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ジャクリーヌ・デュ・プレのザ・コンプリートEMIレコーディングス

2009年09月15日 | Music
エルガーやディーリアスのチェロ協奏曲の名演で知られるジャクリーヌ・デュ・プレが、EMIでの全吹込みを集大成した『コンプリート・EMI・レコーディングス』をやっと購入した。
思えば長い道のりだ。なにせ2007年10月には販売されていたものだから、足掛け2年後にやっと手に入れたことになる。当初1万円ぐらいしたこの全集も、いまでは「4000円」弱。こりゃ在庫(再入荷)があるうちに買わなきゃと思い立って購入した。1枚あたり240円以下である。うーん、安すぎるなぁ。
なんと言っても17枚組なので、これを完全試聴するだけで、まるまる3週間かかってしまった。その間、手持ちのCD(上記エルガー、ディーリアス盤)と、今回の全集の音を聴き比べなどをして楽しんでいたので、余計に時間がかかったというわけである。
エルガーやディーリアスの曲がいい(演奏がいい)のは当たり前(名曲名演)で、今回この全集で最も感銘を受けたのは、実はベートーヴェンのチェロ・ソナタとブラームスのチェロ・ソナタだった。デュ・プレのチェロももちろんいいのだが、それ以上にダニエル・バレンボイムのピアノが秀逸だ。確かに彼はピアニストだったわけだから、当たり前とはいえ、この両者(夫婦)が繰り広げる「阿吽の呼吸の精緻さ」はまさに圧巻といえるだろう。単にピアノ伴奏なんてものではなくて、ピアノがチェロに挑みかかっていくという感じのところが聴き所。録音も想像以上に良くて、チェロの音もいいのだが、それ以上にピアノが素晴らしい。スケール感たっぷりなのだ。
ベートーヴェンは1番から5番まで(1970年ライブ)と3番と5番(1965年スタジオ)が収録されている。好み次第だが、僕はライブの方がリアリティ(奥行き)があって好きだ。スタジオ盤は、力強い太い線で描いた墨絵のような面持ちがあって甲乙付けがたいが、オーディオ的には平面的な音像が、馴染めなかった。
ブラームスのソナタに至っては、1番は2回(1968年)と2番は3回(68年2回、62年ライブ)が収録されている。これは、甲乙が付け難くブラームス好きには堪らない。1番も2番もどちらも名曲だ。
それにしても今回の全集の中にはBBCの録音も含まれているのだが、当然ながらモノラル。ナローな響きの演奏も数多い。しかし、それもまた貴重な記録だろう。
PS
このところリリースされているデュ・プレの国内版(新リマスター盤)は、非常にシャープでエッジがしっかりした音のする盤だったが、今回の全集と聞き比べて見ると、明らかにマスタリング時点で加工が成されているような感じが臭う(ラウドネスウォー気味)。オーディオ的快感度は、この国内盤の方かもしれないが、自然な音がするというところでは、この全集版がとても気に入っている。