Sun Set Blog

日々と読書と思うコト。

親善試合観戦

2005年07月31日 | Days

 先週の水曜日、味の素スタジアムまで出掛けて行き、レアル・マドリード対ジュビロ磐田の親善試合を観に行ってきた。
 レアル・マドリードはスペインの名門チームで、銀河系集団と称されるくらい世界的なスーパースターを数多く擁している。
 たとえばジダンがいて、ロナウドがいて、ラウールがいて、ベッカムがいる。他にも最近は控えに回ることが多くなっているけれどフィーゴもいるし、オーウェン、ロベルト・カルロス、そしてカシージャスなどビッグネームばかり数え上げればきりがないチームだ(先日もセレソンの次世代のエースロビーニョの移籍が本決定したし)。

 個人的にはそのタレントたちの中でも、とにかくジダンのプレイを見たかった。ファンタジスタと呼ばれるのが相応しい活躍を見せてきたジダンも寄る年波には勝てないし、いいプレイを見ることができるなら今年がチャンスだと思っていたのだ。それに、以前一度フランス代表の試合を観戦したことがあるのだけれど、そのときにはジダンは怪我で欠場し観ることができなかったのだ。今度こそは、という気持ちがあったのは事実だった。だからこそ、僕のいま住んでいる街から東京までは結構距離があるというのに、チケットを取ったのだ。3人で観に行ってきたのだけれど、他の2人もやっぱりジダンが一番楽しみという話をしていた。UEFAの投票でも50年間の最優秀選手に選ばれていたくらいだし魅せられるという感じがすごくするのだ(たとえば昨年のEUROのイングランド戦の逆転劇などもそうだ)。

 ところが、ジダンはまたもや欠場してしまっていた。月曜日に行われていた親善試合第一戦のヴェルディ戦で怪我をしていたのだ。これにはかなりがっかりした。試合前の練習でグランドに姿を現した選手の中にいないなとは思っていたのだけれど、その後のスターティング・メンバーでも名前を呼ばれず、かなり残念な感じだった。まるで、ジダンの生プレイを見ることができない運命なんじゃないかとオーバーに思ってしまうくらい。これは本当にスペインに旅行してリーガ・エスパニョーラを観に行かなくてはならないのかも……と思ってみたり。

 それでも試合自体は魅力的なゲームだった。もちろん、レアル・マドリードは親善試合ということもあってリードを奪うたびにリラックスしたようにきれいなパス回しサッカーを魅せていたけれど、それでもそのレベルの高さは見ていて気持ちがよかった。クロスチェンジは正確だし、ジュビロだって決して弱いチームじゃないのに、狭いエリアで次々と短いパスが通る。また、決定機での個々のタレントの瞬発力。特に試合終了間際のロナウドのシュートは、世界的なストライカーの動きを実感させるものでもあって見応えがあった。

 また、お約束で面白かったのがベッカム人気。たとえば6月に観てきたユベントス戦と比べると、明らかに若い女の子の比率が高く、画面にベッカムが映るたびに、「ベッカムー」の黄色い声援があちこちで起こる。でも確かに遠目にもベッカムは格好良く、見た目に反したハングリー精神溢れる精力的な動きも相変わらずで、さすがという感じだった。

 電車を乗り継ぎ、帰りはまたもや0時を過ぎてしまったけれど、それでも観に行ってよかったと思う。


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 お知らせ

 秋以降は横浜に引っ越すので、もっといろいろと観に行けるかなと楽しみな感じです。

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The second

2005年07月23日 | Days

 今日の夜は久しぶりに『猟奇的な彼女』のDVDを見た。とても好きな映画で、たぶん5回目か6回目くらいなんじゃないかと思う。
 見ていない映画がまだまだたくさんあるというのに、同じ映画を繰り返し見るのもどうなのだろうとは思うのだけれど、それでもときどき無性に見てみたくなるのだ。
 ストーリーはしばらく見ていないと細部は忘れてしまうけれど、それでもほとんどわかっている。笑いあり涙ありの、ちょっとベタなくらいのラブストーリーだ。お約束過ぎる展開だって、狙いすぎのところがなくもない。

 それでも、繰り返し見ても楽しく見ることができるのだ。笑えるし、切ないシーンはちゃんと切ない。そして、実際に繰り返し見る作品というのはとても少ないのだということを見終わった後で思う。(個人的に)感動するようないい映画を観ると、これは時間をおいてもう一度見ようと思う。しみじみと見終わったばかりの物語を振り返りながら、この感動をもう一度追認しようと考える。感動した直後ということもあって、結構強くそう思っている。それでも、実際にもう一度見る映画というのは本当に非常に少ないのだ。少なくとも僕はそうで、映画でも(あるいは本でも)2度目を見ることや読むことは少ない。それは他に見たい(読みたい)作品がたくさんあるからだし、人生の中で知り得ることができる物語には限りがあるのだとどこかでは焦っているからなのかもしれない(どんなに焦ってもすべての物語を見ることはできないし、読むこともできないというのに)。

 けれども、だからこそ本当に気に入って何度も見たく(読みたく)なる物語というのはとても大切なものだと思う。人生の中で、そんなふうに思い入れを持つことができる物語があるということだけで、それはやっぱり確実に幸福なことなのだと思うし。

 たとえば映画なら、『レオン』も定期的に繰り返し見ている。レオンとマチルダの心が触れ合っていく様を見ているだけで、行き着く果てを知っているだけになおさら痛く感じる。それは2度目に見たときに感じたことだった。1度目のときには最後の結末を知らなかった。物語に引き込まれ感情移入し、だからこそ結末には様々な感想を抱いた。そして2回目に見たときには、最初から結末を知っていた。そうして物語に入り込んでいくと、なおさら一瞬の触れ合いのようなものが切なく感じられたのだ。そんなふうに、2度目を見たときにはじめて強くなる感情もあるのだということは不思議だった。ひとつの物語を、2度目に見るときにより強調される感覚があるということにまるではじめて気がついたみたいに驚いていたのだ。

 でもそういうこともあるのだと思う。僕は(あるいは僕らは)物語に触れるときに、どうしても主観のフィルターを通してしまう。そしてそのフィルター越しに見ると、気がつくことのできないことがあまりにも多いのだ。もちろん、すべてに気がついていなくても物語の筋を追うことはできるし、感動することもできる。それでも、2度目、あるいは3度目に見たときにはじめて気がつくこともたくさんあって、そんなふうな物語の楽しみ方もあるのだと思う。はじめて見たときには気がつくことのできなかった感覚。あるいは終わりを知っていることではじめて抱くことのできる感覚。そういったものも確かにあるのだ。

 もちろん、その物語と再び触れ合うタイミングというものもあると思う。よく言われるように、最初に見たときにはいまいちぴんと来なかったのに、数年後に見たときにはどうしようもないくらいにうたれてしまった、というようなことだってあるのだ。だからそれは偶然で、ある種の縁のようなものだ。だからこそ、そういう物語との縁は大切にしたいと思う。できるだけ素直なニュートラルな心持ちで、物語を物語として感じることができるように、素直に入り込むことができるようにしようとあらためて思う。気がつくとついつい先入観を持ってしまうから、なかなかそれは難しいことだし。


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 お知らせ

 たまにすごくPizzicato Fiveが聴きたくなるときがあるので、iTunesで聴いていました。すぐ検索できるので、やっぱりとても便利ですね。

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『死神の精度』

2005年07月21日 | Book

『死神の精度』読了。伊坂幸太郎著。文藝春秋。
 不慮の死を遂げる人間の観察調査を生業とする死神が主人公の短編連作。通常の寿命と突然の死とはまた別物で、無作為に選ばれる余命一週間の人々。死神はそんな彼ら(彼女ら)を調査し、本当にその人を殺してもいいのかどうかの判断を下す。担当の死神が「可」と報告をすればその相手は何らかの事故に巻き込まれるかして死んでしまうのだ。
 そんな、一風変わった設定の死神が主人公だ。人間にそれほど興味も持っていないクールな死神は、不思議なことに「ミュージック」が大好きで、その仕事をするために人間界にいる間、時間を見つけてはCDショップの試聴機で音楽を聴いてはにんまりとしている。また、いわゆる比喩やレトリックをすぐに理解することができなくて、人間たちとの会話はどこか奇妙にズレていく。人間界に仕事として舞い戻るたびに、そのときの担当の人間に合わせた容姿に変わる死神は、外見は変わっていたとしてもそれぞれのエピソードのなかで同じように淡々と仕事をこなしている。
 ある短編はヒューマン・ドラマのようであり、ある短編はミステリー風味が効いている。また、ロード・ムービー風の雰囲気を醸し出している短編もある。それぞれのエピソードが小気味よくまとまっていて、ユーモアとウィットのある会話と、とても読みやすい文章とがページをどんどんと手繰らせる。
 この著者の本をはじめて読んだのだけれど、とても巧い作家という感じがする。他にも多くの本を書いていて、あらすじを読んでいるととても面白そうな感じでもあるので、他にも手を出してみようと思う。


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 お知らせ

 引越しのことを考えるのは、いつだって愉しい娯楽のような感じです。

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『勝つ流通業の「一番」戦略』

2005年07月17日 | Book

『勝つ流通業の「一番」戦略』読了。ウイラード・N・アンダー、ネイル・Z・スターン著。島田陽介訳。ダイヤモンド社。
 ベタなビジネス書のようなタイトルと、表紙に書かれているガス欠のタクシーの絵がもうちょっとましな感じであれば、もっと多くの人に手にとってもらえるような気がする本。ノウハウ本のような感じだけれど、意外と骨太な中身で、流通業にとっては非常に重要なことが書かれている。   
 アメリカ有数の小売業コンサルティング会社のシニア・パートナーである著者たちは、これからの流通業は以下に挙げる5つの「ベスト要因」のいずれかで「一番」にならなければ激しい競走を生き残ることができないと述べている。そのベスト要因とは、

「安さベスト」
「品ぞろえベスト」
「商品のホットさベスト」
「買い易さベスト」
「買い物の速さベスト」

 の5つだ。そして、著者たちはこれらの要因のどれもがそこそこやまあまあの企業は淘汰されていくと断言している。集中と自社が狙う要因への専門家が非常に重要になってくるのだ。
 著者はそれぞれのベスト企業を具体名で紹介し解説しているのだけれど、挙げてみるとこうなる。

 安さベスト→ウォルマート、コストコ
 品ぞろえベスト→ホーム・デポ、ロウズ、アマゾン・ドット・コム
 商品のホットさベスト→ターゲット
 買い易さベスト→コンテナ・ストア
 買い物の速さベスト→ウォルグリーン

 日本に進出している企業もあればそうでない企業もあり、全体としては馴染みが薄いかもしれない。これらの企業がなぜベストであるのかを詳細に述べ、逆にそれぞれの分野で失敗した企業の事例も挙げておりそれが理解しやすい対比となっている。たとえば安さではKマートが、品ぞろえではトイザラスが槍玉に挙げられている。それは近年の米小売業の歴史を見ていくとなるほどと思えるようなことで、説得力もある。

 正直な話、流通業の仕組みであるとかシステムというのは実際の顧客にはわかられていない部分が非常に大きい。大掛かりな、あるいはささやかな仕組みが店舗の背後にはあるのだけれど、顧客にとってはそんなことがわからなくても欲しいものがすぐに見つかり、しかもバリューが高い状態で購入することができればそれでいいのだ。けれども実際に流通業で働いていると様々なことを考えなければならないし、仕組みがないと店舗を運営することもできやしない。そして、賛否両論があるのだけれどそういった仕組みを求めるのであればアメリカの小売業が一歩も二歩も進んでいるのが現状なのだ。

 もちろん、鈴木敏文がインタビューなどで事あるごとに言っているように小売業は非常にドメスティックなものであるのだから、アメリカの方ばかりを向いてノウハウを学ぼう盗もうというのも一面的過ぎる面はあるのかもしれない。たとえばウォルマートで扱っている商品の品質はトレード・オフされており、価格と品質のバランスは取れているが日本なら不良品といわれてしまうようなものもあるのが現実だ(ようは使えるけれど1シーズンで駄目になってしまうなど)。また、広大な土地を前提にした1層のローコストな店舗における不動産分配率と、日本国内の高い地価ゆえの多層階の店舗の不動産分配率を比較するのも酷な話だろう。

 それでも、やはり参考にしなければならない部分は非常に多いのだ。たとえば、ウォルマートは全米に1500店舗以上ある。ホーム・デポは1700店舗あるし、ギャップも1700店舗になる。それだけの店数を運営している仕組みやシステムには、やはり日本の小売業を凌駕する部分が確かに存在しているのだ。それに、世界で一番競争が激しいのも、アメリカの小売業であることも間違いないことであるし。

 そのアメリカの小売業の競争の中で、勝ち残りの条件を定義化してみせたことが本書の最大の特徴だ。安さはもちろん重要なファクターだが、すべての企業が安さを目指すべきではない。そんなことは当たり前のことなのかもしれないけれど、改めて具体例(成功例と失敗例)を挙げて説明されると非常にわかりやすい。それに、安さに関してはウォルマートを追随することは正直な話現実的に難しい(ウォルマートの年商は先日発表された「2004年度米小売業売上高」では288,189(百万ドル)だ。つまり、年間約30兆円の売上げを誇ることになる。ちなみに、日本の2004年度調査のトップであるイオンは4兆円の売上げ。8倍弱も違う)。
 戦略的にどの要因を目指すべきなのか、あるいは自社はどうなのかといろいろと考えさせられる本。
 密かな当たりという感じだ。


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 お知らせ

 やっぱりどうやら、秋以降冬前くらいに横浜市に戻ることになりそうな感じです。
 社会人になってから7つ目の部屋に住むことになるのでしょうか?

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something new

2005年07月17日 | Days

 先日東京に行ったときに、渋谷のタワーレコードに行ってきた。渋谷にはたくさんのCDショップがあるけれど、なんとなくいつもタワーレコードを選んでしまう。それはちょっとした刷り込みのようなものなのだと思う。音楽を聴くことが楽しくて仕方のなかった学生時代に、タワーレコードに代表される外資系CDショップは憧れの存在だったし、ちょうど洋楽にはまりだした頃にたくさんの輸入盤を扱っていたことは(金銭的にも)魅力的だった。それに、そのあまりにも有名なコーポレイトボイス「NO MUSIC, NO LIFE」はやっぱり魅力的な惹き付けられるようなフレーズだったし。
 地方のどこにでもいる高校生だった僕は、商店街のパパママストア的なCDショップを離れタワーレコードでCDを買うという行為自体にどこかで感動していたのだ。

 少しずつ年をとったいまは、当時のことを思い出すとなんとなく面白く思えてしまう。たとえば当時は東京に遊びに行くことは世界の中心を覗き見るかのような大イベントだった。人の多さに驚き、待たなくても次々とやってくる山手線に驚き、乗換えを間違えないように真剣に路線図を凝視していた(当時はiモードの便利なサービスはなかったのだ)。それから、たくさんの店に入っては雑誌でしか見たことのないような商品に驚いた。地方では観ることのできない単館の映画をどこよりも早く観て、見たこともないようなデザインの雑貨にほれぼれとし本気で感動した。いちいち驚きすぎて、ひとつひとつのことに意味を付けすぎて、帰る頃には随分と疲労していた。

 渋谷のタワーレコードがいまの場所に移転オープンしたときに訪れたときにも、同じように感動した。あまりにもたくさんの試聴機や、世界のタワーレコードのランキング、聴いたこともないアーティストがリコメンドされ(リコメンドなんて単語はそれまで見たことがなかった)、PVで使用された小道具が展示されていたりする。順番に試聴機で新しいアーティストを試しては、もし周囲に誰もいなければ口に手を当てて感動のあまり叫びだしそうにさえなっていたかもしれない。

 だから先日タワーレコードに入ったときにも、そのときのことを思い出していた。その日はDragon Ashの『夕凪UNION』の発売日で、販促のためなのかタワーレコードの店頭では浴衣姿の女の人たちが、CDの発売をやる気のなさそうな様子でアピールしていた。1階をゆっくりと見て周り、いくつかの試聴をして、それから2階と3階を見る。途中、SINGER SONGERのビデオクリップを観て、Coccoのあまりの表情にCDを持っているにも関わらず試聴してしまう。そして、いままでどれだけたくさんの見知らぬアーティストを、タワーレコード(あるいはHMVやVirginなどの外資系のCDショップ)で知ることができただろうと思う。
 そしてそれがどんなに素晴らしいことだったかとあらためて思う。

 また、それらの音楽は様々な場所とも結びついている。僕は20代を通じて転勤を繰り返し(いま住んでいるのは社会人になってから6つ目の部屋だ)、数多くの出張にも出かけていたけれど、そのためか多くの場所でタワーレコードに入った。札幌でも、仙台でも、千葉でも、東京でも、横浜でも、名古屋でも、金沢でも、京都でも、熊本でも、そして那覇でも。他の都市でも入ったけれど、改め考えてみると結構いろいろな場所でタワーレコードを訪れている。そしてたくさんのCDを購入したのだ。どこで何を買ったのかということは覚えているものとそうでないものとがあるけれど、それでもそれぞれが大切なアルバムになっているし、出逢うことができてよかったと思うような曲も少なくない。
 そういうのって、物や店や場所に関する思い出だけれど、それはそれでやっぱりとても大切なものだと思う。


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 お知らせ

 今月はもうひとつ楽しみなイベントがあるのですが、生ジダンを観ることができるのがいまから楽しみです。

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夜の風景2

2005年07月16日 | Days

 先日、学生時代の友人と東京で飲んできた。
 一軒目は友人が予約していた美味しいお好み焼き屋で、二軒目はその近くにあったショットバーのようなところ。神楽坂近辺だったのだけれど、はじめて訪れたその下町風の町は、新しいものと古いものとが混じり合っている雑然とした雰囲気が魅力的だった。僕にしては珍しくお酒をちょっと飲んで(それでもまあビール1杯とカクテル2杯だけれど)、午前0時過ぎまでいろいろと話していた。ショットバーの店内はもちろん暗かったのだけれど、道路に面して大きな窓が開いていて、しかも夏らしく窓は開け放たれていて、それもなんだか地方の夏祭りの夜に遊びに来たみたいな雰囲気を出していていい感じだった。窓際の角の席に案内され、昔話や仕事の話、最近読んだ本について、それから村上春樹やその子が最近はまっているという小川洋子について話した。
 その友人は学生時代から一緒で、卒業後も定期的に会っている数少ない友人の一人だ。僕が転勤族ということもあって、昔の友人たちとは軌道を外れた人工衛星のようにどんどん疎遠になってしまっているのだ。
 でも不思議な縁というかなんというか、その友人とは数年おきにチェックポイントのように会っている。就職して最初の2年くらいは帰省したときに札幌で会ったし、千葉に住んでいたときには留学の途中で戻ってきたその友人を、成田空港まで迎えに行ったこともある。そしていまでは東京でたまに会って飲んだりしているのだ。お互い30歳を過ぎて、東京で飲んだりしているのは随分と不思議なことのような気がする。
 いまでも交流のある学生時代の友人は公務員をしているメンバーが多いので、なおさらそんなふうに思う。

 0時30分過ぎ、中央線の終電にギリギリ間に合い、中野に住んでいる友人と代々木で別れる。ちょうど山手線の渋谷方面の最終電車がやってきて、乗り遅れなくてよかったなと思う。今回は渋谷のホテルに泊まっていて、だから渋谷に降り立ったのは1時少し前だった。

 終電が過ぎたはずなのに、渋谷のハチ公口のスクランブル交差点周辺には、まだまだたくさんの人がいた。もちろん、日中と比べると全然少ないけれど、この人たちはいったいどうやって帰るのだろうと思うくらいには多かった。そして僕はせっかくだから夜の渋谷を散歩しようと最初から思っていたので、てくてくと道玄坂をのぼっていく。呼び込みの人たちやナンパをしている人たちがいて、あまり雰囲気はよくない。けれどもまあ普通に歩いていく。呼び込みは無視して進む。

 Bunkamura通りにあるスターバックスに入り、カフェモカを飲む。午前4時までやっているその店には、外人ばかりのグループが大声で笑っていて、他にも様々な人たちが入ってきていた。僕は椅子に座って、道行く人をぼんやりと眺めていた。それなりにたくさんの人たち。たぶん朝まで渋谷にいるような人たち。薄着で、ときどきは腕にタトゥーをしている人がいたり、ドレッドヘアの人がいたりもする。スターバックスを出て、渋谷周辺をゆっくりと歩く。あるビルの入り口には跪いて祈りを捧げるようなポーズで、床に吐いているサラリーマンがいた。そのサラリーマンはほとんど動かずに、本当に熱心に祈っているみたいだった。その隣では、銃で撃たれたかのようなポーズで壁を背に座っている同僚らしき人がいた。そっちの人もかなり酔っていて、隣で吐いている同僚のことまで気がまわっていないみたいだった。本当はもっとたくさんの人がいて、ひどく酔っている二人だけ放置されたのだろうかと思う。でもまあ、じろじろと見るのもあれなのでそのままてくてくと歩く。すると、今度はまるでセレブのような白人女性3人組が舗道を並んで歩いてくる。ピンク色のドレスは胸元が必要の十倍くらい強調されていて、セクシーな感じで歩いていた。
 現実感のない光景。そんなふうに思いながらスクランブル交差点まで戻る。それから、駅前のQ-FRONTにある渋谷TSUTAYAに入る。午前2時までやっている6階の書店に行って、何冊かの本を探す。すぐに蛍の光が流れてきて、ゆっくりと探すのは諦めて数冊購入する(でも小ぢんまりしていてよい品揃えの書店だ)。
 それから午前2時を少し過ぎてからホテルに戻る。
 ホテルではノートに少しだけ書き物をする。そして眠る前に買った本の一冊をちょっと読み始めたら、気がつくと最後のページをめくっていて午前5時過ぎになっていた。やばいなあと思いつつ、厚いカーテンをあけて外が明るくなりはじめているのを確かめる。せっかくだからと、ホテルの廊下の突き当たりの窓のところまで行って、デジタルカメラで写真を撮る。早朝の渋谷の写真なんて、なかなか撮る機会もないだろうと思いながら。
 Q-FRONTにあるスターバックス(一時は世界で一番売り上げるスターバックスと言われていたけれどいまでもそうなのだろうか?)の明かりはまだついていた。スクランブル交差点には午前5時なんていう時間にも関わらずまだ人の姿があって、本当に眠らない街なのだなと感心してしまう。

 そして5時30分くらいに眠った。ホテルのチェックアウトが11時なので、9時には目覚ましをかけて。


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 15日まで少し早い夏休みをとっていたのだけれど、その間に読了した本と観た映画と買ったCDとDVD。

 本

『光の帝国』
『蒲公英草紙』
『六番目の小夜子』
『劫尽童女』
以上恩田陸。
『勝つ流通業「一番」戦略』ウィラード・N・アンダー、ネイル・Z・スターン著。島田陽介訳。ダイヤモンド社。
『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』勝見明著。プレジデント社。
『アマゾン・ドット・コム成功の舞台裏』ジェームズ・マーカス著。星睦訳。インプレス。

 映画

『50回目のファースト・キス』
『スター・ウォーズ エピソードⅢ』

 CD&DVD

『ばらいろポップ』SINGER SONGER。長野への旅行の行き帰りは、このCDをオールリピートでかけながら運転。2曲目の「ロマンチックモード」がいまのところ一番のお気に入り。
『初花凛々』SINGER SONGER。マキシシングル。初回特典でついているDVD「初花凛々」のビデオクリップとレコーディング・オフショットがどうしても見たかった……ちなみにCoccoがらみは映像がいつもいいなと思う。
『TP3 RELOADED』R.Kelly。
『DRAMATIC』YUKI。渋谷のタワーレコードで試聴をしていたら、あまりのキャッチーさにそのまま購入。
『ビフォア・サンライズ』+『ビフォア・サンセット』ツインパック。出ると思っていた2巻セット。


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 お知らせ

 スター・ウォーズは初期3部作を観ていないので、これから見るのが楽しみです。

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2泊3日

2005年07月10日 | Days

 その旅館は、人里離れた山の奥にあった。
 市街から約30分。突然降り始めた雨の中、車がすれ違うのに苦労するような細い道路を延々と登っていくと、「本当にこの道でいいのだろうか?」と不安になる頃に小さな駐車場が目に入る。ようやく着いたと思い車を停めようとすると、旅館の方から急いでやって来た人が「ここじゃ雨に濡れてしまうので入り口前まで車でどうぞ」と言ってくれる。それで、駐車場からほんの少し坂道を上ったところにある旅館の前まで車を入れる。するとすぐに別の人が雨に濡れないように傘を差し出してくれる。「ようこそお越しくださいました」とか「突然雨が激しくなって」というような言葉をかけてくれる。
 そんなふうにして、旅館に到着したのだった。

 それから2泊3日。周囲の山道とダムへの道を散歩した他は、ほとんど建物の中にいた。その間にしていたことと言えば美味しいご飯を食べることと、温泉に入ることと、本を読むこと(のろのろさんのBlogで紹介されていた『光の帝国』と『蒲公英草紙』を読了)。そして、文章を書くこと。それからゆっくりと眠り、珍しくお酒も飲んだ。携帯も通じない山の中で、すぐ前を流れる渓流の音だけがずっと聴こえていた。川の音と、何度か降った雨の音(山の天気は本当に変わりやすい)、いずれにしても、水の流れる音ばかりが聴こえていた3日間だった。

 夏休みの連休をとることができたとき、最初は海外旅行に行こうと考えていた。まとまった休みなんて年に何度も取れるわけではないし、そういう機会をぜひ活かそうと目論んでいたのだ。けれども長い時間飛行機に乗るのはしばらく避けたいなと思うようになり、だったら国内旅行に行こうと思うようになった。行きたい場所はたくさんあったのだけれど、やっぱり国内旅行なら温泉に入りたいなと、温泉でのんびりゆっくりしたいなと思うようになった。

 けれども温泉旅館というのは一人旅にはあんまり適さない。大体の旅館は2名からの料金設定しかされていないことがほとんどなのだ。それで、ネットでいろいろと検索をする。そして見つけたのが今回宿泊した旅館だった。

 本当によい旅館だった。いままでそんなにたくさんの旅館を訪れたわけではないけれど、それでもその中では最高だと思う。何よりも料理が美味しかったし(連泊をしたので初日は懐石料理を、2日目はオーガニックフレンチを食べた)、4種類ある温泉もそれぞれ魅力的だった。そして旅館の人たちの押し付けにならず、かといって何もしないわけでもない絶妙な距離の取り方もとても感じがよかった。ミッションのようなものがちゃんと共有されて、それに即して行動しているのだということがよくわかるような。しっかりとした教育が施されているような。

 料理はリンク先の料理のページを見てもらえればわかると思うけれど、野菜がこんなに美味しいなんてと思ってしまうような味だった。味付けはむしろあっさりしているほどなのに、野菜の味が立っているのでとても美味しく感じるのだ。肉も、もちろん魚も美味しかったけれど、白眉はやっぱり野菜だった。普段そんなに野菜を美味しく積極的に食べているわけでもないのに、それでも野菜ってこんなに美味しかったんだと感動してしまうくらいに美味しかった。
 その料理を食べるためでも、行く価値があると思う。

 世間的な夏休み前の平日だったせいか、館内は結構空いていた。しかも男性の宿泊客は少なかったのか、温泉に何度も入ったのに、基本的には一人きりの貸しきり状態ばかりだった。大きなお風呂を独り占めすることができるのはとても贅沢な気分で、リフレッシュが目的で来ているので、その目的は充分すぎるほど果たされてしまった。また、連泊だったので、チェックアウトとチェックインの合間の時間に館内を散歩していたのだけれど、てきぱきと部屋の掃除をしていたり、廊下の花をかえているのも見ることもできた。廊下の様々な場所にそれぞれ意趣を凝らした花が活けられてあったのだけれど、それらもちゃんと日々変えていたのだ。

 アロマテラピーの施設もあるので、女の人にはより愉しめる場所なんじゃないかと思う。
 観光とかじゃなく、とにかくのんびりゆっくりとしたいという人には、とても魅力的な場所だ。


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 お知らせ

 急遽明日出勤になってしまったのでした。リフレッシュできたので全然いいのですけど。

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名前

2005年07月05日 | Days

 東京に住んでいる学生時代の友人からメールが来て、北海道に住んでいる学生時代の友人に子供が産まれたと書いていた。
 女の子で、名前がまたとても可愛い。
 最近は昔なら考えられなかったような名前がたくさんあるけれど、その子の名前は変わっているのだけれどそんな突飛な感じではなくて、それはやっぱり友人の欲目だからかなとか思ってしまう。でも趣味のよいその友人らしい、シンプルでいながらも思いがけず魅力的な響きのある名前で、名付けにも趣味のよさのようなものはあるのだなと思う。
 それにしても、最近の小学生は一クラスに一人も「子」とつく女の子がいないときさえあるのだという話を聞くと、驚いてしまうのだけれど他の人はどうなのだろう?

 明日からはじまる夏休みの連休では、東京に住んでいるその友人とも一緒にご飯を食べる約束をしている。その友人は新宿で働いているので、たぶん新宿で待ち合わせ。半年振りくらいに会うので、楽しみだったりする。ついでに東京で買い物をしようとも思っているので、それもまた楽しみ。


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 お知らせ

 週間天気予報では雨だったのですが、明日の目的地は曇りのち晴れになっていました。天気予報が外れていい感じです。

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帰り道

2005年07月04日 | Days

 今日は仕事が終わって車に乗り込んだのが21時30分くらいだった。小雨が降っていて、軽くワイパーを動かす。先日一年点検をしたばかりの車は別に前から問題がなかったというのに、点検をしてそれを追認しただけだというのに、なんとなく普段以上に安全なのだと錯覚してしまう。来週には車で旅行に行ってくるので、そのときの山道も安心だとさえ思ってしまう。自分のことながら単純で驚いてしまうけれど。

 近くの書店の駐車場に車を止める。仕事に役立ちそうな本を数冊と、雑誌と、小説を購入する。9000円くらいになってしまって驚く。その書店では店で働いているアルバイトの女の子が恋人と一緒に立ち読みをしていて(狭い町だ)、軽く挨拶をする。
 購入した小説はいままで読んだことのない作家のものなのだけれど、その旅行のときにのんびり読もうかなと思って手を出してみた。旅行先は温泉以外本当に何もないらしい場所で、天気予報も雨のため、連泊の2日目の日中なんて、本当に本を読むことしかできないような感じになってしまうと思うのだ。あるいは、雨の音を聴きながらうとうとするか、昼間から温泉に入るかくらい(それはそれでとても素敵だけれど)。

 夏休みはどうするんですかとメンバーに訊かれる回数が増えてきて、「温泉に行ってくるよ」とか「とりあえず癒されてくるよ」と言うと、「いいですねえ」という返事が返ってくる。個人的にもいいなあと思っている。何もしないことはとても贅沢なことだ(しかもその温泉は携帯電話も通じないらしい)。ただし、ぼんやりとしようと思いつつも、穏やかな場所で、これからの目標のようなものをもう一度ゆっくりと考えてみようかなとも実は思っている。さらには上に書いたように本も購入してしまったし、なんだかんだ言っていろいろとやろうということを詰め込みすぎているのかもしれない。貧乏性というかなんというか困ったものだ。さらに、iPodも持っていくし、ノートパソコンだって持って行く。結構地味に大荷物になってしまうかもしれない。
 でもまあ、いろいろ準備していっても結局何もしないで眠ってばかりでも全然いいのだ。そんなふうに気楽な気持ちになれることは、やっぱりとてもよいことなのだろうし。

 書店を出てから、近くのミスタードーナツに行く。無性にドーナツ(というかフレンチクルーラー)が食べたかったのだ。22時少し過ぎに着いたその店は23時閉店だったのだけれど、そのせいなのか客が1組しかいなかった。店員が3人。客が1組(2人)と僕なので同じ人数。流行のヒット曲がかかっていて(「1 Thing」がまたまた流れていた)、あと閉店まで1時間もないのに残ったドーナツはどうしてしまうのだろうとぼんやりと思う。結構、というかかなりドーナツが残っていた。捨ててしまうのだろうか、それとも明日に回すのだろうか。

 カバンの中から日経ビジネスを取り出してぱらぱらと読みながらホットコーヒーを飲む。僕は日経ビジネスを定期購読しているので、月曜日に発売するものが前の週の金曜日に届けられるのだ。それがちょっとした得に感じることで、バッグの中に入れて、空き時間や仕事が終わった後のファストフード店の中などで読む。特集は「JAL現場不在の咎」というもので、最近の不祥事続きを、現場と経営との乖離によるものだと記事を進めている。
 そう言えば、ここ2月ほど会社の出張の際の航空会社がJALからANAに変わっている。そういうのもちょっとした影響なのだろうか。

 閉店少し前に店を出る。雨は少しだけ勢いを増していた。雨の時にはより気をつけて運転をする。
 スピードは出さないし、結構安全運転なのだ。一応ゴールド免許だし。


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 お知らせ

 ミスタードーナツで35周年記念だというグラスをもらいました。

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