3月31日付の
『Royce』さんのページに「ジャズ・イン・パリ」のジャケットが。このシリーズは何枚か出ていてなかなか渋いリリースだったと記憶しています。ステファン・グラッペリやピーターソンの盤もあったなぁ、と思いながら今、ヴァーブ・レーベルの
『ロンドン・ハウスのオスカー・ピーターソン』(2枚を1枚にしたCD)を聴いているところ。2曲目の<アイ・リメンバー・クリフォード>は、レイ・ブラウンのベースが絶品です。でも倍テンになるとベースが後ノリで弾くというのはちょっと僕には面白くないですけれども。
さてオスカー・ピーターソンというのは、どうもコアなジャズ・ファンにはあまり評価されていません。残念ではありますが・・・。「弾きすぎて五月蠅い」だの「シャリコマだよ」とか酷評されるわけです。まぁ、一理はあります。僕もピーターソンがグイグイと弾き込むのを聴いていると正直辛いです。ましてやこの盤では77分27秒もありますしね。ましてや大音量でこれを聴き続けるというのは・・・。でも今日は土曜だからちょっと“BGM”という感じで聴くにはけっこう楽しかったりします。今日はそんな感じでピーターソンです。土曜の気怠い午後には、ピーターソンの弾くバラード<アイ・リメンバー・クリフォード>や<オールド・フォークス>では自然にボリュームも大きめに。
さて、ピーターソンと私というのが今日のお題なら
『The Way I really Play』(MPS)が僕のフェイバリットです。大好きな盤です。それも正直言えば1曲目だけなんですけども。まぁ何度聴いたか分からないくらいに聴いています。
そう1曲目の<ワルツィング・イズ・ヒップ>なんですね。やっぱり。フル・コンサート・グラウンドのピアノをあのようにガーンっていう感じに弾かれると、凄さを超えて爽快ささえ感じられて結構好きなんです。ピアノ君が「私が悪かった、許してください」って言っている様な凄い弾き方。ベースはサム・ジョーンズに、ドラムはボビー・ダーハム。60年代末の定番トリオなんですが、この1曲ではサムもボビーもまったく関係なし。もう本当の「“怒濤”のピアノ」なわけです。
あの太い指でピーターソンが弾くピアノがとても可哀想に思えるくらいのダイナミズムがこの曲には込められています。
フル・レンジで鳴るピアノの録音というのは、ダイナミックレンジとかそういう次元では捉えられなくて、当時のハイエンドテープやレコーダーでさえも間違いなくクリップしてしまいます。で、普通はノイズゲートやコンプレッサーやリミッターをいれて、平板な音にしちゃうんですが、この盤ではピアノ録音の限界に挑戦しているわけです。それを可能にしたのは、これが自宅録音(プライベートスタジオとの表記が多いのですが・・・)だったからということになるかと思うわけです。ケーブルの引き回しが短いというのは、やはり最大のメリットだったのではないでしょうか(接点数が極端に少ないですし)。
さて、このMPSレーベルを作ったハンス・ゲオルグ・ブルナーシュアーは、当時西ドイツの大手電機メーカーSABA社の重役さんでした(オーディオマニアには、スピーカーや真空管、そしてsabaレーベルでもお馴染みかと思います)。もちろん録音エンジニアでもあった人なんですが三度の飯よりピアノが大好きという人でもありました。
こんなバックグラウンドもあって、録音に使った機材(マイク)も最高、ピアノも最高(ハンブルグ・スタインウェイかなぁ。非常にいいチューンがなされていますね)、これを録った部屋も最高(上記)、エンジニアも最高(上記)、ピーターソンもすごく歓待を受けて上機嫌となれば、好演奏かつ好録音になる、というわけです。
粒立ちが良く、やや硬質で抜けの良いピアノ。興が乗るとつい出てしまううなり声もとってもリアルで、ペダルの動きも鮮明です。定位的には、いわゆるお化けピアノですが、気持ちが良い優秀録音なので、許しちゃいます。ルーム・ボリュームもしっかり感じられる録音というのも、素晴らしいものです(マイク数はかなり少ないように思います)。
それにしても、僕の手持ちは、日本コロムビアのダブルジャケットのアナログ。それも相当古いものです。その後何度もCD化がなされていますが、なぜか今まで買いそびれている1枚なんです。
*ブルーノートやプレスティッジのバンゲルダーじゃないけれど、ハンスさんがリマスタリングをやり直してくれないかなぁ。無理だろうなぁ。(注:SACDが出てますね:リマスターが誰かは分かりません。ご教示くださいませ)
*CD化で凄い音になってますというインフォメーションがあれば、お教えください。
*しかしMPSとレーベル契約する前のレーベルはヴァーブ。エンジニア、バル・バレンティンさんも形無しだったろうなぁ。
*最近見直したのは、パブロの音(レコード)結構凄い音している。Thanks Royce
参考HP
●曲真会館:The Way I Really Play
http://kyokusin.cocolog-nifty.com/kaikan/2005/08/waltzing_is_hip.htmlCDのPLAYボタン押して5秒間の勝負。そして、最初のインパクトが最後まで持続するような曲。そういう曲を聴いて、はじめて初心者は納得する。