『考える技術』読了。大前研一著。講談社。
裏表紙側の帯にはこう書かれている。
「これからの時代 論理的思考がなければビジネスマンとして生き残ることができない。」
本書では変革のスピードがますます早く、不確実性を増していく複雑系の社会において、必要なものは知識や過去の成功体験ではなく、論理的思考能力であると看破している。この人の本ははじめて読んだのだけれど、昔の上司が愛読していて、読んでみた方がいいと薦められていた。そして実際読んでみて、確かに上司が好きになりそうな感じだと思った。
論理的思考のための科学的アプローチであるとか、現場主義的にフィールドワークを重視することであるとか、著者の思考のプロセスのようなものが明らかにされていく。それは猛烈なバイタリティと卓越した問題意識、あるいは旺盛な知的好奇心に負うところの大きなものであり、誰もが真似できるものではないし、そうしようと思っても難しそうなことではある。
けれども、その旺盛なスタイルの中には参考にできる部分も少なくないし、取り入れる努力をするべきこともたくさんある。
いずれにしても、ポイントとなるのは現状を否定することからはじまる思考であり、その思考を思い付きの羅列ではなく仮説と実践的な検証に裏打ちされた強固なものへと具体化させていくことである。その飽くなき繰り返しのなかで、ある種の結論に行き着くまでの時間を短くしていくことができるようになり、その論理的思考のスタイルが血肉となっていくというわけだ。
印象に残ったところ。
具体的に今の仕事に役立つ思考トレーニングの題材として、最適なものを紹介しておこう。それは「自分が二階級上のポジションにいたらどうするか」を考えることだ。どの企業も、さまざまな問題を抱えているはずである。今、あなたが係長だったら部長、課長だったら取締役の立場に立ってみて、「自分だったらどうやってその問題を解決するか」、それを徹底的に考えてみるのである。(47ページ)
現実の社会では誰かが何かを買っているし、それを買うときには何か理由があるはずだ。まったく理由もなく買うときには、どこのスーパーの棚にも並んでいるか、いつも行く店ではそれしか売っていないかのどちらかである。こうしたことも含めて、すべての問題には原因があり、その原因をよく理解すると、説明できることと説明できないことが出てくる。もし説明できないことが出てきたら、そのときこそがチャンスだ。
説明できないことが出てきたら、「それはなぜか」という質問ができる。そうやってどんどん質問紙、理由の理由、原因の原因を見つけていけば、これまで誰も言っていないような結論に到達することができる。とくに最近は、そうした事例が非常に多いのである。(154~155ページ)
まず第一に、「teach(=教える)」という言葉が禁じられているのだ。教えるということは、答えがあることを前提としている。だからこれらの国々では「learn(=学ぶ)」を使うのである。
デンマークに行くと、「一クラス二五人全員が違う答えを言ったときが最高だ」というほどだ。子供たちが学び取るという考え方が基本で、テキストには「学校には答えを教える権利はない。学ぶ権利を支援するところが学校である」と書かれているのである。(168ページ)
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新刊だけあって例として挙げられているエピソードもカネボウ問題や金原ひとみ、iPodなど、旬な話題が多く読みやすいのです。