果てさて、モニターオーディオのGS60とDALIのメントール6が残った。ある意味性格がまるで違うようなスピーカーを最終選考に残しているというのも自分自身驚いている。が、それ以上にこのお店にお邪魔した時に「僕を聴いてください」と訴えかけてきたスピーカーも最終選考に残しているというのは、自分で決めたことながらどうしてなのかの説明がうまくつかない。どうしょうもないので、これらを比較試聴しながら、少しずつ音を追い込んでみて、決めていくことにした。
このスピーカーは、どうもダイナの方に聞くと、以前からこのお店にあったスピーカーとのことらしい。展示品ということで、5階に厳然として起立していた。売れない理由があるからだろうとは想像に難くないが、果たして音はどうなのか、興味津々であった。
実はこのスピーカーは、今回の試聴大会に最初から参戦していた。1ラウンド目でこのスピーカーを聴いたときに、すでに「ふむふむ、なかなかやるわい」いう音がしたので、2ラウンド目の試聴はこのスピーカーをスキップしていた。
というわけで三つ巴の最終試聴を開始した。使用した盤は、クインシー・ジョーンズのベスト盤でもある『フロム・Q・ウイズ・ラブ』のDisk1の1曲目<ブラジリアン・ウェディング・ソング>と14曲目の<シャドウ・オブ・ユア・スマイル>。前者はサラ・ボーンとテイク6が競演。全編がスキャット(ハミング)によるもので、広大な音場空間が聴き所。後者は、フランク・シナトラのサンズ・ホテルでのライブでカウント・ベイシー楽団との競演。シナトラの声の質感とベイシー楽団の醸し出すパースペクティブなハーモニーが聴き所。
さて試聴を終えての感想だが、GS60のスピード感があって音離れのいい音も捨てがたかった。またメントール6の弾力あるベースラインにもクラクラと来た。そしてこの2つのスピーカーで鳴らすジャズには決定的といえるような欠点は感じられなかった。こうなると後は、直感で勝負ということになる。襷掛け接続を解除して高域側へSPケーブルを接続した時のGS60が最も現代的な、そして余裕がある鳴りっぷりを示した。正直捨て難い。メントール6は、ジャズ・オーディオ的に美音なのだが、いかんせん、グランド・ピアノのスケール感が出ない。ゆえに2ラウンド目以降は、GS60と、毅然とした立ち振る舞いの5階にあったスピーカーとの一騎打ちということになった。
今回の試聴会で聴くまでの間に、このスピーカーのことをWebでいろいろと調べてみた。ところがあまりに情報が少ない。ただメーカーの名は、昔々に聞いたことがあった気がするものだった。Webには、
「理想的なトィーター用振動板素材バイオセルロース、革新的バスレフ新理論、仮想同軸方式を採用し、ハイフィデリティー(高忠実性)とミュージカリティー(音楽性)を両立したトールボーイ型」
「高い評価と実績のある、自社開発ユニットの性能を最大限発揮させるために誕生したモデル。上品な艶と重厚感のある音楽的ウエルバランスとオーディオ的な快感とを両立させ、広大な音場感とコンパクトで実体的な音像感を共に再現しています」
「高い評価と実績のある、自社開発ユニットの性能を“最大限発揮させる”、これがこのモデル開発設計のコンセプトです。ダブル・ボイスコイルのウーファーは、前作ではスタガー駆動として使用していますが、本作では電気的にも機械的にも完全パラレル駆動として動作しています。foの極度に低いトゥイーターを余裕をもって使用しクロスオーバー周波数付近で発生しやすい歪み感を押さえ、ダブル・ウーファーの振動板振幅を最小限にコントロールする、全く新たなバスレフ理論によって駆動し、中域への混変調歪みを除去するなどによって、大パワーを楽々と受け入れ崩れを見せず、上品な艶と重量感のある音楽的ウェルバランスとオーディオ的な快感とを両立させ、広く深く高い広大な音場感とコンパクトで実体的な音像感を共に再現しています」
というようなことが書いてある。聴いて当たっていることも、そりゃ違うだろうということもあるが、一言で言えば、
「ピアノの音が本物の音だ」ということに尽きる。
モニター・オーディオGS60は音の立ち上がり、立ち下がりが速く、音像も精緻に描く。立ち位置を微妙に変えるという作業にも、難なく追従してくる。もし5階のスピーカーがなかったら、難なくGS60に僕は決めていただろう。というのも5階にあったスピーカーを1ラウンド目に聴いた時に、音場の広がりがあまり感じられなかったのがちょいと引っかかっていた。どちらかといえば、実音の核となる響きが明快に伝わってくる音で、音像をシャープに描くというスピーカーであった。
一騎打ちをしているGS60の低音もハイ・スピードで素晴らしいものであったが、こちらのスピーカーは一枚上手で、このウーハー・サイズで、なんなく100Hz以下の低域を過不足なく出してきたのである。それも偽物ではない実体感のある低域だった。上記したようにピアノの音は、しっかりとしたピアノのボディの音を正確に再現していた。ピアノが出す倍音のヌケと艶も驚くほどいい。同様にバスドラの重低音に「あれ?」と思うくらいマッスがあった。リア・バスレフのためにやや遅れ気味に聴こえるというのが、実は最大の好みの音でもあった。そして何よりもその見た目の大きさよりズッシリ重い(40kg)その重量にも参った。そして筐体のピアノ・ブラックの塗装の見事さも、惚れ惚れするものだった。そうそう、もう一つ、男性ボーカルの声にしっかりとした重さがあること。いわゆる「コーコー」声にならないのが素晴らしい。今回の試聴で唯一、シナトラの声がシナトラらしく、聴こえたのがこのスピーカーだった。これには僕にとって説得力がありました。
そしてこの時点で「決めました」。おもむろに5555の田中さんに購入を伝えしました。
「このアクースティック・ラボのステラ・オパス(Acoustic-lab Stella OPUS)を買おうと思います。よろしくお願いいたします」と。
というわけで、オパス君が我が家にやってくることになる。自宅でどの様に鳴るのか、楽しみである。(3月28日記述)
なお、上記記事中のことは、あくまでも私の主観によるものですので、一般論ではなくなっていますのでご容赦くださいませ。
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アクースティックラボのオパス
値段が激しい値段ですが、音は極上になりそうですね。
インプレ期待してます!
同じスピーカー仲間が増えて嬉しいです^^
到着されたらじっくり楽しまれて下さいね。
Opusのお手入れ用には、YAMAHAから出ているピアノ塗装用クリーナー「ピアノユニコン」が必需品です。(小瓶で500円程度)
数ヶ月に一回くらいのペースで塗布してあげると、塗装表面の美しい艶を失わないと思います。
意外な展開でした!
楽しみですね。
「遅れ気味に聴こえるというのが、実は最大の好みの音」
に私も同感します。(たぶん同じ意味かと...)
たばこをお控えくだされ
この良きスピーカーと長く長く
お付き合いしたいなら
私とも長く長く長く
御一緒頂きたいので
Opusは、ピアノ命みたいな音が出ます。また最低域の出方が尋常じゃないです。というわけで、1週間後にインプレする予定です。
【MITSU様】
Opus同盟を組みましょう。(^.^)
情報交換お願いいたします。<m(__)m>
早速来週、クリーナーを購入に走ります。
このクリーナーの留意点ありまでしょうか?
【ノーライオット様】
Tannoyでジャズが鳴ることを知って以来、「遅れる」低音が好きになりました。(^^ゞ
実は、この展開は、私本人が一番意外なのです。
仮想同軸の定位の良さで、ピントがピッタリ。
だけれど、耳が痛くならないしなやかな音が出ます。後は、自宅で音場感をどう出すかが勝負でしょうか。やや不安。
ええ、是非お願いします^^ うちの近所にもOPUSを使ってらっしゃる方がいるし、Stellaシリーズまで広げれば、かなりの方がいそうですよね。
>このクリーナーの留意点ありまでしょうか?
使い方は至って簡単で、女性が化粧時に使うコットンに含ませて、車にワックス掛けするときの要領で、円を描きながら塗りこむだけです。
液体なので、殆ど力を入れなくともスイスイ塗れます。
その後は、間髪入れずにふき取ります。
時間をおくと乾燥してふき取り難くなるので、一面ずつ作業すると良いと思います。
ふき取りには、別のコットンでふき取るか、Opus付属のグリーンの布でふき取ります。
グリーンの布は洗って何度も使えるので、付属されてたらこれで良いかもしれませんね。
あの布は、洗えるのですね。ラッキー。
情報ありがとうございます。
ピアノ塗装だと楽器用の布が指紋など拭き取るのに便利です。
楽器屋さんにいろいろあるので、チェックしてみてはどうでしょうか。