Sugarのちょっとお寄りなさいよ

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期待以上の仕上がりに拍手:クリスチャン・ジェイコブの新作を聴く

2008年04月23日 | Jazz
それにしても素晴らしいアルバムに仕上がっている。音もそして音楽そのものもだ。昨年10月に来日したピアニスト、クリスチャン・ジェイコブが東京TUCで行ったライブの、まさに“初”ライブ作である『ライブ・イン・ジャパン』のこと。
このライブの売りは、以前にも書いたのだが、ライブ料金+αで、当日のライブ盤が送付されてくるというシステム。これは、音楽好き、オーディオ好きには堪らないやり方で、ライブ料金と実際に手にするCDの値段を足し算すると驚くほど「超格安」なのである。
こういうコンセプトでライブ盤を手にするのは、色々な意味でお楽しみが多い。実際のライブと出来上がった盤との演奏や音の違いが楽しめるのだから、本当にいいシステムだと思う。
さて、では実際どうなのかなのだが、まずは大きく期待を上回る出来であると断言してしまおう。正直に言えば、そんなに期待していなかったことも事実だ。演奏自体は素晴らしかった。しかし会場で聴いた音は、お世辞にも「最高」ではなかったのだ。ゆえに演奏の良さもこのCDに収録されているものの8割ぐらいにしか感じ取れなかった。
ところがである。これがとてもいいのだ。4曲目から7曲目の日本の四季4部作の出来がライブ以上にとてもいい。リハーモナイズ、あるいは編曲の勝利といっていいもので、クリスチャンのミュージシャンとしてのクレバーな部分が開花している仕上がりだ。通常この手の日本の曲をアレンジすると、なぜか中国的なニュアンスが大溢するのが、ここでの編曲は、原曲の持つ滋味深い旋律を殺さないで新たな高みに昇華しているところが、まさに聴き手(日本人)の心を打つ。この4曲はメンバー間で事前に相当揉んで来たと思われる。
さて、1曲目のこのバンドの十八番である<トゥー・クロース・フォー・コンフォート>からこのトリオは快調だ。この仕掛けタップリのこの曲を何事もないかのように演奏しきること自体が驚異だが、聴き手の僕らを驚かせる1曲でもある。ピアノ・ソロでもある8曲目の<ステート・オブ・マインド>は、限りなく美しいクリスチャンのピアノをじっくり堪能出来るし11曲目のボーナス曲である<マディーズ・スカイズ>まで、緊張感とリラクゼーションの狭間で聴き手をトランス状態にしてくれる力作だ。うーん、素晴らしい。それにしてもクリスチャンのピアノ奏者としての力量は凄い。超絶技巧であるプレイをしているんだけれど、こうすんなりプレイされるとその技巧に全く気がつかないです。ハイ。
  
さて、音だ。録音は常磐さんで、あの機器(失礼)から録られた音とは思えない素晴らしさ。特にあの“ヤマハ”のピアノからこの音が聴けるとは思いもよらなかったので、これはこの作品の大きなアドバンテージだ。ベースもドラムスもライブで聴いた時の音そのもので、たぶんライブを聴いた方なら十二分にこの音に納得のいくものかと思う。どちらのマイクもその楽器以外の音をやや拾っているのだが・・・。
 
実はマスタリングを米国やるよ!と言っていた意味もこの辺にあると僕は思っている。ミキシングを担当したのは横倉裕である。昔からの(80年代以降のフュージョン好きの)ファンなら、「え?もしかしてあのキーボード、アレンジャーの?」というはず。そのとおりである。近年はミキシング・エンジニアとしての方が忙しい。クリスチャンとの付き合いは、たぶんフローラ・プリム・バンド時代からだと思う。なおクリスチャンの『スタイン&マイン』でも彼が担当していたような記憶がある。いずれにしてもエンジニア、ミュージシャン、ミキシング、マスタリングの勝利と言うべき作品として、広くジャズ・ファンの方にオススメしたいピアノ・トリオの秀作だ。

またもや機器選びの旅に出た:CDプレイヤー編 Part2

2008年04月13日 | Audio

そんな折りに以前、k1xv1xさん宅で聴いたEsotericのX-01D2の音が眼前にちらつくようになった。もちろんこの機種は高額過ぎて購入は出来ないが、クラシックもジャズもどんと掛かってこいという素晴らしい音で鳴らされていたのが印象的であった。まぁ、その際はこのCDPにもとんでもない電源ケーブルが刺さっていたのではあるのですが・・・。
となれば代替え機種ということで、選んだのがX-05。これは意外とどの店にもおいてあってじっくり試聴する機会を得た。そう、このX-05という機種でもしっかりEsotericの音がやはりするのだ。やるなぁ、エソテリック。
昔のエソテリックはティアックの時代を含めて、大まかに言えば、エッジの立つ音との印象が強い。この美点を活かしつつ、微細な情報を出力してくれるという点で、秀逸だと判断した。しかし一ヶ所だけで、購入決定を判断するのは危険だと思い、数ヵ所でこのX-05を聴かせていただいた。それも色々な機材とともにである。

▲購入したX-05。トレイのデザインが違うだけ?。実は天板側板の作りがまるで違うのだ。やはりX-01は凄い
そこで得た結論は「購入するしかないな」という感じであった。面白いことにこのクラスのCDPだと、そのオーディオ店にあるハイエンドな機器との組合せでしか試聴が出来ないということだった。数百万もする機器と一緒ならいい音で鳴るのは当たり前じゃん!とも私は思った。とあるお店に無理を言って総額100万程度の組合せで聴かせていただいた。これが、最終的に購入にいたる契機となった。
この1ヶ月はやはりいろいろな店で聴かせていただいていたので、このX-05の良さ(氏素性)は、この組合せでもしっかり聴き取ることが出来た。それにしてもこのX-05は、店によってエージング時間の差が大きくて、何人かの店員の方もかなり最初と現在では、相当音に違いがあるとおっしゃられていたのがとても印象的なプレイヤーではある。ましてやデジタル出力を使っていたお店はゼロ、そう、一軒もなかった。
さて、そのお店での最初のインプレッションだなのだが、一言で言えば、収録されたCDの音の雰囲気が出るか出ないかがというのが最大の決め手だった。これは録音されたスタジオの部屋の音だったり、その空気感だったり、各楽器のリアルさだったりするのだが、敢えて一言で言えば、音楽の「気配」なのである。この気配がある(出る)のと、ない(出ない)は実は大きな問題だと思う。ハッキリ言えば、別のCDかと思う位に音楽の伝わり方が違うのだ。
じっくり聴かせていただいたお店は、すでにこのX-05をメインで使用されているようで、相当なエージングが済まされているものだった。そして当然のようにアナログ側での接続のみだとおっしゃっていた。某社のアンプと某社のトールボーイ型スピーカーとの組合せで聴いた。前述の様に100万以内での試聴である。それが驚くほど微細な音を聴かせてくれたのだ。これはオーディオに数百万をかけても出ないときは出ない音でもあった。当然のようにアナログ接続である。私の駄耳にもこの出ない(出せない)「気配」が濃厚に伝わって来た。この瞬間に「コレだ!」と思った。CDに入っている音を根こそぎスピーカーから叩き出す。某社のアンプもよかったのだろうけれど、音楽に感動出来る音がそこにあった。音楽と対峙してその演奏者の持つ個性をしっかり聴かせてくれる機種。まさに素晴らしいの一言であった。
本当に申し訳ないことではあったのだが、この店では購入していない。売価が実に高いのである。こちらの足下を見られたかのように高いのだ。「売れ筋」ですからという店員の言い放ちにもカチンと来た。ゆえに購入は、オーディオユニオン御茶ノ水店に決定。実は別の店では中古で出物もあったのだが、これが字義通りかなりの傷物であったので、パスした。それにしても店員教育というのは、絶対に必要かと。高くても安心料(顧問料?)とすれば、いい店員がいる店で購入するのが一番なのかも。そう言う点でハイエンド館の朝倉様にはお世話になりました。お店ではこの機種を私が聴かずに購入したので、相当驚かれていましたが、そういう理由・経緯からです。
さて、実はアナログ接続での試聴の後に、デジタル出力を、とあるDAC経由で聴かせていただいている。これが同じ機械かと思うほど駄目だったのである。そうなのだ。デジタル側のエージングがまったく進んでいない為なのである。 (続く)


またもや機器選びの旅に出た:CDプレイヤー編 Part1

2008年04月12日 | Audio
このブログも丸々1ヶ月以上ご無沙汰していた。ブログ更新が出来なかったのも、単純(?)な話で、我がオーディオ・ルームが友人の引っ越し家財の借り置き場となっていたからである。当然「音楽を聴く」ような状況ではなかったというわけだ。
心配してメール等くださった方に感謝です。
先週、その状況も晴れて解放されたので、再び再開というわけである。
それにしても、自宅で音楽が聴けないとなると、なぜかオーディオ店へ聴きに行く頻度が高くなると言うのも耳の毒、目の毒というまさにオーディオ好きの性(さが)ではある。
そんな折りにとあるCDプレイヤーを試聴してしまった。これが運の尽き。どうにもその音が耳から離れない。というわけで、この1ヶ月ほどは、プレイヤー捜しの旅に出ていたということになる。
 それにしてもチューバホーンさん宅で聴いたSoulNoteの吉田苑バージョンsc1.0SE-Dは、実に良かった。ジャズ・ファンとしては「これでいいんじゃないの?」と言うぐらいに私の好みのツボをグッと押さえた音がしていた。しかし、その読み込みの遅さ、天板、側板の鳴りは私にはやはり耐え難いものだった。
また上級機種のcd1.0も音も聴かせていただいた。その音は圧倒的に「素晴らしい」ものだったのだが、同じような天板の薄さの問題などこの金額でこれはないなぁと思った次第。ましてや音の良さを承知でも、別電源というスペース・ファクターの問題で却下した。それにしても試聴が一番困難を極めたのがSoulNoteだ。もう少し試聴できるところが増えればもっと売れるのではないかなど、関係ないことまで頭を過ぎった。ましてや吉田苑まで聴きに行くことは出来ない。このcd1.0のSE-D仕様も輪をかけて素晴らしい音で鳴るであろうことは、間違いのないところなのだが。
またとある場所では、アキュフェーズの「CDプレイヤー」DP-500を聴かせていただいた。昔からアキュフェーズの音が嫌いな(いい音なんだけれど、無味乾燥な音のように昔から感じていた)私にとっては、これは秀作だと感じられる音質を持っているプレイヤーだった。音楽が良く歌うのである。これは音楽好きには堪らない魅力で、思わず「これ買います」と言いそうになったほどである。しかしながらCD専用機という最大のメリットを享受出来るプレイヤーながら、逆にそこがデメリットである感じも受けた。SACDが聴けないのである。当たり前のようだが、これは痛い。セカンド機に持つのなら100%ありだが、今回はメインのプレイヤー選びなので、泣く泣く却下と相成った。 (続く)