goo blog サービス終了のお知らせ 

スメラ~想いをカタチに~

スメラは想いをカタチにするコミュニティーです みんなの想いをつなげて大きな輪にしてゆきましょう

【乗り換え ーtransitー】〈15〉

2016-04-01 07:10:18 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
成田 ー イスタンブールで12h30m のフライト。
乗り換え、トランジットで3h25m。
イスタンブール ー バルセロナまで3h40m、1日が30時間になる。

空の上で時間の感覚が麻痺し、時の概念が曖昧になる。3,5次元に溶け込みそうになる。

機内でどれくらい眠ったのだろう?
目が覚めると3時間が経過していた。もっと眠っていた気がしたがそうでもなかった。

TK51便の席には個別のモニターがついていて、映画や買い物情報が見れたり、音楽が聞けるようになっている。現在の飛行位置、また後どれくらいで目的地につくかを地図で飛行軌跡を辿る形でモニターできた。一昔前だと、国際線の映画といえば、やや大きめのモニターをみんなで観る体(てい)だったが、いまや一人に一つのモニターでチャンネルも選べる時代になっていた。

セリーヌ・ディオンのワールドツアーがやっていて、まだぼーっとしてる中でモニターを観ていた。世界を股に翔るアーティストの才能と人間の大きさに意識のキーが1オクターブ上がった。
しばらくすると電気が点灯され、2回目の食事になった。それがランチなのか、ディナーなのか、夜食なのかよくわからなくなっていた。ともあれ、運ばれた食事などを、携帯で撮り、食す。野菜に塩やオリーブオイルをかけてみた。それは個人的には日本ではしない食習慣だったが西欧かぶれの衝動でやってみたくなった。なんとなくおいしくなった気がした。ワインやビールなども飲めなくはなかったが、到着後のことを考えてやめておくことにした。これから得られることは、ベストコンディションで余すことなく吸収したかった。

食後、地球の歩き方を読んでみた。サグラダ・ファミリア、ガウディ、ダリ、ミロ、ピカソ、カタルーニャ、モデルニスモ、パエリア、FCバルセロナ・・・、キーワードはたくさん目の前を通ったが、それらはすべて視界から弾かれた。まったくもって頭にも心にも入ってこなかった。ただ一つ感じたことは、その歴史やバルセロナが持つ光も闇もとてつもなく大きいということだった。これは現地で観たもの感じたものをありのまま受け容れろということだと勝手に解釈した。口の中で鉄の味がした。また鼻血が出るような気がした。

機内放送からトルコ語、英語が流れてきた。どうやら乗り換えの地、イスタンブールに到着するらしい。そのあと日本語のアナウンスが流れてきた。

「当機はまもなくケマルアタチュルク空港に着陸します。」

イスタンブールだ。40歳以上の日本人ならみな庄野真代の「飛んでイスタンブール」を思い出す。

♪ おいでイスタンブール
  人の気持ちはシュール
  だから出逢ったことも蜃気楼 真昼の夢
  好きよイスタンブール
  どうせフェアリィ・テール
  夜だけのパラダイス

この曲のメロディからターキッシュを喚起するものはなかったが、こうして詩を明らかにしていくと、今回の旅にも通じる所がありそうだった。

12時間30分のフライトは腰に影響を与えていた。飛行機は無事着陸した。
手荷物を携え、長い列に並びながらボーディングボードに向かう。あの飛行機から降りた時の空気の変わり目が好きだった。 この日はバスで到着待合室までの移動だった。 夕暮れ時の茜色のイスタンブールは、少し風が強かった。その風は母国とは全く違う異国の気を感じさせた。バスに乗り込むと思いのほか日本人の数が少なく、その認識が旅のモードを変えた。

乗り換えの手続きを済ませ、まずはバルセロナ行きの出発ロビーを探す。掲示板代わりのモニターを見つけると、該当の便を目で探す。次のフライトまでには2時間ちょっと時間もあったからそんなに急ぐこともなかったが、次の展開の見通しがつくまでどこか不安だった。それは彼女も同じだったようで、あれじゃない?これじゃない?あっちじゃない?こっちじゃない?と、イベントに時々出てくるビニールのトランポリンをバランスを崩しながら飛び跳ねている感じだった。二人とも呼吸が浅めだった。

思っていた以上に空港内は大きく右往左往した。そして人が多かった。ロビー内ではみやげ物やカフェが並んでいてあちこちきょろきょろしながら乗り換え口に向かった。動く歩道(moving walkway)もあったが、乗っているとどこで降りればいいのかがわからなくなるので歩いて探した。そのとき活躍するのが荷物カートだ。空港内の超ありがた備品。
数が少なかったと見え、カートを探す旅行者の方がたくさんいた。

BCNの3文字をようやく見つけることでき、ほっとする。ほっとしたら次は膀胱が緩み二人で代わりばんこにトイレに行く。ひとまず地に足がつき、少しだけ緊張を緩めた。ようやく落ち着くと、彼女が周辺のショップを物色し始めた。勿論自分はお荷物警備隊だ。待っている間、レンタルしたWi-Fiを設定して、更新した物語をブログで確認する。webは本当に世界をつなげている。わかりってきっていることだったがイスタンブールでも日本のサイトが見れた。全く同じサイトなのに、ちょっとだけ違う見え方がした。

彼女が戻ってきてからまだ時間があったので、軽くお茶をした。この旅では、ワインでないときはいつも紅茶を飲んでいた。英語では紅茶をBRACK TEA(ブラック ティー)という。「紅」ではなく「黒」。そのBRACK TEAという響きがなぜか海外に来ている感を膨らませた。トルコリラの通貨を使う、店員さんに英語でオーダーする。いちいちストレスがかかったが、いちいち新鮮だった。

はじめてのイスタンブールは乗り換えだったが、確かにヨーロッパとアジアの「間」に立てた。そこには目に見えない赤道が縦割りに走っているような気がした。そこはアジアが終わりの地点で、ヨーロッパの始まりの地点でもあった。

いよいよスペイン、バルセロナに向かう。あと3時間と少し。

「お楽しみはこれからだ!」

未体験ゾーンへの突入だった。テーマパークの絶叫マシーンよりアドレナリンが分泌していた。ここはMAGIC KINGDOMでもなければ、2D3Dのロールプレイングゲームでもなかった。

まさしく二人が作って行く旅だった。それは結構素敵だった。


【もうひとつの物語 ーdevotionー】〈14〉

2016-03-29 15:17:31 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
離陸して1時間もしないくらいでランチタイムとなった。
「chicken or fish ?」「What would you like to drink?」
徐々に英語が生気を帯び始める。

食事の時赤ワインを頼んだ。
ヨーロッパ便は学生の時にイスラエルに行って以来。そのとき、旅慣れた旅客は、ワインの小瓶を食前と食後に1本づつ頼み1本を飲み干し、もう一本を鞄の中に入れていた。おそらく今日の宿で寝酒に一杯用だった。
言葉が通じるかの練習もかねて、RED WINEをオーダーした。
彼女はFISHにオレンジジュース、自分はチキンに赤ワイン。昼間からワインは贅沢だったが、ワインカルチャーのヨーロッパに乗り込むにはちょうどいい景気付けの一本だった。食後にもワインをオーダーし、その小瓶は鞄に忍ばせた。前回の旅から階段を一つ昇った気がした。
食事が終わると、地球の歩き方、ガイドブックを開いてどこに行くかを打ち合わせる。ああしたい、こうしたい。ああでもない、こうでもないの対話は心地よかった。

しばらくすると飛行機の電気が消えた。どうやら眠れということらしい。
イスタンブールには現地時間16:45に到着する。時差調整をするためなのかどうかは不明だが機内は真っ暗になった。十数分後、彼女の寝息が聞こえてきた。朝も早かったから無理もない。ここからが自分の時間となる。そっとPCを前の網から取り出し、キーボードをたたき始める。そうもう一つの物語を編み始める。

今朝も彼女が起きる前に、出発前の最後の更新をやった。本当は出発前に全てを完結させたかったがそうもいかなかった。仕事が休みの時や、朝の時間を使っていたが、いかんせん物語となると文の構成も、言葉の選び方も少し違っていた。つまり思いのほか時間がかかっていた。それでいて捧げものなんて余計な意味付けをしたばかりに、少し負担を感じていた。ただ誰も知らない約束で、義務も責任も強制力も働かないこの作業ではあったが、やめようとは思わなかった。それは偏(ひとえ)に、この物語は作者もわからない「問い」の答えを探す物語でもあったからだった。

その「問い」は2つあった。一つは、「なぜ今横にいる彼女にこんなにも心魅かれているのか?」ということ。もう一つはあの「声」のことだ。T市で聞いた、「enough! ーもういいー」という声。ーvoiceー。あの声を聞いたのは初めてではなかった。それは彼女と出逢ったころ一度聞いたことがあった。だからさほどびっくりもしなかったし、その声にはとてつもなく大きな信頼があった。あの声はどこから来て、だれの声だったのか?それは捧げものというテーマ以上に自分の人生ー存在そのものーに関わっているような気がしていた。

そしてこの物語はバルセロナに向かう今だからこそ完成させなければならなかった。なぜなら旅の力が物語に鑢(やすり)をかけ、想いをカタチにし、自分以上の意味と意志を宿す、そう思ったからだった。

ただ彼女と一緒にいる時間も寸暇を惜しんでという風でもなく、できる範囲と時間で、キーボードに向かった。結果として、旅行の最中、もっというと旅行後も含めて書き続けることになった。

物語を編む作業は、海に潜る作業に似ていた。それは機材を担いだスキューバーダイビングではなく、素潜りのようだった。今は亡き素潜りの神様、ジャック・マイヨールのように潜って行く。潜って行くと、貝や珊瑚のかけらが見つかった。それらを記憶のカメラに撮影し、それを地上に上がって並べてみる。それらが言葉になっていった。時に深く潜りすぎてよく迷ったりもした。貝も珊瑚も魚もいない時もあった。潜るのには体力も必要だった。

旅は同時進行だった。そしてこの旅にも二つの「問い」があった。一つは「なぜこんなにもバルセロナなのか?」そしてもう一つは、物語のあの問いと同じ、あの「声」のこと。この「問い」が今回の旅と未来をつなぐ一本の糸線になった。

そして飛行機は今離陸し、上空35,000フィートを飛んでいる。

機上の物語は思いのほか進んだ。ただその物語のその回を終えると、すーっと鼻の下に違和感を感じた。鼻血だった。赤い鮮血が静かに流れた。そこまでひどくはなく、すぐ止まった。それは飛行機の気圧ではなく、素潜りの水圧によるものだった。

空と海溝の間に自分はいた。その意識の流れを身体は察していた。
目を閉じると、眠りに落ちた。

それは深い深い眠りだった。

【出発 ーtaking offー】〈13〉

2016-03-28 08:05:24 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
前日の晩、あわてて荷物をまとめる。彼女はそれこそ4年前に買っていたスーツケースをデビューさせる時が来た。当時彼女はオーストラリア、カンボジア、ベトナムとよく海外に行っており、また自分も海外行きたいとは言っていたこともあって、これからも旅行はどんどん行くものだと思っていた。そういう経緯で、自分のお気に入りのスーツケースを購入していた。

ところがそれ以来ぱったりと海外に行くことがなくなった。震災があったり、また自分が転職をしていた時期でもあり、お金の使いどころが変わった。そのせいで、そのスーツケースはクローゼットで沈黙していた。デビューはバルセロナ。満を持して、格好のステージ。出番を今か今かと待ち望んでいた。

自分はボストンバッグ1つに納めた。彼女が「本当にそれだけで行くの?」と驚いていた。数枚の着替えと、地球の歩き方、そしてPCがあればそれで十分だった。そして彼女が準備した緑色のスーツケースは自分が持つことになるのはわかっていた。

成田発、10:50のトルコ航空に乗る。空港には出発の3時間前に到着して、少しゆとりがある方がいいということで、朝4:00起きで、5:00発の始発の電車で東京駅に向かった。

気持ちのいい朝で、荷物は多少重たかったが、足取りは軽かった。東京駅から成田へはバスで向かう。バルセロナでお金は使おうということで、リムジンでもスカイライナーでもなく1人片道:1,000円で行ける京成バスを利用した。

空港についてまずは搭乗手続きをした。気になっていたことが二つあった。一つは旅行会社から送られてきたA4のコピー用紙2枚は本当にその効力があるのかということ。いかんせん格安航空券、本当に乗れるのかはまさに搭乗チケットを受け取るその時までは信じられなかった。ただそれは疑いだけではなく、いろりろすったもんだがありながらもようやく現実になろうとしているこの瞬間が夢のように感じられたということもあった。

そしてもう一つはイスタンブールのアタチュルク空港でトランジットがあるので、飛行機を乗り換えることになる。そのときも含めて2人連番で座れるのかということ。離れて座ること程興醒めで、がっかりすることはなかった。できれば外を眺めるのが好きな彼女に窓側を準備したかった。

こういった交渉ごとは自分の役回りだった。早めに手続きに入れたこと、まだ成田ということで日本語が使えるといことで、珍しくスムーズにチケットを手に入れることができた。そして無事に荷物を預け、乗換後も含めて席は連番で彼女に窓側の席を準備できた。
順調で好調なありがたい滑り出しだった。

空港では両替したり、Wi-Fiをレンタルしたりした。その作業一つ一つが、これからバルセロナに行くんだという事実を本当にしていった。

TK51便は比較的大きな飛行機で、横に2-4-2の配置の席だった。ほぼ希望通りの窓側と通路側の席で長時間のフライトには十分対応できそうだった。たまたまかもしれないが席は結構空いていた。なんであんなに航空券が取れなかったのかが不思議なくらいだった。飛行機は程なくして成田を離陸した。

本当にバルセロナに行ける!

夢のような現実だった。いきなり感動している自分はかなりのおめでたい人間だが、そういう自分は嫌いではなく、離陸しただけで喜べるお得な性格は自分を豊かにした。

飛行機が水平飛行に入ると、ペーパーのお手拭きとトルコの茶菓子が配られた。それを二人でほおばり、「やっぱり甘いね」といいながら機窓から空を眺めた。太陽に近づき眩しく、青が文字どおり空色だった。その空色が日常の喧噪をいっきに塗りつぶした。お菓子の甘さが海外へのスイッチのボタンを押した。

それは自分を自分に還して行った。
彼女の顔も嬉しそうだった。

【旅程 ーscheduleー】〈12〉

2016-03-23 00:38:04 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
5/13予約が完了した。

■旅程 5/28~6/2 2015
ー行きー
05/28 TK51 成田空港(10:05)→イスタンブール(16:45) ECONOMY
05/28 TK1851 イスタンブール(20:10)→バルセロナ(スペイン)(23:00) ECONOMY

ー帰りー
06/01 TK1856 バルセロナ(スペイン)(17:40)→イスタンブール(22:00) ECONOMY
06/02 TK52 イスタンブール(01:15)→成田空港(18:30) ECONOMY

エアーチケットと地下鉄の回数券のみを旅行会社で購入した。手数料込みで16万円で用意できた。

銀行のATMから入金する時、なぜか手が震えた。何度も入金先を確認した。
入金をした時、本当に行くことが決まった気がした。その手続きは詰まる所の問題、「お金」をクリアにし、目の前の扉の鍵が解かれたことを表していた。宿泊先や旅の中身などまだ決まっていないことや不安材料はいくつもあったが、扉の向こう側にはバルセロナや地中海が見える港が目に浮かんだ。行く日が5/28なだけで、もうそこにいる気がしていた。

それから宿泊先を探していた。海外のホテルもいくつかの検索サイトで丁寧に探した。またPCとのにらめっこだった。

宿泊先は、アムレイ サンパウというホテルに2泊予約した。ツインで1泊70€(8,500円)はかなり良心的な価格設定だった。窓の外から、世界遺産サンパウ病院が見えることも気に入った。贅沢はできないが少しでも彼女に喜んで欲しかった。
そして写真には1階にカフェがあり、大きな本棚が写っていた。本棚のあるカフェは私達二人の目指している夢の象徴だった。

ただ5/30の宿泊先だけがどこも空いていなかった。
それでもなんとかなる、最悪現地につけば道は開ける、そう思っていた。

これは後からわかることだが、なんとかならないことがあること。
そしてなんとかならない意味があるということ。
塞がれた道に光があること。
それらを気づくことになる。

ただそれはずっと後のことで、この時は楽観と悲観の間を振り子のように行き来していた。

ともあれ、賽は投げられた ー alea iacta est ー 。
どの目が出ても、自分のものとして受け容れよう。
その日がくれば、飛行機に乗る。

そして当日の朝を迎える。

【準備 ーpreparationー】〈11〉

2016-03-20 12:12:37 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
どうすればバルセロナに行けるのか?
一人旅の今までとは違う、今回は二人旅だ。
突き詰めるとそれはお金の問題だった。

行く気持ちも機も気も熟していた。

最初は2人で35万円あればパリとバルセロナを旅できると読んでいた。
贅沢はしないで旅そのものや過程、出会いを楽しめればよかった。
パリから入って、列車でバルセロナへ移動込みで6泊8日の旅程をイメージしていた。
こんな状況でそのプランはあまりにも乖離していた。
そのプランは確かに乖離していたが、どういうプランであれば現実に近づけるのか?
予算の見込みはなかったが、改めて現実を知るという意味を含めてもう一度丁寧に情報収集を始めた。

予算の都合上、パリを断念した。そして日程も4泊6日に短くした。

すると格安パッケージツアーでは宿泊込みで8万円のものが出てきた。2人で16万なら諸々かかっても20万あれば移動と宿泊は何とかなりそうな気がしてきた。
とんだ詐欺師の皮算用ではあったが、なぜかテンションが上がった。

航空会社も中東系とヨーロッパ系とあり、バルセロナで4泊するなら、ヨーロッパ系がよく、予算で言うと中東系がやすかった。個人的なあこがれから、ルフトハンザ、アリタリア、KLM、AIRフランスに乗りたかった。カタール、エミレーツはコストは安くまたサービスもいいと聞いていたが、どうしてもトランジット(乗換)でバルセロナでの滞在が3泊になることから今回はヨーロッパ系で探した。折しの中東情勢もあり、安全面も考慮にいれ最適な選択を模索した。

金額の面では可能性は出てきたが、自分たちが休みを入れ、旅程を組んでいる日程はなぜか満席・満室だった。もう3週間前ということでのことだったので無理もなかった。中東系の航空会社でも、10数万円のツアーでもfullマークがついていることが多かった。検索サイトも2社に絞り、良心的な価格帯を提供する旅行会社を3社に絞り探し続けた。
家に帰っても部屋に閉じこもって検索を続けた。

自分はマシンになっていた。

彼女は何も言わず、何も問わず放っておいてくれた。通勤前、通勤中、夜、行ける行けないではなく、もし行けるとしたらこれだという所を探した。

webや旅行会社に問い合わせた結果、ヨーロッパ系の航空会社利用のツアーは一人20万円のコストをかけないと空きはなかった。中東系の航空会社を利用すれば9万円前後のものが数件だけあった。その中に1件だけ、バルセロナで4泊でき、かつ9万円台のツアーがあった。それはトルコ航空利用のツアーで宿泊付きだった。
これなら、なんとかできるかもしれない。そう思ったが、それでもお金の問題はついてきた。彼女に相談するには本当に行ける可能性を高めてから相談したかった。

webや電話での相談は終わり、後は足で情報をとりに行く。これが取材の大原則、全ては現場で本物にして行く。

ここで立ち止まって考えた、もし本当に行くのなら、1円たりとも無駄にできない。1円でもその予算に組み込みたい。だから旅行会社に行くのも電車を使うのをやめた。新宿までの道のりを自転車で行くことにした。幸い天気には恵まれた。自宅から往復16kmの道のりを2往復した。

webで見つけたツアーは満席になっていた。その中で新しい情報としては5/30に宿泊を挟むと値段が1,5倍になるということだった。この前後でバルセロナ見本市というのがあるとのことだった。ただ地球の歩き方を見ても祭りや見本市についての言及は一行だってなかった。東京だって幕張や有明で展示会なんてのは毎日のようにやっている。そんなにいっぱいになるものなのか?
自分の中に疑問がわいたが、その疑問を持ったからといって、満室の事実は変わらなかった。部屋を込みでツアーを予約すると、一人18万円に跳ね上がった。もっと速く動いていれば一人の予算で2人が行けた。
ここでツアーで行くのを諦めた。航空券と地下鉄の回数券だけ買って、宿泊先は自分で探すことにした。それはそれで大変になることは目に見ていたが、それを見つけるのが旅の醍醐味でもあるので腹を括った。この腹がバルセロナに行く決意を固めた。金は何とかなる、とにかくこのチャンスを全うしようそう思った。

その晩彼女に頼んだ。
「今かき集めて10万円ある。10万円、二人で貯金してきたお金を使わせて下さい。」そう言って頭を下げた。

以前彼女は税金を返す時、二人の貯金使ってもいいよと言ってくれていた。ただ自分が作った税金に二人のお金は使えなかった。意地を張っていた。ただ今回は事情が違う。二人のために借りるならそれはいいと自分で思えた。その時の言葉に甘えて、10万円貸して下さいと頼んだのだった。それは二人で将来のために必要だからと少しずつ貯めていたお金だった。彼女は無理して行かなくてもいいよ、また行けばいいという風に言っていたが、もう2度と、公私ともに気兼ねなく旅できるのはこの機会しかないことを伝え半ば強引に説得した。彼女もまた職場の一部の人にスペインに行くとも言っていた手前というのもあったと思うが、ともあれ、貯金を使っていいという許可をもらった。稟議は通った。
彼女の許可と理解は大きな大きな力になった。

貧乏旅行で行き当たりばったりになるかもれない、でも二人でバルセロナに行く、それは結婚式の儀式と同等の二人の通過儀礼になっていった。

「何が起こっても、何かが足りなかったとしても全てを受け入れます。どうかこの旅を私達にお与え下さい。」そう祈った。

そしてもう一つ、その儀式に捧げものをすることにした。
それが物語を作るということだった。

この旅の代価として自分の運命に捧げものができるとしたら、それは物語を編むことしかなかった。
物語の力、エナジーは宇宙の振動を膨らますことができる。

「新しい物語を生むために、一つの物語を捧げます。」

これから始まろうとする物語は、花咲いた記憶を言葉に編み直すことと同時進行で進んで行くことになった。それは二重螺旋のように。均衡を保ち、エネルギーを交換しながら上昇して行った。

2つの物語の始まりだった。

【温泉 ーvolcanoー】〈10〉

2016-03-16 18:31:47 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
箱根、熱海、小田原・・・・・
箱根、熱海、小田原、草津、渋川、・・・
箱根、熱海、小田原、草津、渋川、鬼怒川、西那須・・・

温泉のことを考えていた。

職場に向かう朝の小田急線の下りは上りより空いている。時には座って職場まで行けることもある。その日はたまたま運良く席に座れ、念仏のように温泉地を脳内で検索していた。

スペインを断たれた自分は彼女への挽回を考えていた。

近場であったとしても、楽しい思い出ができればいい。二人の記念になることができればいい。できる範囲でやれればいい。そう言い聞かした。

ただ力が湧いてこなかった。閃きも、アイディアも空転していた。でも考えない訳にはいかなかった。彼女への信頼回復は聖地回復、21世紀のレコンキスタだった。

予算は10万円程はなんとか見えてきたから代替え案は作れそうだったが、それでも「これっ!」というもの「よしっ!」というものは浮かばなかった。バルセロナに深くコミットしていた。バルセロナを超えるプラン、それはよっぽどのものでなくてはならなかったが、そいうものは皆目見当がつかなかった。「温泉」を探すということで罪悪感を軽くしようとしていた。やはり力が湧いてこなかった。

午後のお客様は自分が担当だった。そのお客様は夜勤明けのホテルマンで、店には2度目の来店だった。

お客様はこう尋ねた。
「この保険って海外でも使えるんですか?」
「治療証明と入院があれば大丈夫です。ただそういった備えには海外旅行保険で海外での保障は考えるのが一般的ですね。」
「あっ、そうかそうか海外旅行保険ね。」
「よく海外行かれるんですか?」
「そうですね」
「お一人で?」
「ええ、大概一人です。」
「私も一人旅大好きです!」
話がスイングした。するとお客様の携帯が鳴った。
そのiPhoneケースを見ると、奇麗なモザイクの模様のデザインだった。白とレモンイエローがベースで、赤と青がアクセントで使われていた。

そのストラップには「BARCELONA」と書かれていた。

時が止まった。
脳のシナプスがスパークした。

「奇麗なiPhoneケースですね?」
「この間、バルセロナに行った時買ったんです。」
「あちらはいかがでしたか?」
「すっごくよかったですよ。世界遺産とかたくさんありますしね。」

しばらく仕事の話はとまり、バルセロナの話に聞き入った。そしてこう言っていた。

「私もバルセロナに行くんです。」

どの口が言ったのか探したが、紛れもなくこの口、自分の口だった。昔から人の話に調子良く合わせようとする悪い癖があった。それが癖から来ているのか何かの衝動から来ているのかはわからなかったがともかく言葉が発せられた。

言葉は力を持った。力が湧いた。

その言葉は地殻を光の速さで落下しマグマまで達していた。
そのエナジーは温泉にするには熱すぎた。

想いの種は強い生命力を持っていた。
それは誰にもわからない決意表明だった。

「私もバルセロナに行くんです。」

【蟻 ーantー】〈9〉

2016-03-13 10:35:13 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
T市から家に帰ったが、その日は何も言わなかった。というか言えなかった。
旅は二人の灯台だった。その灯りが消える。元気がなくなるのは目に見えていた。

職場でいろいろあったにもかかわらず、無理繰り休みを調整してくれていた。彼女の仕事は彼女以外誰もできない。不可欠な職務を担っていた彼女が7日間の休みをとるというのは異例の事だった。それは新婚旅行という大義がそうさせた。ハネムーンという名分はその時節の事情も凌駕していた。

どうすればいいのかわからなかった。

ただ伝えるのを先送りすることは彼女のショックをより大きくすることになる。
次の日の夜の夕食後に伝えることにした。

とりあえず延期ということ、休みは近隣の温泉にでもいこうということにした。
そして税金の支払いで行けなくなったことも言わない訳にはいかなかった。

仕事からの帰り、身体中が鉛のように重たかった。
これから何が起こるか露も知らない彼女はいつものように夕飯を準備してくれていた。それがやたら美味しいものだから、言う気が萎えた。それでも言わなくてはならなかった。

彼女はこれから何かがあることを察していたようだった。それは何かよからぬことが起こるのではないかということも含めて。口数が異様に少なかった。

小さい勇気を振り絞って話を切り出した。

「あのさ・・・ごめん、旅行行けなくなった。前住んでた所の役所からの通知で貯まっていた税金全部支払った。これでT市からくる請求はなくなる。本当に悪かった・・・」

歯切れも、テンポもぐだぐだだった。
ただただ小さくなり蟻になった。

「えーーーーーーーっ!」と彼女は一声発し、しばらく沈黙がつづいた。

蟻になった自分にはその空気は重たかった。
それ以上に彼女はこの現実を妻としてどう受け止め、どう消化すればいいのかを考えていた。彼女の時間を止めてしまった。

10年の沈黙のような数分後、彼女は言った。

「よかったじゃない」

「ずっと税金払っていたの知ってたから何も聞かなかったけど、前も言ったように払うべきものはちゃんとして欲しかったから。これで終わりならそれでいいよ。」

「本と、ごめん・・・」

優等生のような彼女の答えはありがたかった。
ただその言葉の奥にあるやり場のない怒り、行き場のない空虚感はクレッシェンドのように増幅しているように感じた。

彼女がキッチンでカチャカチャと皿を洗う音が聞こえた。
その音は不規則に止まり、またカチャカチャと音を立てた。
その音で彼女の溜め息の数がわかった。

「俺って何だろう・・・?」

人生の節々で出てくる虚無な問いが、またこみ上げた。

T市のときに聞こえた声は何もなかった。

今度は紛れもなく自分の声だ。

「俺って何だろう・・・?」

二人の灯台の灯りが消えた。

【ごめんなさい ーapologyー】〈8〉

2016-03-10 09:28:15 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
帰りの電車は清々しかった。憑き物が取れたようにすっきりしていた。体重は5kgぐらい軽くなった気がした。

目に見えないメッセージは「go to the next ー次に進めー」と言っていたが、ここでいうNEXTは彼女への報告だった。予定していたお金を失った事実は変わらなかった。それはスペインには行けないということを意味していた。

なんて言えばいいんだろう・・・?

その時の彼女は仕事で大きなストレスを感じていた。今いる職場に10年所属しているということと彼女の仕事ぶりが評価され、役職がつくというオファーがあった。それは一見めでたい申し出だった。答えを出す期限も近づき、職場もオファーを強めてきた。

自分は反対していた。

「何かを始める時、何かが始まるときは、過去の負い目、潜在意識に染み付いた悪しき水脈が解消されないと先には進めない。」

今回のオファーは組織改編であり、新しい事業への業務拡大ゆえのポストだった。しかし表面上で美しき挑戦に見えても、「悪しき水脈」をうやむやにしようとしていた。これは原則のプロセスを逸脱していた。

勿論自分は内部の人間ではない、否定も批判もする権利はない。失礼千万は十分承知。
でも自分には彼女を守る義務と責任があった。ここにも闇があった。ただその闇は、自分がT市に感じた共通の闇とは違い、向き合うべきでも見つめるべきでもない闇だった。彼女はその闇に光を与えていた。それはもう十分なくらいに。ここでの出会いも学びも終わっていた。彼女は先に進む準備ができていた。

「悪しき水脈」はない彼女だったが、彼女自身の目標やヴィジョンがまだ明らかになっていなかった。この曖昧さは、そのオファーの入り込む隙を与えていた。悩んでいた。

元気になって欲しかった。そのための旅でもあった。

彼女に新婚旅行どこがいい?と聞くと、「海外がいい」。どこの国と聞くと、黙ってしまう。そんな会話がずっとつづいてた。考えた末、出てきた答えはスリランカでスペインとは頭文字の「ス」(S)しかあっていなかった。
以前彼女が言った「スペインに行きたい」という気持ちはどこかに消えていた。想いが育つ魂の島に根付いた種は、確かに大きくなってはいたが、それは彼女の島ではなく、自分の島だった。想いが独りよがりになっていた。

スリランカに行くことの意味付け価値付けをしようと思えばできないことはなかった。彼女の気持ちを尊重するならなおさらスリランカを選択肢に入れるべきだったかもしれない。

ただ今回はスペインに拘った。それは彼女が闇を光に転換させる素地をもっていたからだった。彼女はステンドグラスが好きで、時折自分で作ったりもしていた。赤、黄、緑、青、透明のガラスを組み合わせる。それは小さな工作ではあったけど、とても奇麗だった。そして造る姿は美しかった。

ステンドグラスは陽の光を教会に取り入れる役割を果たした。スペインには光の塔があった。

サグラダ・ファミリアだ。

あのアントニ・ガウディらにより1882年から建築され、未だ未完の大聖堂。
人類史上最大で最も新しい光が集まる聖地。

その光が彼女に力を与える、そう思った。
彼女が今探している目標やヴィジョンよりも大きな向かうべき方向を照らす光が、そこにあるような気がした。それは未知で不確定で根拠もなかったが、確信でもあった。

彼女の成長と進化は一生を懸けての自分の使命だった。
その使命を果たす過程で自分の想いが形造られていく。
だから私たちは結婚をし、同じ船に乗った。

しかしその船はまさに座礁しようとしていた。

そんな想いの蕾が花になろうとしていたときに謝らなければならなかった。

「ごめん、行けなくなった」

と。

【受容ーacceptー】〈7〉

2016-03-07 07:28:45 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
その上長が降りてきた。頭は整髪剤でぴっちり固め、今風の眼鏡をかけ、黒のスーツに身を包んでいた。将来は上に上がって行くキャリア組の臭いがした。

交渉というか攻防は、最初の担当者の方とかわらない。ただその方の権限というかその場を抑えられる決定権者であることは伝わってきた。その人そのものというより、その人の背後にある幻影はただ見えないだけで、大きく、重量感も質感もあった。

勝ち目はなかった。それでも戦おうとする自分がいた。ここにはスペインがかかっていた。意志がかかっていた。

重心を落とし、気を込め最後のタックルに入ろうとした。

その瞬間、目に見えないタオルが眼前に天井から降ってきた。
そして音のないゴングが鳴り響いた。

それは戦いの終わりを伝えていたが、幻(まぼろし)だった。
もう一度タックルに入ろうとしたその時、メッセージが脳裏を走った。

「enough! ーもういいー」

また言葉を発しようとすると、背中の服をひっぱりこう伝えてきた。

「It’s gonna be all right! ー大丈夫だからー」

その力は、目の前の役所の上長より、ずっと小さく質感もなかったが、集中度があり、高速で、なにより不思議な納得感があった。物事の源泉から届いたメッセージだった。
急に力が抜けた。それは逃げるとか負けるとかではなく、この目の前で起こっている事象が、過去になっているということを認識したからだった。そこに今はなかった。

向けるべきは今と未来だった。お金は返ってこない、その現実よりもっともっと大切なことがあった。

リングを降りた。この戦いは負けだった。
その上長、黒戦闘員、警備の方に一礼し、時間外の窓口を後にした。外はすっかり暗くなっていた。

ただ目に見えないメッセージを発したセコンドはこう伝えていた。

「go to the next ー次に進めー」

ここで悪しき水脈は断たれた。新しい水脈と次のステージへのスタートが始まった。

目に見えない鐘の音が鳴っていた。
それはゴングではなく、どこかの教会の鐘の音だった。

その響きが内側から自分を浄化して行った。

ゴーン、ゴーン、ゴーン……

【 意志 ーmessageー 】〈6〉

2016-03-05 07:31:53 | 【バルセロナの紺碧(azur)】
第一の関所は、時間外の窓口。言い換えれば警備の方だ。
警備の方は市の職員ではない。依頼した警備会社から配属された派遣の方だ。
今回の件については何の権限も決定権もない。ただし、この門番を突破しないことには埒はあかない。ポイントを一つに絞った。担当の方に電話をつないで下さいというお願いにした。
その一点突破のためには、紳士な対応が必要なのだ。守衛という役割、責任を汲み取った上で要望と意志を伝える。人間同士わかりあえるという楽観は通用しない。権力や納税者という立場を利用するにはそもそもそんな力はないし、今は市民ではないことからそんな立場もなかった。
連絡を求めているのは、T市であること、時間外で電話が繋がらないこと、現在は遠方に住んでおり、こちらにはなかなかこれないことを伝え、担当者に内線で電話を繋いでもらうよう頭を下げてお願いした。
門前払いでは始まらない、リングに上がれないと、ゴングも鳴らないのだ。

幸い、警備の方は内線で電話をかけて下さった。頭は下げたが、気合いと見えない圧は相当なものだったから察してくれたものもあったのだろう。ともあれ感謝した。
担当の方に繋がった。次はリングに上がってもらうのが目的になる。担当の方は仮面ライダーでいうとショッカーの黒戦闘員。その背後には本日の戦うべき怪人がいて、ひいては大ボス・組織が控えている。役所の人にしてみれば、自分は時間外に来る、礼を欠いたエイリアンの来襲だ。お互い対戦相手は当日その時点にならないとわからない。
担当者の方はわざわざ時間外の窓口まで降りてきて下さった。
ゴングは打ち鳴らされた。一礼をし、名を名乗ると、黒戦闘員は「イーッ!」と言わず名刺を差し出した。それはいい間合いだった。

今回もポイントを1点に絞った。それは支払うということを前提として、一度返してほしいという要望だった。延滞金は14,6%の利息がつかない。であれば支払いの優先度を上げ、分納で支払うという着地を目指した。

黒戦闘員はマスクを脱ぎ、こちらの話に耳を傾けた。その人なりも、姿勢もいい方だった。ただ答えは「これはもうお返しできません」。明日以降改めてお話を聞くこともできますが、答えは変わりませんとのことだった。何度かの押し問答はあったが、戦闘員は汗をかきながらそう繰り返した。想定の範囲だった。ただ想定外だったのは、悪の戦闘員が思いのほかいい人だったことだ。いい人なだけに、その言葉には力があり、組織の力・自治体の力を感じさせた。申し訳なかったが、上長を呼んでもらうようお願いした。総合格闘技でいうと、亀の状態で上からコツコツ拳を落として行くが膠着している状態になった。亀の甲羅は思いのほか固く堅牢だった。その方は正式な自分の担当者ではなかったし交渉の権限もなかった。こうなるとしかるべき代表との話が必要だった。そう本日の戦うべき怪人との交渉がメインイベントだった。黒戦闘員とは一旦ブレイクした。ここまでの差し合い、組合でこちらの本気も熱も伝わっていた。自身の携帯を取り出し上長を呼んでくれた。この対応もありがたかった。