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【Heartland(心の国)はここに】―Field of dreamsが叶えたこと―⑤

2021-04-10 06:00:00 | 【Field of dreams】
ーその(1)ー

そしてレイにつづきます。レイはお母さんを幼いときに亡くし、お父さんのジョン・キンセラに男手一つで育てられます。ジョンはおとぎ話やマザーグースの代わりにアメリカのベースボールについての話を聞かせます。ルーゲーリック、ベイブルース、タイカッブそしてシューレス・ジョー・ジャクスン、いずれも初期メジャーリーガ―のレジェンド中のレジェンドです。お父さんのジョンもマイナーリーグでプレーしたこともある程なので、ベースボールを愛していないはずはありません。アメリカの子どもたち、特に男の子たちは何人か集まればベースボールかアメリカンフットボールをやり始めます。どうしてできるかと言えば、家でお父さんからキャッチボールをしてもらうからです。

1775年にアメリカはイギリスから独立をしました。他の国や地域と比較するとアメリカは歴史の浅い国とも言えます。そのアメリカで、親子が繋がるキーアイテムがベースボールでした。これはアメリカ独自のスポーツ文化と言えるでしょう。ヨーロッパ、南米では何と言ってもFOOTBALL、サッカーがメジャースポーツですし、野球のルーツクリケットもQueensである、旧英帝国傘下の国々ではポピュラーなスポーツです。他方ことベースボールとなるとアメリカ発祥と言っても問題ないでしょう。アメリカ人にとってベースボールはナショナル・アイデンティティなのです。

レイとジョンはベースボールで結ばれ、時代の潮流、ムーブメントにより引き裂かれました。60年代70年代初頭のアメリカで、カウンターカルチャーの運動に参画していた若者、ヒッピー、活動家の家族の中ではリアルにあったことと思われます。親子の断絶、イデオロギーによる分断によって親子が切り離されていました。それを成長の一過程と見れば受け入れられなくもありません。ただそこには悔い、「後悔」が残るのです。特にこの物語では父親のジョンが50代でこの世を去ります。親子が再び心を通わせるのは、多くは子供が親の年齢になり、家庭を持ち、自分の子供をもうけ、社会の中で仕事をして家族を養う、そのような同じステージに立った時です。同じ年齢になって、同等の経験を経て初めて見える視界があります。双方が年を重ね、人として成熟し、上に成長する推進力と下にかかる重力が交わる時、一緒に酒を呑めるのでしょう。レイのように父親が先立ち残されたものは、若き日の自分の未熟さふがいなさを悔います。自分の子を見て、「親父ならどう思うだろうか・・・」と思いを馳せます。墓前に手を合わせても帰ってくるものではありません。得てしてこういう場合はこの小さくも重い十字架を身に付けて生きていくのです。ただ【フィールド・オブ・ドリームス】は違いました。自分の声に従い、困難を乗り越えた先に父親が戻ってくるのです。子供の悔いは親の想いと繋がりました。

そしてキャッチボールをします。

レイとジョンのキャッチボールは、その時代にできなかった親子の対話の代償の写しとして存在します。そこには確かな「癒し」があります。親子にかつてキャッチボールの思い出のある方々は、当時のたわいもない輝きに驚きと得も知れぬ幸せを思い出すでしょう。そして今親子でキャッチボールすることが当然の方々は、どれだけ今が貴重で大切な時間であることを思い知らされるでしょう。年を取ること、経験を積むこと、親になることそれらは体力の減退や気の翳りにもつながりそしてお金も年々嵩んできます。しかしながら父親、母親との反抗・断絶の溝を埋めるのは相応の時間が必要なのです。そしてその時間を経て、酸いも甘いも味わって初めて子は親の想いを知り、自身の全てを子である自分に注いでいたことに気づくのです。そうやって人は生きてきた。そうやって家族は営まれてきた。【フィールド・オブ・ドリームス】夢の球場は、その時代にあった反抗・断絶からの邂逅の交差点でした。
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