常識・倫理のアンチテーゼ~思考実験の一環として~

2007-03-06 23:41:41 | 抽象的話題
前回は真逆の肯定が常識といった一般的枠組み(以下「枠組み」)をかえって強固にすることを述べた。しかしそういった関係性ゆえに、「枠組み」とは真逆の枠組み・状態を想定してみることが「枠組み」の合理性などを考える際非常に有効である場合が多いのである(あたかも夜の闇が昼の光を際立たせるように)。以下、それについて記す。


其の1:焼肉屋の看板
まず軽い内容から。こないだ某駅の近くで焼肉屋の看板を見たのだが、そこには楽しそうに踊っている豚が描かれていた。「焼かれる豚が楽しそうに踊るわけねーじゃん」と半ば冗談で突っ込んだが、逆に考えてみると「苦しむ豚が描かれた看板」を掲げる焼肉屋に客は入らないのも事実ではある(物好きな客はいるかもしれんが)。


其の2:なぜ人を殺してはならないのか
一般的な人は、「人を殺すなんてそんな恐ろしいこと…」と考えており、それゆえ「なぜ人を殺してはならないのか」という疑問がそもそも湧き上がってこないと推測される。そのように全く疑われない基準のことを、さしあたって倫理、あるいは(危うい言葉だが、それゆえにあえて)普通と呼んでおくが、ともかくこういった基準は、自明すぎるがゆえに一端疑われてしまうと脆さを露呈することがある(酒鬼薔薇聖斗事件はその好例)。

ではここで、
「人を殺すことが全く問題とされない世界」
を想定してみるといい。そのような世界において、あなたはいついかなる理由で殺されるかわからない上に、あなたを殺した人間は何の罪にも問われないのだ。そういう世界がどれほど無秩序で居心地の悪いものかはすぐに理解されるだろう。このことから、「なぜ人を殺してはいけないのか」という根拠は、「本来的に備わっている倫理」といった理念的なものよりも、「無秩序を抑制するための社会契約」という実際的な理由に求める方がよほど説得力があると言えるだろう。


なお、「本来的に備わっている倫理」を信ずるならば、(少なくとも)これまで続いてきた戦争や残虐行為の数々が全て人間の本性に反するものであったことを証明する必要がある。もし証明できないなら、それは真理ではなく願望、あるいは神話と言うべきだ。


このような具合に、「枠組み」とは真逆の状態を考えてみることが、それを理解する上で有効なのである。前回述べた安易な「枠組み」の否定や(快楽による)真逆の肯定を避けるためにも、そのプロセスが非常に重要であると言えるだろう。
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4 コメント

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契約 (バイシ)
2007-03-07 02:50:14
そうですよね。一般的に(すなわちあらゆる場合に)殺人が否定されているわけではありませんものね。戦争ではたくさん殺した方が賞賛されるわけですし、日本では死刑制度によって合法的に(日本は憲法で社会契約論にのっとた国家であることを宣言しているので、合法的にとは日本国民の契約の履行のうちにということになります。)殺人が行われているのですから。
だから、普段の生活で(という限定的な場面で)人を殺してはいけない理由はギーガさんのおっしゃるとおりでしょう。
私は死刑廃止論にくみしていますが、いまのところは
日本では死刑は実施されています・・・。

ひさしぶりのカキコです。よろしく。私のHPでもブログ始めたんですが、全然続けられませんでした。ギーガさんがまめな方であることがよくわかりました。(それとも私が飽きっぽいだけ?w)
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司法殺人 (ギーガ)
2007-03-08 01:17:50
生きる資格が無いと思うような犯人がいるということが、そのまま彼らを処断するシステムの正当性には繋がらない、とは考えています。ただ、今のところ私にはこの方面の体系的な知識が不足しており、今後機会があれば勉強したいところです。

なお、「なぜ人を殺してはいけないのか」に対する答えは、「無秩序を抑制するための社会契約」が最終結論というより、これを一つの段階として色々考えていくべきだと考えています(だから思考実験なわけですし)。

ブログの継続性に関しては偏に私の異常さに拠っていると思いますよ。何しろこれだけ書いても、手元にある覚書だけで100近くネタありますからwむしろ上げないとパンクしそうな感じですね。
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看板 (バイシ)
2007-03-10 00:04:56
そういえば、大学の近くの焼肉屋の看板にはコックの格好をしたブタが描かれています。
それを見るたびに、「お前は調理されるほうだろう!」と内心激しくつっこみをいれていましたw
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Unknown (ギーガ)
2007-03-12 00:54:03
そういうのって結構ありますよねw
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