ところが、家でCDを聴いていても「どうもおかしいなぁ~」と感じ始めた。まぁ、あの音を聴いちゃったのだからしようがないか!と思っていたのだが、どうも違うように思えてきた。実は丸々2ヶ月くらいこの調子(音のレンジが狭い感じ)がずっと続いていたのだ。一言で言えば、「ヌケの悪い音」なのである。では、決定的に悪い音かというとそうでもない。まさに「音に鮮度がない」という感じなのだ。
CDコンサートでいい音をたっぷり味わった後なので、自分のところの音がおかしいのではないかと気がついたわけだ。こんな面からもCDコンサートというのはとてもありがたいと思った。
というのも今回のCDコンサートで石田さんには、幾つも技術解説をしていただいたが、その中で「CDの天板の上にモノを乗せないで欲しい」旨のことを仰っていた。この一フレーズが僕の頭に引っかかっていたのだ。というのも制震という観点からは、天板をダンプして共振を下げてやれば、少なくとも悪い方向へは行かないのではないかという考えが以前から僕の頭にはあったから。そしてそれはある種の常識のように気にもとめず日常的に行っていた・・・。
家に帰って、石田さんが仰っていたことを反芻しながらCDを聴いていたら、ピピンと来たのである。そう、アンプやCDプレイヤー上に乗せてあった重しをスッパリ外してしまったのだ。そうしたらどうだろう、このすっきり、しゃっきりとしたヌケの良さは。これには参った。ここ2ヶ月ぐらいウジウジと悩んでいたことが一気に晴れて、聴く盤聴く盤がどれも楽しいのだ。土曜、日曜と立て続けに聴いて、耳を戻すために1日置いてまた聴いてというのをこの1週間続けていた。
結果的には、「まったく乗せない」というのではなく、軽めでも鳴きの少ない素材のモノを分散して乗せるというのがベストであるのが分かった。要するにノビノビとした音の柔らかさ、各々の楽器のディテールのシャープさが戻ってきたわけである。実に嬉しい。ほんの些細なセッティングにも反応するようになったのだ。
調子に乗って今日は『SF JAZZコレクティブ』(オーネット・コールマン集?)とヨアヒム・キューンの『アブストラクツ』を聴いている。
前者はライブで、スタジオライクな音録りで僕好みの演奏&録音。ドラムのブライアン・ブレイドのダイナミズムがとても心地良い。それにしてもニコラス・ペイトンってこういうトランペットだったんだなぁ、ここのところ聴いていなかったから、昔のイメージが強すぎたのでとても新鮮だ。鈍くさいフレーズの連続がなくてフレッシュで新主流派的なここでのプレイは、本当に素晴らしい(新主流派的な臭さ=クリシェも感じるけれど・・・)。ベテランのハッチャーソンのプレイも本当に渋い。この盤は気に入りました。演奏時間がとても長いのも気に入った(!)。それにしても本ちゃん盤は3枚組というのも凄すぎる。高くて買えないのでダイジェスト版を聴いているのだ。
一方、キューン盤は「アブストラクツ」と称しているくらいで、いわゆるピアノ・ソロによるフリー・インプロビゼーション集。好き嫌いが分かれる演奏なのだが、Label Bleuの輸入盤は音がいい。デジタル録音がマトモに出来るようになった時期の録音だけにそのピアノの音には痺れるほどの快感がある。しかしだ。この盤は、1曲目から7曲目まで一気に聴くのはしんどい。フリー・ジャズ大好き、現代音楽大好きっていう人にしかお勧めできないです。でも、1曲だけを聴くのは、一服の清涼剤って感じで凄く刺激的だと思う。ベヒシュタイン(ドイツ:ベルリン製)のピアノも特徴的なペダル音とともにしっかりと収録されており、ピアノ・ファンには堪らない一枚だと思う。
さて、2006年も最後の日となった。
今年は本当に素晴らしい人達との出会いがあった。そしてその一人一人の方々に御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。そして来年もよろしくお願いいたします。