「一億層突っ込み」の不毛さとそれにお墨付きを与える連中の共犯関係

2016-04-30 17:48:10 | 生活

熊本地震に関する自粛やそれを求めるムードのバカバカしさは何度か言及したが、被災地への励ましコメントに対して「不謹慎だ」と書き込みをしたり、被災地支援をする芸能人らに「売名行為だ」と書く連中が少なからずいるらしい。このような不毛なコメントは相手にするのもバカらしいレベルだが、とりあえず後者については現地にとっては動機づけはどうでもよく具体的な支援こそが重要で、それを抑制しかねない書き込みをするのは被災地にとって害悪そのものなので止めていただきたいということである。それをやっている人間があなたの嫌いな人であったり、もしくはそういう行為でその人が嫌いになったのなら、個人的にその人へのアクセスをやめればいいだけだ(しかしそれにしても、条件反射のような短絡的突っ込みはまさに「幼児的」と言わざるをえないお粗末さである)。

 

とまあうんざりするような話であるが、こと自粛ムードに関しては、呆れることに精神科医のセンセー方が「共感」がどうとか「サバイバーズ・ギルト」がどうとか言っている記事をいくつも見かける。つまり大変な状況にある人がいるのに、自分が楽しむのに罪悪感を持ったりするのだそうな。一見すると正しそうに思えるかもしれないが、これは色々とおかしい。

1.自分が楽しむのに罪悪感がある

それは自分自身の問題なので、自分がそういうテレビ番組を見なければいいだけの話である。例を挙げよう。自分が恋人からフラれて落ち込んでいる時に、あるテレビ番組が恋人同士がイチャイチャするシーンを放映しているのでふざけんなと思って自粛しろ!と叫んでも誰も聞かないだろう。それと同じである。

2.だって苦しんでいる人がいるでしょ?

ではそういうアナタは被災地熊本より発信された情報をそれなりの分量チェックしたのか?そしてその中にそれなりの数の不快を示す記事やらコメントやらを発見したのか?それに基づいて批判や主張を行っているのか?少なくとも私自身は、そういうエビデンスあっての自粛を求める記事は一個も見たことはない。だとすれば、勝手に相手の状況を妄想して語っているだけか、自分の中のムード(つまり前述の1)を勝手に被災地の人間に忖度して語っているだけじゃないの?

という風に、たちどころに反論ができる。要するに、1は個人的に楽しむ気がしないのであれば個人の自由としてアクセスしないことを選ぶか、もしくは何かしら書くとしてもそれをそのまま表明すればよい。2は、他者ないし一般的なことを語っているようでいて、その実自己を他者に仮託しているだけで、厳しい言い方をすれば自分の感覚を正当化するために他人をダシに使っているだけである(ちなみに、他者のために動いているようでその実他者不在という点では、特に調査もせず被災地に乗り込み現地でお荷物になるボランティアたちも同じである。彼らは被災者の救済ではなく、個人の善行やそれによる達成感のためしか動いていないし、下手をするとそのことに気づかないまま害悪をまき散らすのである)。

 

以上要するに、自粛の要求は、現地の反応を検証した上でなされたものではない被災者・被災地=他者のものであり、そこへ勝手に自己の不快感や違和感を仮託してなされたものだと評価せざるをえない(目に見える形で声を上げていない=実際に皆無とまで強弁するつもりはないが、仮にそこまで想定した対応をせよと言うのなら、そのレベルで自粛をせねばならない合理的な理由説明をする責任くらいはあるだろう)。このような程度の低い反応に対し、「共感」などと益体もないお墨付きを与えるのは、自粛を促す側を勢いに乗せ対応する側が反論しにくくなるだけ=有害無益なので止めたほうがよいだろう(このような「共感」の使われ方については、すでに何度も批判したことがある。ちなみに、精神科医のお歴々がのたまうありがたいお話は、「なぜ自粛を促すムードには抗いづらいのか?」という理由説明にはなる)。というか、仮にも専門家ならケーススタディをしてもっと掘り下げた議論をすべきで、表面的な反応を見てコメントするのは程度が知れるので避けた方がよいと思うがいかがだろうか。でもまあ会ったこともない犯人にあれこれ精神分析を施してそれらしいコメントを話す精神科医の方々も多いので(ちなみにこれは犯人を「理解」しつつその異常性を炙り出して自分とは無関連化し、その結果安心しようとする視聴者=俗情との結託でもあるように思われる)、まあ彼らも条件反射みたいに語っているだけなのかもね。

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