サイゼリア談義:オリジナルか否かはもはやどーでもいい

2018-05-07 12:18:23 | 日記

GW最終日は木場でのバーベキューに参加。その延長戦をサイゼリアで行ったが、そこで出た話を断片的に書いてみようと思う。

 

AIのディープラーニングについては、将棋や囲碁でなぜAIがここまで強くなったのか?といった報道などで耳にしたことがある人が大半だろう。ディープラーニングとは、ざっくり言えば「高精度なパターン解析」なのだが、これが芸術に応用されるとどうなるか?たとえばラファエロの絵画をパターン認識したAIは、その特徴を精密に模倣・表現できてしまうのである。

 

もちろん、こうしてできたものを「イミテーション」として忌み嫌う人もいるだろうし、また絵画の真贋を鑑定する人間にとってはある程度見抜けてしまうものかもしれない。しかし、その模造品を作るレベルは日進月歩で成長し、いずれ見分けがつかなくなる可能性が極めて高い。

 

それでも、人はオリジナルに固執するものだろうか?私はそれに大いなる疑いをもっている。

 

たとえば以下のような例を思い浮かべてみるとよい。私たちは学校や職場の備品を明日も同じものだと認識する。しかし実際には、全く変化していないのではなく、それこそ分子レベルの微細な変化を私達が感知できないだけのことだ(この事例がわかりにくければ、近所に生えている木などで考えてみてもよい)。とはいえ、だからといってこの指摘を重く受け止め、その後から微細な変化に気づけるよう人は努力などするだろうか?むしろ「なるほど確かにそうかもしれないが、よくわからないしどうでもいい」と思い、相変わらず変化を気にしようとしない生活を続けるのではないだろうか?

 

ディープラーニングによって高度に模倣された芸術作品というのもそれと同じようなものである。つまり、オリジナルとの違いがわかる人間というのは絶無へと近づいていき、いずれは、たとえその真偽が判定されても、その結果を大して気にしない人間が増えていくのではないか、ということだ。

 

私が以前天然と養殖の事例で話したのは以上のようなことだが、これは性愛についても当てはまるように思われる。というのも、「恋愛しない若者たち」「結婚しない男たち」、「日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない」など様々な著作で言われていることだが、生身の(特に継続的な)性愛関係にコミットしない人間が増え続けているそうだ。

 

もちろん、世にはAVも、エロアニメもエロマンガも、恋愛ゲームも相変わらず存在しているから、性愛関係そのものがどうでもいいという人間が必ずしも増えたわけではなく、生身の他者へのハードルが上がったり、それに期待しない人間が増えてきているのだろう。その中で、VRが典型的だが、人間のイミテーション表現については急速に質が向上している。つまりは、下がり続ける生身の性愛関係と、上がり続けるバーチャルな(疑似)性愛関係という現状があるわけで、その変化の様はあたかも需要供給曲線のグラフのようだ。

 

かかる状況において、現実・生身の性愛からは距離を置き、イミテーションの世界に没入していく人間が増えるのは必然であり、あくまでヴァーチャルでないものを「真」として旧来の性愛関係に留まろうとする傾向・人間は「趣味」の問題として少数化していくことだろう(ご存知のように、今でもピアッシングやタトゥーなどによってあえて身体性を取り戻そうとする動きが一部にはあるのだから)。しばしば指摘される日本の異物に対する同一化傾向は、この場合前述のベクトルを強化する働きをするかもしれない(その意味で、「her」「ブレードランナー2049」ではないが、欧米では一定の歯止めがかかる可能性がある。善悪の問題は別にして。)。

 

出産と育児はどうするのかって?解決方法としては、今とは比べ物にならない出産・育児手当(強力なインセンティブ)を該当者に出すか、あるいはプラトンの「国家」みたいな形で管理するしかないのでは?それはもう人間的社会とは言えないのでは?などと「べき論」を振りかざすのは自由だが、このままいくと社会は明らかにそっちの方面に進んでいくので何とか真剣に掉さす方法を考えた方がいいんじゃないか、と思う。ただ、それにしたってアンチエイジングの発達で半ば不老となっていくと人口増加を止めないといけないので、そもそも出産が世界にとって+の状態がずっと続くのか、という疑問が大いにあるのだけれども(まあ労働時間は減りこそすれ増えないだろうから、育児にかけられる時間はあるだろうけど。まあその場合は今でもあるような育児ゲームが精密化されてニーズを満たすのかもしれないね)。

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