日本のコロナ禍は外交・政治戦略失敗の上に生じた半分「人災」である

2020-05-09 11:25:00 | 日記

「憲法改正をすべき」というメッセージが政府からこのタイミングで発せられたことには正直驚きを禁じえない。

 

その理由は3つあって、1つ目はこのロジックの背景にある「今断固たる対応ができてない=みなさんが苦境に陥っているのは現行憲法のせいですよ」というのが全くの誤り(というか論理のすり替え)であること。2つ目は政権への支持率が下がっている(半分も支持していない)このタイミングで憲法改正の必要性を訴える政治的センスのなさ。そして3つ目は大半の国民にとって、そういう吟味に時間もかかる「大きな話」の前に、目の前の生活を何とかすることが優先事項であることが理解できていないこと。つまり、正当性や中身の問題を横に置いたとしても、今回このタイミングで思い付きのように憲法改正を持ち出すのは、戦略的に完全な誤りだということである。

 

憲法改正発言の背景を見ると、要するに他の先進国でなされているロックダウンのような行為ができないのは現行憲法や法律に問題があるからで、皆さんそれで困ってらっしゃるから憲法を変えるべきですよね?というロジックである。これについては小林節が「失政を憲法のせいにするな」と喝破しているが、まさしくその通りだろう。

 

まずそもそも、今の日本の緊急事態宣言とそれに伴う苦境は、ロックダウンができないから「ではない」。そもそも中国からの渡航者などへの水際作戦に失敗したからであり、また感染者の感染ルートを緻密に追いかけ、その囲い込みを政府が最大限にバックアップする台湾のような仕組み(食糧デリバリー/生活費補償/違反した際の多額の罰金)を取らなかったからである。

 

ではなぜそうなってしまったのか?その背景を追って行くと、習近平を国賓として招こうとしていたことに行きつく。香港問題で国際的に轟轟たる非難を浴び窮地に立たされていた中国に対し、日本は習近平を国賓として招き、天皇と会見する予定を組んでいたのであり、その重大イベントが予定通り行われるべく(どこまで意図的かはさておき)コロナウイルスの問題を過小評価し、また問題を大きく扱うな/渡航制限するなという中国側の要請になあなあで応じてしまったのであった。

 

そもそも習近平をこのタイミングで招くこと事体が中国を利する行為でしかなく、安倍政権のタカ派的言動がしょせん「コスプレ」でしかないこと、そして己らの国際政治センスの欠落を白日の下に晒したという話はすでに2019年の12月段階で書いた。少し説明すれば、2049年に向けた中国の世界戦略(香港→ウイグル→台湾で取り込んでいくのと並行し、一帯一路と真珠の首飾り作戦を実施し、建国100年目で世界の覇権を取る)を理解していなければ、それを踏まえたアメリカの香港人権法という文脈も理解せず(つまり、これはひとり香港の問題ではない)、かといって中国側に乗り換えるわけでもないのにこのような動きを取ることは、戦略的思考・戦略的コミュニケーションを安倍政権が全くできていかなったことを意味する(なお、これに対して野党が何か具体的な批判をしているのを私は見たことがない。まあ日本の野党なぞその程度のお粗末なレベルであり、だからずっと安倍政権が続いてもいるのだ。なお、こういった外交センスのなさはWWⅠ後の国際協調ムードを満州事変でぶち壊した時のことを思わせるが、当時は震災恐慌→金融恐慌→世界恐慌という断続的に続いた恐慌の中で大きな危機を迎えていたし、2019年と比較するのはさすがに当時の人たちに失礼な気もする)。

 

このような愚行に固執してコロナ問題に迅速・慎重な対応ができなかった結果、日本にもコロナウイルスが蔓延し、その後はご存知の通り休校→休日の外出自粛→緊急事態宣言→宣言延長という流れである(そもそも現行憲法下においては、パンデミックが起こってもロックダウンのような強権発動ができないことを、一般市民ではない政権や官僚は知っていたはずであり、それを踏まえた対応をすべきだった。え?知らなかった??あっ・・・[察し])。つまり、今回の日本におけるコロナ禍は外交的失策の上に失策を重ねた半ば「人災」の側面が強く、その意味でも安倍政権の責任は極めて重い(そう言えば、リベラル勢力や反安倍勢力を揶揄する時に中国や韓国寄り=外患誘致だみたいなことをほざく言説が出てきたりするが、それだったら安倍政権の一連の愚行は「外患誘致」とやらにならないんですかねえw一応言っておくと、外患誘致は武力行使に限定されており、どちらの場合も当てはまらないのだが、要するに同じ基準で賞賛・批判せよという話である)。

 

というわけで、「失政を憲法のせいにするな」という発言は全くのところ妥当だと私も考えるわけである(まあ小林と私では拠って立つ根拠が同じではないだろうが)。ちなみに今回の憲法改正発言があまりに唐突なので、もしかするとどっかから何か言われて右から左に発言した可能性もありえる。ただ、そうだと仮定した場合でも、それは安倍政権が免責されることにはならず、むしろこの緊急事態において、そんな「内政干渉」に従ってしまう政権はやはりアウトという結論なわけで、どっちにしろ安倍政権に存続の価値が全くないのは変わらないのである。

 

なお、最後に投票に関して言っておくと、これからの生活を守るという意味で、野党に投票すべきである。「え?結局野党を応援してんのかよ」と思ったあなた、そういうことではない。今の政治を見れば如実にわかる通り、「どれだけ失政をやったとしても、どれだけ無茶なことをやってとしても、どうせ国民の大半はアホだからすぐ忘れるし、今を適当に誤魔化せば何とかなるぜ」と特に安倍政権からは思われている。かかる国政の結果として、国民の生活は大混乱が生じており、これからますます苦境が広がっていくであろうことは度々強調している通りである。そのような状況を変えるための行動が必要という話なのだ。

 

野党への投票がもしかすると自民党以外の政権を生み出し、それがあの旧民主党政権の悪夢を再来させる((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルとか考えてる人がいるかもしれないが、ほぼそれはないだろう。というのも、今もなお安倍政権を、あるいは自民党を支持する人間は決して少なくない。

 

これを踏まえると、「自民党への投票者は一定程度担保される」&「結局は自民党が政権を取る」という予測が成り立つわけだが、「だから投票しても無駄だ」と考えて棄権するのではなく、「それでも野党への投票率が増えることで政権与党に大きな危機感を持たせ、政権運営に反映させる」という目的で、(特に投票したい政党がなければ特にそうだが)あえて野党に投票するのである(安倍政権以外だったら今より上手くやれたのか?自民党以外の政党だったら??それは信用する根拠がなく、何ともわからない。しかし少なくとも、このような失政をすればどのような目に遭うのか、それを政治家たちに痛感してもらう必要がある、という話だ)。

 

ちなみにこれは私の思い付きでも何でもなく、55年体制で見られた、自民党が失政をした場合は野党に投票するという「お灸を据える」と俗称される行動だ。このような表現、あるいはこのような投票行動について、民主主義の本義に反すると憤る人がいるかもしれないが(というか私も言葉やその精神性は嫌いだ)、その「本義」とやらを重視して何にもならないのであれば、それは「無」と同じである。この苦境を改善するために必要なのはお題目ではなく戦略的行動であるし、また二大政党制の目標が失敗し、結局自民党一強となった今の政治状況においては、それなりに有効な投票行動(政府へのメッセージ)と言える。今の状況に掉さすためにも、一人一人の戦略的行動が必要だと言えるだろう。

 

え?そんなことを一々考えるくらいならもう自分が政治家になればいいんじゃないかって?ご冗談でしょうw衰退先進国の政治家目指すくらいなら、海外にでも移住しますわ(余談だけど、日本の文系最高峰である東大文Ⅰに行っても、そこから法学部に進学しない学生が増えている。つまり、そういうエリート達から見て、もはや日本の官僚になることは価値がどんどん下がってきているということである)wというか、それくらい危機的な状況であるし、さらにそれは深刻化していくことを腹の底から理解した上で行動すべきだ、という話である。


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