Sugarのちょっとお寄りなさいよ

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芳醇なホールトーンが楽しめたゴンサロのソロ・コンサート

2007年11月24日 | Jazz
本日24日、キューバ出身のピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバのソロ・コンサートに行って参りました。
会場であるすみだトリフォニー・ホールは初めて訪れたホールだったのですが、これが素晴らしく響きが良いホールでした\(^_^)/。内部デザインも実に斬新です。行った方ならご理解いただけると思うのですが、左右の壁の意匠が後ろから舞台に向かって斜めにデザインされているわけで、ほとんど舞台が沈み込んでいるように見えるというのが実に新鮮。サイズも大ホールというより、中ホールという感じの、いい響きがしっかり楽しめるホールでございました。
さて、当のゴンサロのソロは、正直に言って良く分からないというのが実感です。いわゆる<ベサメムーチョ><ヒアズ・ザット・レイニー・デイ>ともう一曲がスタンダード(と分かる)曲で(1部、2部全体でも)、後は彼のソロ作品である『ベサメ・ムーチョ』からと思える曲や、ほとんどインプロビゼーションかと思えるソロ(すべて短めの曲)でしたので、ほとんど夢見心地状態で聴いておりました。←単純に寝ていたとの噂もありますが・・・。
ゴンサロは、ヤマハのバックアップを受けているピアニスト。ゆえに当然ピアノは、ヤマハのコンサート・グランドを使用していました。響きのいい、そして程度のいい、ウェル・チューニングなピアノでしたので、素晴らしいピアノの音が堪能出来ました。しかしながらチック・コリア、ゴンサロ、小曽根真と書けば、そう、彼らはヤマハ・ミュージシャンでありまして、彼らのCDを聴いたことがある方なら、盤の中で聴こえるあのヤマハ・ピアノ・トーンがしっかり聴こえていました。ホーム・ポジションの40鍵前後は、非常に張りがあって艶もある音なのですが、低弦側はしっかり唸ってくれるものの、いわゆる倍音が巧く乗っていない感じがしましたし、高域側の鍵盤の音は、線が細く、繊細な音色ではありますがヌケがイマイチでした。ゆえに全体的な音としては豊饒な音と言うところまでは残念ながら至っていません。そういう意味では、杉並公会堂にあるスタインウェイとベーゼンドルファーは、ホール持ちのピアノとしては、都内随一なのかと。
さて、第二部もほぼ第1部の感じで推移したので割愛。ソロだけで、それも知っている曲がないという状態の中で全2時間弱のソロを聴くというのは、私にはちょっと肉体的にも精神的にも辛いものがありました。たぶん7割強の方がゴンサロのソロ・プレイを理解出来なかったかと思います。私も、ゴンサロの調子が良いのか、悪いのか、さっぱり判らなかったですし。それにしても、ホールの響きは秀逸です。ここでクラシックが聴いてみたいと心底思いましたから。
さて、今日は、いわゆる硬派系の評論家の方が大挙して来られていたのが印象的でした。悠さん、青木さん、本当にお久しぶりでした。EMIの行方社長にも久しぶりにお会いして優しい言葉をかけていただいたりしてとても嬉しかったです。というわけで、響きのいいホールでのピアノ・ソロ。とてもいい耳の肥やし(体験)になったコンサートでございました。

天女が舞い降りた夜:Swedish Beauty Live!

2007年11月16日 | Jazz
11月15日の夜は、密かに心待ちしていたスウェディッシュ・ビューティーのコンサートへ行って参りました。拙ブログでもすでにご紹介しているリーサマルガリータ・ベングトソンという美女2人のジョイント・ライブです。
リーサがオープナーを務め、全10曲を一気に熱唱。うーーん素晴らしい。バックは、パーマネントではないのですが、自己バンドということで、各曲ともにとてもスムーズな進行でとても楽しめました。演目はデビュー作『エンブレイサブル』からのものが多いのは当然なのですが、1曲目は、CDにも入っていない<ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド>。この曲ですっかり心臓を射抜かれてしまいましたねぇ。
まぁ、歌を聴く前にすでにその美貌にノックアウトされてしまいましたけれど。スタイルは抜群です。プロフィールにはブロンドと書かれていましたが、当日はプラチナブロンドだったので、もしかするとウィッグかもしれません。コスチュームも男性陣を一気に悩殺するもので、そのスレンダーな容姿にまさにジャスト・フィット。黒のタイトなドレス、当然のように前のVゾーンは、おへその上まで切れ込んでおり、背中もざっくりと全開というもの。モデル&女優(渋谷パルコ秋のキャンペーンのイメージアーティストですし、映画にもちょい役を含めて出演していますが、スティーブン・セガール主演の新作映画「沈黙の激突」では助演女優)ですのでそのスタイル(ボディ・ライン)を拝見し、当方はエロおやじモード全開と相成りました。
さて、ささやくような声でリーサが歌うのはCD通りなのですが、実は声を張って歌うと容姿からは想像出来ないくらいパワーもパンチもある声がしておりました。ですので古いジャズのスタンダードをささやくように歌うというよりも、もう少しポップなロック系の歌でも十二分にこなせる歌手ではないかと思いました。単なるカワイ子ちゃん歌手でないというのは、今回のコンサートを通じてしっかり感じましたから。
さて第2部は、待望のマルガリータが登場。新作『アイム・オールド・ファッションド』で私は、完全に彼女の虜になってしまった感があるので、彼女のライブが聴けるなんて本当に夢のよう。これまた1曲目はタイトル・チューンから始めたわけですが、まさにCDと同じに聴こえたわけですから、大感動です。彼女のブレスが聴こえるだけで、こちらもハーハーとなりました。
歌は巧いのは、当然です。芸歴も長いですしね。非常に声域も広く、ファルセット領域までスムーズに吹き上がるのは、いいエンジン(体)を持っているからでしょう。テクニックも最高でした。新作からの曲を中心に全10曲をまさに一気に聴かせてくれました。今回のライブ・パフォーマンスは、マルガリータのジャズ・シンガーとしての良さをどの曲からも感じさせてくれました。流石です。どの曲も良かったのですが、CDにも入っている母国語で歌う<Allt Under Himelens Faste>は、CD以上の出来映えにウットリ。スウェーデンの空気を会場にもたらしてくれていました。同様に<ブルースェット>もスウェーデン語で歌ってくれたのがとても印象に残っています。いずれにしても、もっと聴いていたいと思いましたから本物です。とてもいいコンサートではありました。
それにしても「慎ましやかな淑女」とはマルガリータのことを指す言葉かと思うくらいに彼女もまた超美人でした。大人の色気満載という感じです。シックなドレス(これまた背中が完全オープン)を身に纏った彼女はまさにステージ映えするものでしたから。
さて、アンコールは、リーサとマルガリータの競演で<Pennies from Heaven/I Can't Give You Anything But Love>を両者が同時に歌うという趣向。これはいいアイデアです(コード進行が同じ)。この美女2人がステージに並ぶと本当に艶やかです。私の目には、スウェーデンのお花畑にいるが如しでした。そうそう、バックの両バンドは、流石に名手揃いで、特にリーサのバンドのトランペッター、ヨハン・セッテリンドとピアノのベングト・リングクイスト、そしてマルガリータのバンドのペーター・アスプランドは、リーダー・アルバムをすぐにも聴いてみたいと思わせるプレイヤーでした。特に後者のペーターは、聴いていて鳥肌が立つほど巧い奏者で、数枚のリーダー作もあるというので要チェックかと思います。
まぁ、ここまでがコンサートなわけなのですが、コンサート後にスパイス・オブ・ライフの社長から、控え室に来ないかとのお誘いが。もちろん「イエス」決まっているじゃないですか。評論家の岩浪、岡崎、成田先生とともに楽屋へ急行いたしました。
いやはや近くで見る美女二人は、ステージとはひと味もふた味も違う素晴らしさ。間違いなく両人とも本当に「美人」です。お高くとまっているんじゃないかと思ったリーサがとても社交的で優しい子だったのが一番の収穫でした。素晴らしいコンサート、そして楽屋まで連れて行っていただいたN村さんに感謝。多謝です。
 
なお、当夜のライブは12月17日~20日のJ-WAVE(24:00)で聴くことができますので、要チェック。特にWilson使いの方々は必聴ですよ。ハイ。

ヘビー・ローテーションのピアノ・トリオ三題

2007年11月03日 | Jazz
キース・ジャレットの『マイ・フーリッシュ・ハート』(ECM)とイリアーヌの『サムシング・フォー・ビル・エバンス』(somethin'else)、そしてチック・コリアの『ドクター・ジョー』(Universal)というのが、このところ我が家でのヘビー・ローテーションとなっているピアノ・トリオ三題だ。聴いていて、とても気持ちがいい作品群で、音もとても興味深い仕上がりとなっている。
まずは、キース。なんといっても2001年のモントルー・ジャズ祭の音源ということで、その日のコンサートがしっかりと収められているのがとてもいい。曲順がよく考えられていて、聞き飽きません。その曲順なのだが、僕の推測では演る曲(板にかける曲:順不同)は最初から決まっていたはず。しかし演奏する曲順は決まっていないというのがいつもの通りだったと思う。また会場はモントルーで一番大きなホールであるストラビンスキー・オーディトリアムで収録されている。しかしながら拍手の音は、抑えめだ。前の方に座っている人達の拍手しか入っていないような音と言えばいいだろうか。また過去のスタンダーズのライブ作とは違って、かなりオンな音作りがジャズ・ファンの琴線を刺激してくれる筈。エンジニアはMartin Pearson。ヨーロッパのロック系のエンジニアで、モントルーお抱えエンジニアの一人だ。なおアルバムのインナーにもまるで書かれていないのだが、アドバンス・シートを見るとやはりヤン・エリック・コンシャウスがしっかりマスタリング・エンジニアを務めている。というわけでしっかりECMの音にはなっているのでご安心いただきたい。
成田さんのオーディオ的チェック曲は、1曲目の<フォア>だが、私は2曲目の表題曲である<マイ・フーリッシュ・ハート>。ルバートして弾き始めるキースのソロでまずは定位をチェック。それにしてもいいスタインウェイ(ハンブルグかな)を使ってますねぇ。そしてご存じ3度、6度チューニング(通常のピアノは4度、5度チューニングでこの3,6度チューニングをすると音場が広がって、響きと表情が豊かになる)。そしてベースとドラムスがインしてくる瞬間のフェーダーの動きや、各楽器のパースペクティブなど聴き所が満載なのだ。ジャックのバスドラの響きが気持ちよく決まらないと駄目駄目です、ハイ。といいつつ我が家では、ゲイリーのベースに今ひとつインパクトがない。もう少し厚めに鳴ってくれれば満点なんだけれど・・・。
さて、イリアーヌである。久々に彼女のピアノを聴いた。素晴らしい。ましてやエバンス集である。私的には言うこと無しの満点かな。各曲の演奏時間が短めというのも、言いたいことを言い切って終わるという潔さがあっていい。もちろんイリアーヌのボーカルも素敵であります。それにしても某ミュージシャンからベーシストに夫を変更するっていうのは、ボーカリストには良くあるパターンです。羨ましい限り。で、そのマーク・ジョンソンのベースがエンリコ・ピエラヌンチィなんかとやっている演奏と音的にも別人かと思うくらい違っている。ハラハラドキドキ系で弾いているように感じるのは僕だけでしょうか? (閑話休題)
とにかくエバンス・ファンが聴いても文句がでないであろう素晴らしい出来ではないかと。それにしてもイリアーヌってのは盤によってスタイルが違うというのは驚き。結構器用な人なんだろうなぁ。で、本作の白眉は、2曲目の<サムシング・フォー・ユー>。名曲です。とても素晴らしい出来です。本作は全曲とも聴き飽きません。ボーカル曲と演奏曲が絶妙に配されています。曲順を決めたプロデューサーに拍手です。さて音です。一転キースの音とは違ってスタジオの音。それも結構端正な音作りに好感度大。ピアノの音もとても良くて、きっといいピアノなのでしょう。響きも巧く録れており、難を言えばボーカルのお口が大きいことと、ベースがややオフ気味。そうそうドラムスももう少しヌケたほうが、メリハリが付くような気もしますが、この音作りは嫌いではありません。それにしてもBGMに聴いても良し、集中して聴いても良しという作品には滅多にお目にかかれないので、この盤も必聴&オススメです。
ラストは、チック・コリア。うーん、この人多作で知られますが、それにしてもトリオで5枚をリリースするというのですから、立派。今回は5枚組を購入するのがベストかと思っています。とある筋から聞いた話によれば、ボックスで発売される(単一CDではリリースされない)音源がどうやらベストな演奏だと漏れ聞きました。とはいえチック好きということでやっぱり待てないので、購入しちゃいました。普通のジャズ・ファンは、5枚組をどうぞ。え? 5枚組買うのは普通のジャズ・ファンじゃないって? まぁ、その通りですけれどね。
というわけで、バーニー・カーシュによる録音の1枚なわけですが、今回のスタジオは、東海岸に出来た新しいマッド・ハッター・イースト(フロリダ州クリアウォーター)でのレコーディングです。西のマッド・ハッターより僕はこちらの音の方が、好み。今回の方がピアノの音が伸びやかに聴こえます。まぁ、ヤマハのピアノもたぶん新しいし、機材も新しい。そんなフレッシュな音がこの盤はします。ただし、聴いた感じはこのスタジオ狭いんじゃないかと感じてしまったのですが、いかがでしょうか。
どの曲のプレイもコリア節が満載ですが、僕的には最後の3曲が素晴らしいと思いました。とてもいいバラードかと。いずれにしてもコリア渾身の曲がビッシリ入っているので、まさにコリア集の趣。最初この盤を聴いた時には正直違和感があったわけですが、いまはまさにヘビー・ローテーションのピアノ・トリオ盤となりました。そうそう、今回の5枚というのはこの作品と5枚目の若手とのもの以外は全てライブなんですね。故にどうしても音的にスタジオ収録のものが聴きたかった一枚なわけです。これまたオススメの1枚ですね。