたかもしれない。しかも、DVDを借りるまで、ヒロインがチョン・ジヒョンだということも知らなかった(チョン・ジヒョンは大好きな映画『猟奇的な彼女』のヒロインでもある)。

 オリジナル、リメイクともに、

 ★★★★☆(★=1点、=0.5点。満点5点)。


―――――――――

 お知らせ

 オリジナルは家電や家具などの小物がいちいち凝っていて、それもまた見応えがあったのでした。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画部

2006年08月13日 | Movie

 いまは13日の午前3時少し過ぎ。少し前に帰ってきたところ。
 月一程度のお約束、川崎チネチッタのレイトショー『ユナイテッド93』を観てきたところ(今日は4人参加。23時55分からの回。ちなみに満席)。
 明日も早いので今日はもう寝るけれど、いろいろと考えさせられる映画だった。
 仕事帰りにちょっと無理して観に行った甲斐はあったと思う。


―――――――――

 お知らせ

 異常事態が発生したときに、一体どれだけ行動できるのだろうと考えさせられてしまいます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

休日?

2006年07月26日 | Movie

 昨日は仕事が終わった22時過ぎから1時少し前まで、近くのファミリーレストランで打ち合わせ(4人参加)。かなり盛り上がり、準備しなければならない資料の膨大さやら、時間をどう捻出しようかと思いながら、やりはじめる内容について結構わくわくする。
 部屋に帰ってきてからなんだかんだで眠りについたのは午前3時。
 起床は8時。今日は休日で、細々とした準備をしてから、車で30分ほどのところにあるシネマコンプレックスへ。
 観たのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』。平日の朝一番の回だと言うのにとても混み合っていて、たくさんの人。ギリギリに着いたので前の方の席に座る。

 映画は面白かった。イカの怪物の迫力やら、ジョニー・デップの演技のうまさ、飽きさせない演出など、まさに夏休み映画に相応しい感じだ。
 ただ、上映前に3部作の最後が来年に公開されるという紹介をするのは、そして今回の作品が3部作の2作目、つまり繋ぎの作品だと言うのはちょっとあれなのではないかと思う。もちろん、そんなことは既出の内容で誰もが知っている話なのかもしれないけれど、前情報を持っていなかったので、おいおいと心の中で突っ込みを入れてしまう。

 もちろん、今作だけでも盛りだくさんだし、決定的な不満というわけではないのだけれど。今後への伏線もいろいろと張り巡らされていて、期待だって持ってしまうし。
 でも3の公開が来年の5月では、伏線も何も忘れてしまいそうだけれど。

 ★★★☆(★=1点、☆=0.5点。満点5点)。


 映画を観終わった後は会社に行って、20時くらいまでいろいろと仕事をする。今年は9月前半に遅い夏季休暇を取る予定なのだけれど、それを楽しみにいまは頑張ろうと思う。


―――――――――

 お知らせ

 安藤裕子の新曲『TEXAS』を繰り返し聴いています。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜の映画2

2006年06月04日 | Movie

 ネタバレあります。

 今日は仕事が終わった後、先週に引き続き3人で映画を観に行く。観た作品は『ポセイドン』。あの名作『ポセイドン・アドベンチャー』に着想を得た作品だ。
『ポセイドン・アドベンチャー』は『タワーリング・インフェルノ』とともに個人的にとても好きな作品だったので、早速観に行ってきた(ちなみに、一緒に行った2人は『ポセイドン・アドベンチャー』を知らなくて、そのことに世代を強く感じてしまった。うーん。でも、確かに僕も生まれる前の作品なので、金曜ロードショーなどでの体験の有無だけの話かもしれない)。

 映画は面白かった。当然のことながら、次から次とこれでもかとやってくる難関の連続に、思わず手にも力が入る。一人、また一人と共に脱出しようとしている仲間が力尽きていき、本当に脱出することができるのか? と画面に釘付けになってしまう。パニック映画の常套手段に則った、ある意味正統派の作品だ。
 ただし、個人的には『ポセイドン・アドベンチャー』の方に軍配があがってしまう。もちろん、もうしばらく見ていないから随分と美化しているところもあるとは思うのだけれど、それでもギリギリのところでの脱出に向けた極限状況の中で、人間のエゴが剥き出しになってぶつかり合う様など、前作の方により生々しい皮膚感覚のようなものがあった。それと比べると今作はどうしても予定調和的と言うか、スマートになりすぎているように思えた。消化されない伏線(たとえば自殺しようとしていたおじいさんの背景など)もいくつかあって、終わり方もカタルシスが昇華されるというのとは少し違っていたし。
 ★★★(★=1点、=0.5点。満点5点)。

 映画の帰り、シネマコンプレックスの立体駐車場から出るまで30分くらい待たされる。屋上に近いほうしか駐車スペースが空いていなくて、必然的に数珠繋ぎになって続く車の列の最後尾付近になってしまったのだ。その間、映画の感想なんかをずっと話していた。そのときに、『ポセイドン』のことを『タイタニック』と喋っていて、「違いますよ!」と突っ込まれてみたり。確かに、船の転覆というところしか合っていない。


―――――――――

 お知らせ

 最近はずいぶんとリメイクづいていますが、個人的に見たいのは『V』のリメイク版です。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ALWAYS 3丁目の夕日』

2006年01月19日 | Movie

 オフィシャル・サイト

 たぶんこの映画のことはたくさんの場所で、語り尽くされるくらい語られているのだと思う。
 一つ前の『なんくるない』での引用の部分で抜き出したようなかつてあった家族がここでは描かれている。人情のようなもの、夢や希望といったもの。そういうものがまだ確かに当たり前のようにあった時代を描いた物語。

 僕はこの映画で描かれている時代にはまだ生まれていなかった。それでも、冒頭のいくつかのシーンを見ていると、自然と感極まってしまうようなところがあった。たとえば青森から集団就職で希望を胸に上京してくる学生たち、テレビが家に来るのを毎日楽しみにしている子供、家族をいつも優しく見守っている母親、ちょっと乱暴だが情にもろい父親、そういう誰の中にも原風景として共有されているものが描かれているからだと思う。失ってしまったものやもう得られないものは時として美しくより得難いものとして思われがちだけれど、なんだか宝石のような何と引き換えにこういうものを失ってしまったのだろうと思わされるようなものが描かれていた。

 もちろん、別にそれを完全に失っているわけではないのだけれど、それでも圧倒的な密度で描かれた「家族」や「助け合う心」や「優しさ」を見せ付けられたら、自分たちの周囲にあるそれらが随分と薄いものであるように思えてしまうのだ。
 決してそんなことはないはずなのに。でも思ってしまうのだ。なぜか。

 かつてはあの濃度が当たり前だったのだ。物が増え、情報が増え、部屋が増え、扉が増え(場合によっては鍵も増え)、顔を突き合わせずともコミュニケーションが可能な方法が増え、濃度はゆっくりと薄められていった。けれどもその原液の名残はちゃんと残っているから、その部分が反応して感情を揺らされてしまう。

 号泣はしなかったけれど、3度ほど泣いてしまった。先の見える展開ばかりだというのに、それでも別にいいやと思っていた。かつて経験したことを、過去にタイムスリップして俯瞰的に覗き見しているようなところがあって、だからこそむしろお約束の展開になってくれと思っていた。そのほうが納得できたし、満足できた。どんでん返しとか予想外の展開を求めるような映画ではなくて、もしそうだったら逆に裏切られたような気持ちになったんじゃないかとさえ思う。かつて大切にしていたものを、思い返させてくれるような映画なのだろうなということだ。

 繰り返しにはなってしまうけれど、この作品で描かれていたものは、濃度こそ違えど完全に失っているわけではないと思う。そして濃度というものは、いくらでも変え得ることができるものだとも思う。


 ★★★
(★=1点、=0.5点。満点5点)。



―――――――――

 お知らせ

 東京タワーも建てられている途中の時期があったのですね。当たり前ですが、そのことが不思議だったりしたのでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』

2006年01月19日 | Movie

 オフィシャル・サイト

 サイトの説明文を読むと、この映画はピューリッツァー賞、エミー賞などを受賞した演劇の映画化なのだそうだ。
 しかも、グウィネス・パルトロウはイギリスでこの作品の演劇の方に主演もしている。満を持しての映画化というわけだ。

 映画は、天才数学者だった父親を亡くし哀しみにくれる女性が、その喪失から再生していく物語だ。
 天才ゆえに狂気にふれてしまった父親を見て、自分も同じように狂気を受け継いでいるのではないかと疑っているキャサリンは、父親が死んだ後、魂が抜けたような生活を送っている。ニューヨークに住んでいる姉が葬式のために戻ってきてキャサリンを引き取ると言うが、その申し出にも心が動かされない。大学も中退し自分の人生を犠牲にしてまで父親の面倒をずっと見てきたキャサリンは、深い哀しみに覆われているのだ。
 そして、父親の教え子だったハルは、父親のノートを毎晩のように見に来ている。天才の遺した成果があるのではないかと考えているのだ。
 やがて、ハルは数学の非常に貴重な証明が書かれたノートを発見する。しかし、その証明を解いたのは父親ではなく、キャサリンだった――

 というような話。グウィネス・パルトロウの演技が非常にうまかった。悲嘆にくれた、絶望した気難しい女性を過不足なく演じ、たとえば頬杖をついた姿勢が非常にさまになっていた。過去と現在のエピソードをミックスして配することで核心を最後まで引っ張る手法も効を奏していて、ラスト周辺で真相が明らかになるのもうまいという感じだ(演劇のバージョンでは、どうなっているのだろうとは思うけれど)。

 あんまりにも悲嘆にくれてしまった人は、まるでからまった糸のようになってしまっている。それを元に戻すためには非常に慎重に事を運ばなくてはならないし、根気も(少しばかりの)運もいる。けれども、決して不可能なことではないのだ。ひとつずつ、順番に道筋を辿っていけば必ずなんとかなる。そのときには最初に比べたら糸が弱くなっていたりするかもしれないけれど、それでも別の糸と寄り添わせることで同じかそれ以上の強さも持つことができる。たとえ、一本のままだったとしても、ぴんとはっていることが必ずしも必要ではないということがわかるようになっているかもしれない。

 いずれにしても、物語をたどることで、そういうことを信じることはできる。


 ★★☆
(★=1点、=0.5点。満点5点)。



―――――――――

 お知らせ

 あらためて書くようなことではないですが、グウィネス・パルトロウは芯が強そうな感じがします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『彼女を信じないでください』

2006年01月19日 | Movie

 オフィシャル・サイト

 それほど多くの韓国映画を見ているわけではないのだけれど、ラブ・コメディー系が多いような気はする。というか、韓国映画ではシリアスなラブ・ストーリー(『冬のソナタ』など)とラブ・コメディー(『猟奇的な彼女』など)がヒットしたので、似たような作品ばかりが多く日本に入ってきて目に触れる機会が多いだけなのかもしれない。
 個人的にはいかにもな設定の話が結構好きなので、詐欺師の女と気の弱い男のラブ・ストーリーという大まかなストーリーが面白そうに思えたのだけれど、ちょっと微妙な感じではあった。Mr.唐辛子コンテストのエピソードも笑えるのだけれど、さすがにどうなんだろう……とちょっと考えてしまったり。
 けれども、ヒロインのキム・ハヌルはコメディエンヌとしてはやっぱり実力があるのか、ユーモラスな表情を見せていた。お約束の展開も、俳優が魅力的だと結構許せてしまう(映画館だったら許せないかもしれないけど)。2時間のテレビドラマのようなゆるい映画だなと思いつつ、すべての映画が「総制作費○○億!」で「全米が熱狂!」「アカデミー賞最有力!」である必要もないのだとも思う。
 こういう肩の凝らないでも笑えて最後にちょっとじーんとくるような作品はどうしたって必要だ、たぶん。

 ★★
(★=1点、=0.5点。満点5点)。


―――――――――

 お知らせ

 韓国映画を見ていると、この俳優って日本なら誰にあたる人なんだろう? って考えたりしてしまいます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『きみに読む物語』

2006年01月18日 | Movie

 レンタルDVDで見る。
 評判を聞いていてものすごく泣けるのだろうなと勝手に思っていたのだけれど、個人的にはそれほどでもなかった。
 オチというか、ネタも途中でわかって、おそらくこうなるのだろうなと思ってみていたのだけれど、それもおおよそのところでその通りだった。
 もちろん、それがわかったとしてもよい物語であることは間違いないのだけれど。

 オフィシャルサイト

 17歳のときにアリーに一目ぼれしたノアは、その思いを生涯抱き続けることになる。令嬢であるアリーに、材木屋で働いているノア。身分違いの恋はアリーの親によって引き裂かれ、彼女を忘れられないノアは1年間毎日365通の手紙を書くが、それもアリーの手に渡ることはない。ノアを待ち続けたアリーもやがて別の男と出会い、恋に落ちる。
 老人ホームで、一人の老人が、痴呆症の老婆にその若い二人の恋物語を読んで聞かせている。その物語をどうしてか知っているような気がすると言いながら、物語の先を促す老婆。老人は穏やかな目で老婆を見つめながら、物語の続きを語って聞かせる。

 あらすじだけで、その物語の結末と、やさしい奇跡(のようなもの)がなんであるかはわかるだろう。
 とても美しく調和のとれた映画だった。一生、一人の人を愛し続ける人もいるのかもしれないなと思ってしまうくらいには美しい物語。
 川や、夕日や、ひと夏の恋のさまざまなディテールや、どこでもあるようなけれども特別なエピソードが、バランスよく配されていた。痴呆症の老婆を演じる女優の演技がとてもうまくて、目に光と知性がやどる前と後とでは同じ人なのに、まるで別人のように見えてしまって印象的だった。

『マディソン郡の橋』を超えたというようなことが引き合いに出されていたけれど、いまだに『マディソン郡の橋』にはそういう影響力があるのだと思うと不思議な気がする。

 それにしても、外国映画を見ているとよく恋人に詩を朗読する男が出てくるけれど、日本ではあんまり聞いたことがない気がする。それとも、みんな口に出さないだけで結構詩を読み聞かせたりしているのだろうか?

 ★★☆
(★=1点、=0.5点。満点5点)。


―――――――――

 お知らせ

 当らないだろうなと思いながらも、ワールドカップのチケット抽選に応募してしまいました。勝負どころの2戦目日本対クロアチア戦。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』

2006年01月10日 | Movie

 出張前に『フレンチなしあわせのみつけ方』を見て(個人的には)思いがけないヒットだったので、同じコンビ(実生活でも夫婦)の最初の作品である『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』をAmazonで購入してみた。それがポストの中に入っていて、8日22時過ぎに帰ってきて、いろいろとやって23時30分から早速見てしまうことにする。もちろん9日も朝から晩まで仕事なのだけれど、それでもこういうものには勢いが大切だと思って見ることにする。

 映画は、期待が大きすぎたのか、ものすごく面白いという感じではなかった。
 もちろん、笑ってしまうところもあるし、興味深く思えるところもあるのだけれど、それでもなるほどなあという感じ。ウディ・アレン的だという評判があったとのことだけれど、それは確かに納得できる感じだった。

 物語は、スポーツ記者のイヴァンが女優のシャルロット・ゲンズブールを妻に持つがゆえの幸せと悩みとを描いたもので、ワイドショー的な興味をかきたてられる設定。ただ、実際にはイヴァン・イタル自身も俳優で、しかもこの作品の脚本と監督でもあるので、生々しいリアルな話というよりは作り話の要素が大きいことがわかるのだけれど。

 イヴァンは、たとえば妻が他の男優とベッドシーンを演じたりすることに嫉妬を感じたりする。共演の俳優と寝ただろうと詰め寄ったりもする。また、街を一緒に歩いていると、妻がサイン攻めにあうことも面白くない。有名女優を妻に持つことは、なかなかにハードなようなのだ。
 それでも、2人は愛し合っている。出会いやら関係を深めていく様が作品中では省略されているので、2人がどのように愛を育んできたのかはいまいちわからないのだけれど、それでもお互いを必要としていることはわかる。愛し合っていることはわかる。

 でもまあ、嫉妬ややきもちのシーンが多いなあとは思うのだけれど。
 ただ、シャルロット・ゲンズブールはやっぱりとても魅力的。子供ができたと喜ぶシーンなんかはかなりいい感じの笑顔だ。夫の作る作品に携わっていることが、いい意味でプラスに働いているのだろうなと思う。
 主演の2人は、現実には10年以上も夫婦で、2人の子供もいるのだと思うといい夫婦だなあとなんとなく思ってしまう。

 また、映像のセンスがよい感じ。

 ★★☆
(★=1点、=0.5点。満点5点)。


―――――――――

 お知らせ

 DVDには特典がたくさんついているので、今度ゆっくり見ようと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする