「DIME」のCinema欄で「必見どころの騒ぎではない。これは何度見るかが問題となる、間違いなく今年最も重要な作品。これこそが本物の映画なのである。」と書いていて、そんなに言うのならと観に行ってきた。平日の夕方のシネマコンプレックス。客は全部で15人くらい。雑誌の評者は2人いて、一人は満点の☆5つ。もう一人が☆4つ。
映画史的に言うと”ゾンビ”シリーズの20年ぶりの新作ということなのだけれど、個人的にはそれまでのシリーズをひとつも観ていないので比較することもできないし、思い入れもほとんどない。ただ、確かに「リアルな残酷描写の中に強烈な風刺や社会批判を込めた社会派SF」というのはある程度納得できるものではあって、貧富の差であるとか、そこに鬱積するある種の怒り、行き場のない集団などがモチーフとして印象的に配されていた。
物語の舞台は、ある日突然死者がゾンビとして蘇り、食料として生者を食べるようになった世界だ(こう書いてみると随分とひどい未来だ)。大都市のいくつかはバリケードを築きゾンビの進入を避けるようにした街をつくり、その街の中でも貧富の差によって居住地域が異なっている。富める者は高層ビルで享楽の日々を過ごし、貧しき者はスラム化した地上や地下で不便な生活を強いられている。
主人公たちは、金持ちのためにバリケードの外側の街から食料の残りを強奪してくる仕事をしているスラムに住むメンバーで、改造された装甲車に乗りゾンビの群れの中に飛び込みつつ仕事をしている。
街の外側ではいつもと同じようにゾンビたちが怠慢な動きで徘徊している。けれども、主人公はゾンビたちの様子が普段とは微妙に異なっていることに気が付く。うめき声をあげて、コミュニケーションを取っているのだ。
ゾンビたちの進化は、やがて武器の使用にさえ及び、知能の発達したリーダー格のゾンビに率いられた軍勢は、人間たちの住む街を目指して行進をはじめる。
一方、主人公の弟分はこれまでの貢献を条件にスラム街からビルへの移動を求めるが、街の実力者にそれを断られ、なおかつもう用済みだと命も狙われる。なんとか逃げおおせた弟分は装甲車を奪い、実力者に反旗を翻す。テロリストと化し、ロケット砲でビルを破壊すると脅し大金を要求するのだ。
その少し前に主人公はちょっとした事件に巻き込まれ投獄されており、解放の条件として弟分の逮捕を仕事として請け負うことになる。実力者は自らの手を汚すことなく、相変わらず主人公たちに泥をかぶせようとしているのだ。
主人公はビルの破壊を阻止するために装甲車を目指し、知恵をつけたゾンビたちはバリケードを超えてビルを目指す。
PG-12の作品であり残虐描写が目立ったけれど、シルエットになっているケースも多く、気持ち悪くはあったけれど怖くはなかった。パニック映画としてよくできていたし、何かを守るために必死になっていて、いわゆるゾンビ映画としてのお約束をちゃんと守っている作品なのだろうなと思う。
ただ、個人的にはそれほど入り込むことができなかった。基本的にホラー映画やスプラッター映画があまり好きではないので、お約束がよくわからなかったせいかもしれない。
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お知らせ
最近は予告編を観ていて面白そうな映画が多く、楽しみだったりします。